『誰もいない首都』 9


 その、がらんとした部屋に、首相と、御徒町さんが入ってきた。


 入ってきた御徒町さんが、小さくうなずくと、今までいた、御徒町さんは、出ていった。


 その、入ってきた御徒町さんが、変わらぬ落ち着いた口調で紹介した。


 『皆様方、こちらが、首相の忍蔵です。首相、こちらが、パープル・スバール星の、食料調達省次官、アイドル閣下です。』


 紫色の生命体の中の、リーダー格らしきが言った。


 『おー。首相閣下。お目にかかれまして、光栄でありましる。』


 『ありがとうございます。ぜひ、良い、お取り引きになれば幸いでございます。』


 『ししょうさん。あれは、試食できるのでしかな?』


 『もちろん。ご希望ならば、今夜のディナーに、いかがですか。』


 『おー。すばらし。ああしたのは、どのくらい、すぐ、持ち帰りで、用意できましか?』


 『100人なら、すぐに。人類は、年寄りほど、甘味が増します。ただし、若いほうが、しこしこし、淡白です。もちろん、個体差がありますし、各種のタイブも取り揃えております。お味も、お好みに合わせた調整もできますし、無調整でも結構です。若いのも見ますか?』


 『ぜひ。ま、そこらあたしの詳細は、試食してかられすな。』


 『お望みのようにいたしましょう。』



          🥩



 ぼくは、確かに、かなり疑っていた。


 そもそも、『最後の生き残り』なんて、信用しがたい。


 とはいえ、そういうことは、十分ありうることだともおもう。


 実際、この、世間というものが、単なるバーチャルに過ぎないのではないか、とは、日々、思ってみてもいたことだ。


 地球上で、生き物が、普通に生活できる場所は、もはや、かなり限られているのは間違いないからだ。


 それにしては、なにもかも、整いすぎている。


 出来すぎは、嘘が多いものだ。


 残存放射線量が高すぎて、安心して、すめない場所だらけなのは、各国政府がどう説明していても、または、していなくても、だいたい、どこの国民も、みな知っているだろう。


 流言飛語に惑わされないようにと言いながら、一番誤ったデータを流したのは、各国政府だったからだ。


 戦後しばらくは、民間のマスコミからの情報もあったが、最近は、マスコミは何かに吸収されたらしい。


 治安維持の観点から、仕方なかったとの見方は巷にもあった。


 

 けれど、時間の経過と共に、何かが、おかしくなってきていた。


 

 核戦争直後の緊張感が、なんというか、つまり、適切に続かなくなり、なんらかの打算や、レールの切り替えがあったらしき雰囲気は、明らかにしたのだが、詳細は、どんどんと、分からなくなっていったのだ。


 

       🚂💨😵💨


 


 


 

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