第22話 獣人少女と魔術の本 その1

「へい!やあ!」


背の高い木が並ぶ森を歩いていると、アミスターが手頃な棒を拾って掛け声と共に振り回し始めました。


年頃で棒を見ると興奮するのか、それとも獣人族の闘争心が騒ぐのか……

まあ前者でしょう。


「魔物と戦ってみますか?」


年齢的にそろそろ戦闘の経験があってもいいかなと考えていたので、いい機会だと思いアミスターに問いかけてみました。


「いいの!?」


アミスターは純粋なキラキラと光る瞳して尻尾を振りながら私の元へ来て、抱きついてきました。


「いいですよ」


「やったっ!」


私は彼女を撫でながら話を続けました。


「剣術と魔術、どっちにしますか?」


私の質問を聞いて、アミスターはうーんと唸りながらその場でゆっくりとぐるぐる回り始め、尻尾をピンと立てて止まりました。


「どっちもやりたいけどマチみたいに魔術がいい!」


「そうですか!それは嬉しいですね。ではこれを…」


私は鞄の中に手を突っ込み、本を取り出しアミスターに差し出しました。


「どうぞ、魔術大全です」


「魔術大全?」


「はい、魔術の種類や詠唱についてのことが詳しく書いている本です、昔師匠から盗ん…譲ってもらった物ですが、内容は全部覚えているのでアミスターが使って下さい」


「本当にいいの……?」


アミスターはまるでお宝でも見つけたような表情をして両手を開き、私からの返事を待ちながら手を開いたり閉じたしています。


「いいですよ」


私が優しくそう言うと、アミスターは待ってましたと言わんばかりに私の手から勢いよく本を取り、それを空へと掲げました。


「っ……、これが…魔術の本!」


「よかったですね」


私がそう言いながら頭を撫でるとアミスターは胸いっぱいに本を抱きしめ、眩しいほどの満面の笑みを浮かべながら私の方を向きました。


「うん!ありがとうマチ!大切にするね!」


「ええ、頑張って下さい」

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