第9話 待ち続ける者

私は草原にある大きな湖の周りの道を歩いていました。

どこまで続くのだろうと思うほど長い道を歩いていると、遠くに小さく何かが見えてきます、夜まではまだ時間があったので気になった私はそこへ向かうことにしました。


「あれは、ゴーレム?」


だんだんと近づくにつれてそれが大きなゴーレムだということに気づきました。さらに歩き、ゴーレムをいざ目の前にするとそれの大きさに驚愕しました。


「お、大きい…」


私の五倍ほどはあるでしょうか、家ほどの大きさのゴーレムは一歩踏み出せば私が簡単に潰れてしまうほどの大きさです。しかし一体誰がなんの目的でこんな何もないところにこのゴーレムを作ったのでしょうか、これだけの大きさならかなりの敏腕の方のはずです。

蔦が絡んで全く動く気配の無いゴーレムを観察していると湖の方に瓦礫の山があるのに気づきました。


「草に紛れて全く気づきませんでした…」


瓦礫近づくとその中に屋根らしき物があるので元は家だったのでしょうか、苔生していているので年月が経っているのがわかります。

しかし何があったらここまで家がバラバラになるのだろうかと思いながら瓦礫を触ろうとした時後ろからドスンと大きな音が鳴りました。


「えっ」


振り向くとあの動く気配が全くなかった大きなゴーレムが私の方へ近づいてきます。


「ま、まずい逃げな…、あれ?」


おそらく長い間放置されていたせいか、動きがとても遅く歩いて逃げれるほどでした。ゴーレムを見ながら少し逃げると、彼は私の事を無視して真っ直ぐ瓦礫の山へと向かっていきました。


ゴーレムは瓦礫の前へ着くと振り向き、私の事をまるで睨みつけるかのようにじーっと見つめてきます。

そこで私は彼がこの家を守っている事に気がつきました


「かわいそうに…きっとあなたの主人はどこかに行ってしまったか、それかその家の中に…」


ゴーレムの赤い瞳がチカチカと不規則に点滅を繰り返し、今にも活動を停止してしまいそうです。自分が今にも死んでしまいそうなのに使命を全うする彼を見てなんだか悲しい気持ちと申し訳ない気持ちになりました。これ以上ここに居るのは彼を苦しめてしまうことになると思った私はここを今すぐに去ることにしまいた。


「ここを荒らすつもりはなかったんです、申し訳ありません」


そう言って、後ろを向きこの場から離れようとした時、ゴーレムは膝をつき、ゆっくりと目から光が失われていきました。おそらく最後の力を振り絞って動いていたのでしょう。


「お疲れ様でした…」


そして私は彼の前に一輪の花をお供えして、その場から離れ、もともと歩いていた道を進み始めました。




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