第24話 獣人少女と魔術の本 その3

次の日の朝、私は爆音で飛び起き何事かと辺りを見回すと少し離れた木の影でアミスターが立ち尽くしていました。


「アミスター!」


魔物か野盗が攻撃をしてきたのだと思い、急いでアミスターの元へ駆け寄り、彼女の頭を抱きしめその場に身を伏せました。


「我が身を守る壁を!」


すぐに私たちの周りに魔力障壁を出し、手早くアミスターに怪我がないかい腕や顔を確認しました。


「大丈夫ですか!」


「大丈夫…」


アミスターは混乱している様子でした。


「敵は!」


「え?」


「敵はなんですか!」


「敵?」


私はアミスターが「何を言っているんだこいつ」という表情をして見つめてくるので全く状況が掴めず混乱していました。


「おはようマチ、どうしたの?」


アミスターはいつものようにほんのり笑って言いました。


「どうしたも何も、物凄い爆発音が聞こえて…」


「ああ、それ私の魔術だよ」


「な、なんだぁ…」


私は安心してそのままアミスターの上に覆い被さるように崩れました。


「マチ…重いよぉ…」


「ああ、ごめんなさい!」


謝りながら立ち上がり、アミスターに付いた土を払った後、何があったのか詳しく話を聞くと、早く起きてしまった彼女は私が起きるまでやる事が無かったため、魔術大全の詠唱を片っ端から唱えていたいたみたいです。


「それで、何を使ったんですか」


「これ!」


アミスターが指差したのは、稀に剣士が使うただの付与魔法でした。


「付与魔法でなんであんな爆発音が?」


「じゃあ、見ててね!」


「ああ…」


アミスターは地面から木の棒を拾い上げ、目を閉じながら詠唱を始めました。


「えー…雷を付与せよ!」


「雑っ!そんな詠唱でできるわけ…」


すると彼女の持っていた棒がうっすらと黄色く光を放ち始めました。


「ええ…あんな詠唱で…」


「だって難しくて読めなかったんだもん!」


アミスターはそう言いながら雷を付与した木の棒を遠くに投げ、その木の棒が地面に落ちた瞬間、眩い光と共にその場所に大きな雷が落ちてきました。


「へ…?私知らないこれ…」


私が呆然としていると、アミスターが私の前に来て撫でて欲しそうに尻尾を振ってニコニコしています。


「すごいでしょ!」


「すごいですけど…町とか村で使っちゃダメですよ…」


「はーい」


そう言いながら雷を付与した木の棒を投げ、爆音と共にはしゃぐ彼女を見て、少し魔術を教えるのは早かったかなと思いました。

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