『誰もいない首都』 14 最終回

 


 『あすこに、戸建てがありますね。』


 御徒町さんが、指差した。


 『確かに。』


 『あれは、真人間、または、一次人間といいまして、つまりは、種人間の住居です。あなたも、短期間、あそこにいていただこうと、思っていたのですが、突然、方針転換になりました。まあ、つまりは、あの人達をモデルにして、多数の販売用の複製人間を作ります。集合住居は、販売用の複製人間さんたちです。最近は、宇宙の闇市場で、地球人類の食用としての価格が高騰しております。美味しいからですな。しかも、たとえば、貴方のような武勇伝のある人は、価格が跳ね上がります。ただし、種人間は、我々も、非常に高額にしておりますし、非売品にすることも、おおございます。あなた様も、その方針でした。と、申しますに、種人間と、第一複製人間のお味は、殆ど違いませんから。これは、名のある、LPレコードの場合と似ております。オリジナル盤は、非常にお高くなりますな。その焼き直しバージョンは、必ずしも音が悪くなくても、ちょっとお安い。あなたさまは、その方向のマニアと聞き及びます。わたくしも、好きです。たとえば、ジネット・ヌブーさまの、シベリウスさまの『ヴァイオリン協奏曲』の、オリジナルLPは、現在はとてつもないお値段ですが、日本盤は、それほどでもない。とか。』


 『たしかに、オリジナル、持ってますが。あれには、先に、SPがあったんですよ。しかし、それと、人間をいっしょにできないでしょう?』


 『確かに確かに。しかし、宇宙生物側は、そこは、気にしません。あくまで、品質なのですが、それでも、オリジナル人間には、異常な興味を示す種族がありまして、いま、やって来ている、パープルスバール星人は、その代表格です。しかも、お金持ちです。我々が、お腹から手が出るほどほしい放射線処理装置も持っております。なにやら、あたりの生命体を探査する、良く分からない装置も持ってる。ただし、わりに、礼儀正しいし、お手洗いは、彼らには、タブーな、場所らしいです。なので、たまたまいた、あなたを買いたいというのは、必定。まあ、政治的には、彼らに、嘘を突き通すのは、首相さんでさえ、なかなか難しい。なんというか、我々政府の、『マスター』が、許さないかもでして。また、実は、銀河連盟が、地球に査察に入るという情報があります。連盟が入れば、闇市場は、閉鎖され、我々政府も、そのままにはならないでしょう。潮時なのですよ。なので、今回は、あなたの複製を作りまして、すり替えました。最新手法で製造したので、区別はつかないでしょう。』


 『なんだか、むりやりな話です。あなたは、ぶっとびな、オカルト話をなさっているような気も、しますけど。マスターって、なに?』


 ぼくは、取りあえず、言ってみた。


 『さようです。さようです。わたしが、複製人間であると、単独で証明するのは、かなり、難しいです。一般的なDNA検査では、見抜けない。しかし、この、小さな検知器なら、すぐに判断します。これは、地球人類の至宝です。こうやって、      🤷‍♂️ あら? 🐵🐵🐵🐵🐵🐵🐵』


 御徒町さんは、『マスター』については、答えずに、スーツのポケットから出した、集音器サイズの機械をいじりながら、しかし、突然、ちょっと固まった。


 『え? ど、しました?』




          おしまい





         🐵©️?🐵



        

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『誰もいない首都』 やましん(テンパー) @yamashin-2

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