旅の小話 先生と生徒
「じゃあ私の言葉を復唱してみてね」
「わかりました」
そう言いハイエルフは、エルフの手に自分の手をかざし詠唱を始めました。
「我が魔力よ、球体となり、敵を貫け」
続けてエルフも詠唱を始めます。
「我が魔力よ、球体とな…」
するとエルフの手と手の中にに小さな魔力の球体がホワホワと集まり始めました。
「やった、でき…」
「集中しなさい!」
次の瞬間、エルフが集中を乱したせいで魔力の玉は暴走を始め、爆発する寸前のところでハイエルフが魔力を吸収し、その場はどうにか収まりました。
「なかなかできないわね〜、でも惜しいところまではいってるわ」
「そうですか…、そもそもあなたさっき無詠唱でやってましたよね…、なんなんですか本当にあなたは…」
エルフがハイエルフにそう捲し立てると、「あら、そうだったかしら」と顔に手をあてくすくすと笑っています。
そんなハイエルフを見てエルフは「詠唱したらとんでもないんじゃないですか」と言うと「じゃあ見せてあげようかしらと」詠唱を始めます。
「我が魔力よ、剣となり、槍となり、弓となり、我の武器となれ」
ハイエルフが詠唱を終えると、ハイエルフの前にグヨグヨと蠢く魔力の塊が出現しました。エルフはそれを見てゴクリと唾を飲みます。
「頑張ればこんなこともできちゃうのよ〜」
ハイエルフが魔力の塊に触れた瞬間、それが大曲剣のように形を変えました。
「ね、すごいでしょ?」ハイエルフはそう言いながら、先ほど仕留めたロブ酢クイーンをスパスパとまるで雲を切るかのように解体を始めました。
解体を終え、ハイエルフはエルフの方へ向き直りました。
「まだまだあるわよ〜」
「え、まだできるんですか」
少し引き気味のエルフの横でハイエルフは解体した素材の一つを空へと投げると、大曲剣のような形になった魔力の塊を球体に戻し、それをまるで、ゴムを引っ張るよに引き伸ばし、魔力の塊を空へと放ちました。
すると魔力の塊は空中でみるみると槍の形へと変形し、それが空へ投げた素材に当たると、素材は魔力の槍によって粉々に破裂しました。
「ふへっ」
そんな現実離れした光景を目の前にしエルフが変な声を出しているのを見てハイエルフは平然と笑っていました。
「それじゃあ、練習に戻ろうかしら」
「……、え…、あ、はい!」
「マチちゃんは適応属性が海だから、水をイメージするといいわ〜」
「え、なぜそれを…」
「長く生きてるとわかっちゃうものなのよ〜、ちなみに私は星よ」
「はあ…」
少々不満げな態度でエルフは練習を再開しました。
その後、エルフがここを立つまでの間、永遠とハイエルフの補助をつけて練習を続け、小さな小さな豆粒ほどの大きさの魔力の塊を一人で作り出せるようになった頃。疲れて地面で横たわるエルフを見て、ハイエルフはくすくすと笑っているのでした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます