旅の小話 冷たく温かな優しさ

とある村の暗闇を、必死に駆け抜けていた。疲労困憊で足がもつれそうでも、彼女は何度も何度も民家の扉を叩いた


「すみません!助けてください!」


しかし、閉ざされた扉から返ってくるのは、すべて同じ「巻き込まないでくれ」という冷たい言葉だった。顔を引きつらせた少女の後ろには舌なめずりをしながら笑う、曲がった角を生やし、腹が丸く突き出た三体の悪魔が目の前に迫っていた。


「ギャハハ、ひでぇ大人達だなぁ」


そう言って笑いながら、一体の悪魔が少女に馬乗りになり、少女の頬を伝う涙を舐めた。


「んぃい、いい顔だぁなぁ、ほら泣け!そしたらもっと美味くなるからよぉ」


悪魔達の下品な笑い声が夜の村に響いた時、一体の悪魔が体を震わせた。


「んっ、なんか寒いな」


そう言って振り返ると、そこには白い服装に身を包んだ大男が立っていた。


一体の悪魔が男に近づき「俺達は悪魔だぞ?痛い目みたいのか?」と首を曲げた。


三体の悪魔が男を取り囲み「何とか言ったらどうだ?」と一体の悪魔が近づいた瞬間、大きな手で頭を掴んだ。


「ぎゃああ!いってぇ!」


掴まれた悪魔は「離せ」と何度も喚き、頭を握る男の手を何度も叩いたが、びくともしない。


「冷てぇ!」


そう言う悪魔の頭はみるみるうちに白くなり、次第に動かなくなった。


男はその頭を、まるで木の実をつぶすように、握り潰した。


パラパラと地面に頭の破片が落ち、残された悪魔達は顔を青ざめ「こいつ雪だ!逃げるぞ」と言って、背を向けて走り出した。


男はそんな悪魔達を見て「はあ…」と、ため息を吐き、大きく足を振り上げ、地面を踏みつけた。


踏みつけた地面から氷塊が突き出し、走る悪魔達に向かって進んでいき、追いついた瞬間、二体の悪魔は氷塊に包まれた。


悪魔の入った氷塊を砕き、手についた氷を払った男は、腰が抜けて動けず、震える少女に近づき「もう大丈夫ですよ」と言ったが、少女は悲鳴を上げて気絶してしまった。


困った男は、慣れた手つきで自分の上着を少女に着せ、近くの民家の扉の横に寝かせると、静かにその場を去った。


霜の足跡を残し、悪魔から恐れられる彼は、悪魔達から「白い悪夢」と呼ばれている。


そんな彼は、今日も人間に恐れられながら、悪事を働く悪魔達に制裁を下しているのだった。

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