第3話 コーンポタージュに絶叫するトンボ!

今は、トンボの家の裏庭に来ている。家の塀は木で出来ているが3重くらいになっており、高さも2m以上あった。理由を聞くと魔物が襲ってきた時に侵入を防ぐ為とのことらしい。


「異世界言語とアイテムボックスは、ある程度理解できるから屋台を出してみるよ。ってどうやればいいんだ?」


やり方を知っていると思っていたトンボは、思わずズッコケてしまう。


「おいおい、知らねぇのかよ。頭の中でスキル名を唱えるんだ。やってみろ」


『屋台』


すると、小さい屋台が出てきた。日本で言うところのおでん屋台やラーメン屋台のような感じだ。


「なんじゃこりゃ?」


「俺の国で屋台と呼ばれていてこれで料理を提供するんだ。ん?なんだこれ?」


屋台を見るとステータスの時と同じで画面が出ていた。屋台の中に回って確認してみると、4つ画面がある。そこには、在庫と発注と調理器具と食器と書かれている。下を見ていくと無数の食材と調味料と調理器具と食器が存在していた。気になった真人は、画面を色々操作してみる。


「お、おい、マサト何をやってんだ?」


しばらく様子を見ていたが、真人が何もない空間を指で操作しているので、何をしているのか気になってしまったトンボ。


「あ、あぁ〜悪い。ついつい気になって。でも驚くと思うよ。トンボ、ちょっと手の平を出してみて」


言われた通り手の平を出すトンボ。そこに、瓶を振って細かい白い粒状の物を乗せる真人。


「なんだこれ?」


匂いを嗅いでみたりするトンボ。


「とりあえず舐めてみてくれよ。ほら毒とかはないからさ」


躊躇するトンボに、舐めても平気だということをアピールする為に、先に真人が舐める。

それを見たトンボは、恐る恐る手の平の物を舐めてみる。すると舐めた瞬間、目を見開いて驚く。


「まさか、塩なのか?いや間違いねぇ。一度だけ味わったことのある味だ!どういうことだ?」


トンボは、真人の肩を両手で揺らして問い正す。あまりの力に真人の首がグワングワンと縦に揺れる。


「ト、トンボ落ち着け!死ぬ〜」


「すまねぇ〜あまりのことに驚いちまった。で、塩がなんであるんだ?」


揺らされすぎて吐き気をもよおしてくる真人。


「ふぅ〜あぁ〜まだ目が回る。はぁはぁ...塩は、この屋台から出せたんだ。説明すると、金があれば発注と言って俺の世界の食材や調味料が買える。今のは、在庫...元々この屋台に残っていた物を出したわけだ。トンボ、さっきのスープのお礼にめちゃくちゃうまい物を作ってやる。待ってろ」


「お、おい!急にって聞いちゃいねぇな。とりあえず座って待たせてもらうか」


まさか、異世界まで来て料理が出来ると思っていなかった真人は料理に夢中になり、トンボの言葉など耳には届いていなかった。


真人は、画面から包丁とまな板と鍋とフードプロセッサーを取り出す。しかも、屋台には水道もコンセントも電気もついているのだ。


まずは、パセリをみじん切りにして玉ねぎ60gを薄切りにして中火で熱した鍋に、有塩バター10gと玉ねぎとコーン250gを加え、玉ねぎがしんなりするまで2分程炒める。次に、白ワイン50ml と塩 小さじ1/4と白こしょう ふたつまみを加え、中火でひと煮立ちさせる。そして、水を加え蓋をして5分程中火で煮込む。 煮込み終わったら粗熱を取りフードプロセッサーに入れ滑らかになるまで混ぜ合わせる。 次に、ざるでこしながら鍋に移し、牛乳200mlとコンソメ顆粒小さじ1/2を加え沸騰直前まで温める。出来上がったら器に盛り付け、パセリを散らしたら完成である。


「お待たせ!これが、俺の世界で老若男女問わず人気のコーンスープだ。食べてみてくれ」


そう言うと、トンボはスプーンを掴み、スープで口に運ぶ。食べた瞬間、何故か目を見開いてスープと真人を交互に見てから、スープをまた飲み始める。それ以降は、スープに夢中になりあっという間に飲み干してしまったのだ。飲み終わると下を向いてワナワナと震え始めるトンボ。


「なんじゃこりゃぁぁぁぁぁ!!!」


トンボは、天高らかに大声で叫ぶのであった。


「マサト、なんてもんを飲ませやがるんだ。美味すぎて何がなんだかわからなくなっちまったぞ。優しい甘みに濃厚な味わい。今まで食ってたもんは、なんだったんだと思えてきた」


真人は、トンボの反応に驚いたが、あの味の薄いスープを飲んでいたらそうなるだろうし、日本では見たこともない新鮮な反応に面白くて笑ってしまう。だが、異世界の人にもおいしいと思って貰えたことが嬉しくなるのであった。


「これが、俺の世界の料理だ。凄いだろ?」


「凄いってもんじゃない!この旨さ、どんな魔法を使ったんだと思ったぞ」


ドンドンドン


「おーい!トンボ大丈夫か?叫んでいたようだが」


さっきの叫び声で近くの住人が様子を見に来たようだ。


「マサト、屋台をすぐ隠せ!それが見つかったら大変なことになっちまう」


それを聞いた真人は、咄嗟に消そうとするがどう消したらいいかわからない。頭の中で、消えろ。消去。帰れ。送還。収納。収納と唱えた瞬間、屋台は消える。


「おぉ〜ここにいたのか?大声が聞こえたが大丈夫か?」


間一髪のところで、住人に見つかることなく事なきを得たのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る