第1章 リルの村
第2話 異世界のスープは薄味で不味い!
「うわぁぁぁ〜...ハァハァハァ...ん?夢?」
あの店で起こった出来事は、全て夢だったのかと思う。すると、ドアが突然開いて見知らぬ男性が入ってきた。しかも、見たこともない衣服を着ている。
「おい!大声出して大丈夫か?」
「は、はい...大丈夫ですが、貴方はだれですか?」
「お!俺か?俺はトンボだ。お前が森で倒れているのを見つけて運んできたんだ。それより体調は大丈夫か?」
ん?森で倒れていた?どういうことだ?俺は、店で料理をして...あれは夢じゃない?森で倒れて?どういうこと?あのお客さんが死ぬとか運命とか言って...
「うわぁぁぁぁ俺死んだのか?ここは死後の世界!」
あの店の出来事が現実だったと実感が湧いてくると恐怖がどっと押し寄せてきたのだ。
「お、おい!大丈夫か?お前は生きているし、ここは、死後の世界じゃないぞ」
トンボは、必死で気が狂いそうに叫んでいるのを止めようと声をかける。
「生きてる?死後の世界じゃない?本当にどうなってるんだぁぁぁ」
それからトンボは、ゆっくりここがどこなのか説明をした。その甲斐あって時間が経つにつれて平常心を取り戻していく。
「じゃあここは、シュトルム王国にあるリルという村なのですか?はぁぁ...俺は一体どうしてしまったんだ...あ!トンボさん遅くなってごめんなさい。わざわざ助けてくれてありがとうございます。俺は、
「誰かが倒れていたら助けるのは当たり前だ。それにしてもマサトとは変わった名前だな。そうだ。腹が減っただろ?スープを持ってきてやるから待ってろ」
そう言って、部屋から出ていくトンボ。
真人は、改めて部屋を見渡してみると、日本には存在しないだろうという木で簡単に建てたような作りであった。更には、ベッドも木で出てきており、木以外の素材が見当たらないのだ。
「スープを持ってきたぞ。鹿肉とこの村で採れた野菜が入った特製スープだ」
「ありがとうございます。いただきます」
真人は、木の入れ物を受け取ってスープを飲み始める。味は、薄味で塩気も一切なく、素材のみで仕上げたスープであった。お世辞にも、うまいとは言えるスープではないが、トンボの前でそんな事を言えるはずもない。
「トンボうまいよ。鹿肉の処理がしっかりされていて一切臭みがない」
「ブッハハハハ。マサト嘘はよくねぇな。顔にまずいって書いてあるぞ。しかし、処理については本当らしいな。自慢じゃないが、解体は得意なんだ」
全て見透かされた真人は苦笑いを浮かべるしかなかった。
「アハハ...ごめんなさい。味が薄いなって。でも香辛料か塩を入れたらおいしくなりますよ」
「やっぱりな!着ている服が上等だし、言葉遣いもしっかりしてるからお貴族様じゃねぇかとは思っていたんだ。それと、平民はおいそれと塩や香辛料は使えねぇよ。毎食に金貨なんか払えねぇわ」
貴族?金貨?塩と香辛料が使えない!どういうことだ?
「待ってくれ?この世界には、貴族がいて貨幣は金貨を使うのか?それに塩も香辛料もなかなか手に入らないと?」
慌てて聞いた所為で、敬語ではなく普段通りの話し方になる真人。
「おいおい!お貴族様がいて、貨幣も銅貨・銀貨・大銀貨・金貨・大金貨があるのは当たり前だろ?塩と香辛料なんかお貴族様しか口にできねぇよ。頭でも打っておかしくなったか?それより、その話し方の方が俺は好きだぞ」
待て待て!本当に王国も存在するのか?冗談だと思いながら聞いていたけど。まさかの異世界ってやつに来てしまったのか?でもそうとしか考えられない。
「トンボ...俺、異世界から来たみたいだわ...」
「ブッハハハハ!またおもしろい冗談...って本当なのか?」
「冗談ならよかったけど...」
トンボは、信用してくれたのかわからないが、真剣な顔になる。
「異世界人には、2つ特徴がある。1つは肩に星のマークがある。もう1つは、スキルが3つ与えられているはずだ。まずは、肩を見せてみろ」
そう言われたので、シャツを脱いで肩を見せる。すると、本当に星のマークが刻まれていたのだ。
「あったな...次はステータスって唱えてみてくれ」
「ステータス」
そう言うと目の前に水色の画面のような物が出てきて文字や数字が書かれている。
名前:松原 真人(35歳) 種族:人間 Lv1
HP:10 MP:8
攻撃力:10 防御力:8 素早さ:12
スキル:異世界言語(S) 屋台(S) アイテムボックス(S)
「スキルには、なんて書かれているんだ?」
「異世界言語(S) 屋台(S) アイテムボックス(S)と書かれているよ。これで確定だよな?」
トンボは、驚いて目を丸くしている。
「あ、あぁ...異世界人確定だな。しかも、スキルの最上級のSが3つとは...アイテムボックス以外聞いたことがないが、これから裏庭で試してみるか?裏庭なら誰かに見られる心配はないぞ」
「そうするよ。何から何までありがとう」
そう言うと、トンボはニカッと笑って「いいってことよ」と言う。
真人は、トンボに助けられてよかったと改めて思うのだった。
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