第9話 ケインの考え

次の日、俺はいつも通り空き地に向かうと、そこにはもう先にアランとイルルがいた。


「あっ、きたきた。ケイン遅いよ」

「わるいわるい、なんだ?今日は来るのが早いな」


俺としても2人に伝えたいことがあったため、早めに来たつもりだっただが、この2人はそれをも超えてきた。


「僕、考えたんだ。どうやったらイルルのお母さんを助けることができるのか」


アランも考えることは同じらしい。


「それで、何かいい案が出たのか?」

「うん、僕たちがイルルのお母さんを助ける回復魔法を開発するってのはどうかな?」


やはりか...


それは俺もイルルの家にいた時点で思いついた、最初の案だ。

しかし、一番最初に却下した案でもある。


「あのなぁ、昨日も言ったが、俺たちはイルルのお母さんが何の病気かもわかっていないんだぞ。どんな魔法を開発すればいいのかが分からない」

「それは僕たちが毎日イルルのお母さんを観察すれば、何か分かるかもしれないよ」

「それじゃ、俺たちはただの変態になりかねないし、病人にストレスを与えてしまうだけだぞ」


俺は昨日その案を却下した理由をアランに述べる。


「じゃあどうすればいいの?分からないよっ、僕には...」


アランはそう言って下を向く。

すると、


「2人ともありがとう、私のことは気にしないで。これは私の家族の問題だから...」


イルルが俺たちを励ますようにそう言う。

しかし俺には他に案がないわけではない。


「誰が無理だと言った?俺にはまだもう一つ案が残っている」

「え、あるの?ほかに案が」


俺が自信満々にそう言うと、アランが俺の言葉に食いついてきた。


「あぁ、ある。今日はそれを実行しようと思うんだ。だから、とりあえず2人とも、」


そして俺は、しっかりとためてこう言った。


「王都へ行くぞ!」



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俺の発言を聞いた後、別れた3人は数時間後、また空き地に集合する。


「ちゃんと親にはイルルの家に泊まるって言ってきたよ」

「私もお母さんにケイン君の家に泊まるから今日は帰らないって」


アランとイルルが集まってすぐにそう報告すると、


「よしっ!OKだ、俺も親にイルルの家に泊まるって言ってきた」


俺もしっかりとそう報告する。

俺たち3人の背中には1泊できるくらいの荷物を入れたリュックを背負っている。


「で、どういうこと?王都に行くって?」

「そのまんまの意味だよ、俺たちはこれから1泊2日で王都へ行くんだ」

「ケイン、なんか旅行感覚じゃない?」

「いいじゃん、実際旅は旅なんだからさ。詳しくは行きながら話すから、とりあえず村を出よう」


俺はそう言うと、2人に向かって魔法を使う。


「あれっアラン君が消えちゃった」

「イルルも消えてる。ケイン、透明化の魔法を使ったな?」

「ご名答っ!アランとイルルはしっかり手をつないでおけ、お互いどこにいるか分からないからな」


俺は消えた二人の手をつかみ、手をつながせる。


えっ、なぜ俺には見えるのかって?

それは俺の今までの魔法の特訓のおかげで魔素の流れが分かるようになったからだ。

今の俺には2人の中にある魔素の流れが手に取るようにわかる。

今どんな動きをしているかなんてのは俺にはお見通しだ。


そのあと俺もアランと手をつなぐと、俺自身にも“透明化”の魔法を使う。


「よしっ、俺についてきてくれ。このまま村の出口を出るぞ」

「ちょっと待って。ケインの姿が見えないから、方向だけ言って、方向だけ」

「分かった、分かったから。これから出口に行くんだから静かにしろって」


俺は要望通り小声で案内をしながら村の出口へ向かう。

そして、出口に到着すると、俺たちは今まで以上に静かに慎重に行動する。

出口にはいつも通り警備の人が立っているため、ばれないように行動せざるを得ないのだ。


しかし、ありがたいことに昼という理由だからか、夜に村を出るより周りの音が出ていたため、人数はいつもより多いものの、何とか村を出ることに成功する。


村を出て少し進むと、俺は3人にかかっている“透明化”の魔法を解除する。


「ぷはー、本当に村の外へ出ちゃったよ」

「私、村の外って初めて」

「僕もだよ。でもケインがここまで手馴れてるってことは...さてはケインは何度か村を出たことがあるな?」

「あ、ばれちゃった?」


考えていないようで、実はちゃんと考えているアランが感付いた。


「ずるいよずるいよ1人だけ!なんで僕も連れて行かなかったんだよ!?」

「だ、だってほら、村の外は危険だし...」

「何言ってるの!僕が危険だったら同い年のケインも危険じゃないか!ケインも出ちゃだめだよ」


今回に関してはふつうに正論であるため、何も言い返せない。


「ごめん、悪かった。次行くときはお前も誘うから」

「ほ、本当!?約束だよっ」


俺がそう言うと、アランははしゃいで喜ぶ。

しかし、そうはいったものの、


(ほとんど毎日村の外へ出てるけど、1週間に1回くらい連れて行けばアランも満足するだろう)


そう思う俺であった。



村を無事抜け出せた俺たちは、早速王都へ向かうため森の中を進む。

そして俺は歩きながら、今回の旅の具体的な内容を2人に伝える。


「まぁ端的に言うと、今回の俺たちの目的は王都にいる回復術師をイヨの村に連れていくことだ」

「で、でも、さっきまで衝撃的なことがありすぎて忘れちゃってたけど、村の外には魔物がいるんじゃ...?」


イルルが不安そうに俺にそう聞く。


「当然いるよ。だが安心してくれっ。俺はここら辺の魔物なら簡単に倒せる」

「ほ、本当に?」


俺が自信満々にそう言うと、


「へぇ~、ということは相当な頻度で村を出ているんだねぇ~」


アランが嫌味ったらしくそうつぶやく。


「あ、あはは。だから安心して。王都に到着するまで、絶対に死なせないから」

「ありがとう」

「ありがとう、ケイン」


2人はそろって俺に感謝を述べる。

しかし、


「おっと、アラン。お前は一緒に戦うんだぞ」

「え~、なんで~」


俺はそう言うと、アランが文句を言い出す。


「お前の魔法なら十分に魔物を倒せるだろうよ。それに言ったよな~、同い年だからアランが危険ってことは俺も危険だって。ということは俺が危険じゃないってことは、お前も危険じゃないってことだ。今回、俺は危険じゃないと思うから、お前も危険じゃないんだよ」


俺はアランに言われたことを自分の都合のいいように取ってアランに言い返してやった。


「はいはい分かりましたよ~だ。僕も魔物と戦いたかったし、別にいいよ」


アランはふてくされたようにこう言う。

すると、


「で、でも、お金はどうしよう。私そんなお金持ってないよ?」


イルルが急に思い出したようにそう言った。


「安心して、お金のこともちゃんと考えてある」

「えっ、どうするの?」


イルルが不安そうにそう聞くので、俺は前を指さしてこう言ってやった。


「それはなっ、これから俺たちで稼ぐんだよっ!!」







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