第4話 はじめての友達


天気のいいとある日、俺は今日も魔法の特訓を行うために村のはずれの空き地へと向かう。


「早く村の外に出たいな~」


俺は歩きながらそうつぶやく。

俺は前々から両親に“村の外に出たい!”と言っているのだが、両親からは


「村の外にはね、こわ~い魔物さんたちがいっぱいいるの、だから絶対に外に出ちゃだめよっ!さもないと、魔物さんたちに殺されちゃうわよ~」


と、あっさりと魔物が存在するという事実が伝えられた。


この世界の魔物は、空気中に漂う魔素とは異なる魔素を持った、凶悪な生き物らしい。


(魔物までいるとは...本当に異世界なんだな...)


この世界に来て、たびたびこういった事実が伝えられるため、ここは日本ではないのだと改めて実感させられる。


この世界の村や都市は、魔物から土地を守るため、最低でも柵や堀などが周りに設置されており、そして力に自信のある人が等間隔で周辺を警備してくれているらしい。

もちろん、イヨの村も例外ではない。


俺は両親に言われるまで警備してくれている人がいるなんて知る由もなかった。

まあ最近家を出れるようになったのだから当然と言えば当然なのだが、やはり身近で知らなかったことがあるというのは少し恐ろしいものである。


「やはり子供だと分からないことだらけだな~」


俺がそんなことを言っていると、


「あら、レインさんところの息子さんじゃない、こんにちわ~」

「あ、おばさん。こんにちわ!」


俺がほぼ毎日外に出ているためか、最近村の人が挨拶をしてくれるようになった。

ちなみに、“レイン”とは俺の父親の名前である。


(父親がレインで息子がケインって、もう少し考えてくれよ...)


あれこれ考えているうちに、いつもの空き地に到着し、俺はさっそく魔法の特訓を始める。


俺は最近、ほぼ毎日空き地に来ては、体にある魔素が尽きるまで魔法を使うという生活を続けていた。

体にある魔素が尽きると、空気中にある魔素を体が吸収するのに人によってさまざまだが、ある程度時間がかかる。

最近は体の魔素が夜くらいまで持つようになってきたので、魔法を使っては家に帰って寝て、魔素を吸収しては、明日また魔法を使うという毎日を繰り返していた。


そしてその練習のかいもあり、俺はさまざまな生活魔法を習得していった。

しかし、実践していくうちに、俺は村の中でこそこそ練習するには限界があるとも感じてきている。

村で使う魔法の規模にはやはり限界があるのだ。


俺は今まで目立つことなくそこそこに生きてきた。

村で大規模な魔法を使って、俺が魔法を使えることをみんなにバレることは避けたい。

しかし、そうは言ってもゲームで出てくるような派手で大規模な魔法を、俺は使ってみたい。


その上、一番の問題は村で使えるような魔法を使い続けても、このままだと、俺の魔素が切れなくなってしまうという問題も出てきてしまっている。

今は夜には魔素切れを起こすようにはなっているが、このままいけば、一日中使い続けても魔素切れを起こさなくなるだろう。

魔素が切れないと回復しても、所有できる魔素量はあまり増えないため、これ以上成長の望みは薄くなる。

成長にあわせて魔法の威力も上げる必要があるのだ。


「やはり村の外で練習するしかないか...」


ほかに道はないのかと考えてはいたものの、結局その結論に達した俺は、一つの計画を立てることにした。

その名も、


夜にこっそり村を出て、外で魔法特訓作戦!!


夜にこっそり村を出ることで、今まで以上の規模の魔法を使って練習することが可能になるだろう。

まぁ実際、魔物と戦ってみたいというのもあるのだが...


しかし、それを実行するためには、一つのミッションが要求される。

それは、


絶対に誰にも見つかってはいけない!


これが、この計画において最大のミッションだ。


しかし、俺はすでにこのミッションを成功するための術をすでに考えている。

それは、“新しくある魔法を2つ習得する”というものだ。


おそらくこの2つの魔法を使えるようになればこの計画を実行に移せるだろう。

問題があるとすれば1つ、この魔法は習得というより開発であるという点だ。

しかし、本に書いてあるのは、やはり生活魔法ばかりであるため、爆発魔法や雷魔法といった戦闘向けの魔法というのは分からない。

そのため、後々戦闘魔法を使いたいのなら、自主開発も必要となってくる。

つまり今回の魔法の開発もその布石に過ぎないってわけだ。


幸い、俺には前世の記憶があるので、ゲームやアニメの知識が、俺のイメージづくりに大いに役立ってくれることだろう。


よって、今回の目的は、その魔法の開発ってわけだ。

俺は体の中にある魔素の流れに意識を集中させ、俺が魔法を使える様子をイメージする。


「よ~し、はっ!」


声で気合を入れて魔法を発動させようとはしたものの、何も起こることはなかった。

ただかっこつけてポーズをとっている俺がいるだけである。


「まぁ、最初から出来たら世話ないわな」


俺はそう言いながら一度挑戦する。

そのとき、


「ねぇ、そこで何しているの?」


後ろから突如声が聞こえてきた。


(やばいっ!)


俺は慌てて後ろを振り向くと、


(・・・子供?)


そこには俺と同じくらいの身長をした男の子が立っていた。


「ねぇ、何してるの?」


目が合うも何も返事をしてこない俺を見て、男の子は俺にもう一度そう聞いてくる。


「魔法の練習だよ、魔法の練習」


正気を取り戻した俺は、思わずそうつぶやく。

そのまま正直に言わないと、隠れてかっこいいポーズをとる子供というレッテルを張られそうだったので、俺はとにかく包み隠さずしゃべることにする。


「へぇ~、僕のお父さんも魔法使えるんだ。僕にも使えるかな~?」

「さぁ、お前次第じゃないの?」

「ねぇ、僕に魔法を教えてくれない?」

「なんでよ、いやだよ」


あまり詳しく知られないように、はやく帰ってもらおうと冷たい態度をとる。

すると、


「え~、いいじゃん教えてよ。おしえておしえておしえて~!!」


男の子は駄々をこねるように大声で叫ぶ。


「バカ野郎!?」


俺はとっさに男の子の口をふさぐ。

村のはずれといってもここは村の中、大声で叫んでは村の人にも聞こえてしまう。


「苦しいよ、はなしてっ!」

「おお、悪い」


俺はあわてて手を口からはなすと、俺は一つの疑問を口にする。


「なぁ、ここには一人で来たのか?」

「うん、一人で遊んでたら、偶然ここに来ちゃっただけだから」


俺は少しばかり安心する。

この空き地は俺も偶然見つけた場所で、俺にとっては秘密基地のようなものだ。

簡単に村の大人に見つかるわけにはいかない。


「なぁ、この場所のことと、ここで俺が魔法を使っていることは誰にも言っちゃだめだ」


俺は男の子に口封じを図る。


「え~!なんで?」

「何でもだ!」


俺は無理やり内緒にさせようとするが...


「じゃあ僕にも魔法を教えてよ。そしたら黙っててあげる」


男の子はニヤッとして俺にそう提案してくる。


(くそっ!取引か。いい度胸じゃないか...)


俺も何か言い返そうと試みはしたが、


「しかたない、分かったよ」


村のみんなにばれるよりはましかと思い、しぶしぶ了承する。


「やった~!ありがとう」


男の子は飛んで喜びだす。


「そういえば名前はなんていうの?僕はアラン。7歳!」


アランは俺に向かって自己紹介を始める。


俺と同い年かよ。

まぁ、同年代の子供と話したことほとんどなかったし、いい機会か。


「俺はケイン。お前と同い年だ。よろしくな、アラン」


俺も名乗ると、アランと固い握手をする。


「へへ、よろしくね、ケイン!」


俺は今日、異世界生活はじめての友達ができました。

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