第27話 トロトロオムライスとフェンリルに名付けする!

「マサト〜腹が減ったぞ〜」


「僕も、ペコペコだよ〜はやく〜はやく〜」


街から次の街に向かう街道の隅の方で、今日は野営をしている。


「待っててな。手早く出来る料理の方が良さそうだな」


鶏肉と野菜を切ってフライパンで炒める。ジュージューと音が鳴り、辺りに匂いが立ち込める。その音と野菜と鶏肉が焼けた匂いだけで、トンボと子フェンリルは、涎をダラダラと流す。更に、ケチャップとご飯と塩と黒コショウを、そこに足されたら、もう我慢の限界である。トンボと子フェンリルは、かぶり付くように、料理はまだかまだかと見ている。

そんなことは、お構いなしに卵を3個割って、ボールに牛乳と塩を少々入れて混ぜ合わせる。そして、フライパンに流し込んで半熟のまま、折り返していく。その卵をケチャップライスの上に乗せて、ケチャップをかける。おいしいおいしいオムライスの出来上がりである。


「よ〜し。出来上がったぞ!食べる時は、ナイフでこうやって卵をス〜っと切ってから食べるんだ」


上に乗った卵をス〜っと切ると、ドロッとした卵がケチャップライスと皿いっぱいに溢れる。それを見たトンボと子フェンリルは、目をキラキラさせて限界だとアピールしている。真人も、限界だということは分かっていたので、2人の前にオムライスを出してナイフでス〜っと切ってあげる。


「もう食べていいんだよな?」


「僕も我慢できないよ〜」


真人は、手で待てと制してお預けをしている。


「よし!食べていいぞ〜」


そう言った瞬間、スプーンでトロトロの卵に包まれたケチャップを掬い、口に運ぶ。当然、子フェンリルには真人が食べさせてあげている。


「うめぇ〜」「おいしい〜」


2人とも、これでもかと言うほど幸せな顔をしている。


「ふわふわとトロトロが、一気に押し寄せて、僕は僕は蕩けちゃいそうだよ〜」


「甘酸っぱいソースが絡まった米に、旨味たっぷりな鶏肉と野菜が加わって、それを包む卵...至高と言う他ないな」


2人は、極限まで腹を空かしていた所為なのか?いつも以上に、おいしそうに食べている。


「マサト〜おかわり〜」


「俺にもおかわりを頼む」


どうやら、2人はトロトロオムライスを気に入ったようで、催促をしてくる。


「わかった。待ってろよ!すぐ作ってやるからな」


そう言ってオムライスを、また作るのだった。

そして、2人が満腹になって、腹をパンパンにして仰向けで寝ているのを見ながら、真人もオムライスを口にする。


「うまいな。それにしても、異世界に来て、おもしろい旅になったよな。今やフェンリルまで連れてだもんな」


真人は、日本にはない眩く輝く星が一面に広がる夜空を眺めながら、オムライスとビールを飲んで黄昏るのであった。



ペロペロペロ


「うわぁっ、またか。もうこの起こし方はするなって言っただろ。どうしたんだ?」


真人は、疲れていたのか?ビールを飲みながら椅子に座ってそのまま寝ていたようだ。


「いつになったら、僕に名前を付けてくれるの?」


どうやら子フェンリルは、名前が欲しいらしい。


「あ!そう言えば、名前をつけてなかったな。フェンリルだから...フェン?フェリ?フェル?う〜ん?リルとか?」


「リルがいいな!なんかカワイイ〜。今日から僕は、リル」


真人の周りを走り回りながら、リルリルリルと叫ぶのだった。


「よし、リル!まだまだ夜明けまで時間があるし、一緒に寝よっか」


「うん!寝る〜」


そう言って、リルを抱っこして寝床へと向かうのであった。

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