旅の小話 おしゃべり好きな傭兵

「それでなぁ、俺の上官がな、お前の取り柄はその元気とでかい筋肉だけだって言うんだよ!」


「はあ、そうですか」


照りつく日差しの下で小さなエルフと大きな傭兵が会話をしていました。


「それで俺は、ここで毎日入ってくる人に挨拶して、持ち物の検査とかをしてるわけさ」


「それは、大変そうですね…」


エルフにとっては、こんな話どうでもいい!今すぐ涼しいところで休みたいという気分でしたが、圧の強い傭兵の話は一向に止まる気配はありません。


「ずっとここに立ってるおかげでこの通り肌も真っ黒ってわけよ、まあ歯は白いんだけどな!」


「そうなんですね、それでは私はこの辺で…」


口を大きく開き、ガッハッハと笑う彼から逃げようと、そう言ってエルフが話を切ってここを去ろうとした時、またおしゃべり好きな傭兵が話を変えて話しかけてきました。


「あ、そうそう旅人さんよ、あんた魔術師なんだろ?」


「はい、そうですけど、どうしました?」


少しため息混じりでエルフはその筋肉お化けに向かい少々ぶっきらぼうに返しました。


「俺、ずっとここにいるだけでこんな見た目してるけど戦ったことがなくてな」


「まさか私と戦わせろと?」


「いや、違う、あんたの魔術を見せて欲しいんだ、一回でいい」


それを聞いてエルフは大きなため息を一回吐きました、そして彼に向かって小さな魚の影を一つ召喚しました。


「おお!すごい!これが魔法か!」


「満足しましたか?」


腕を組み、見るからに不機嫌な彼女は、魚の影ではしゃぐ彼に問いかけました。


「ああ、すごい、初めて見た…だが」


「だが?」


「意外と地味だな!」


清々しいほど腹が立つ笑顔の彼の足に向けてエルフは、一発蹴りを入れて、それじゃあと去って行きました。

 

その後、エルフからもらった魚の影ではしゃぎ続け、仕事をほったらかした傭兵は、上官にこれでもかと言うほど叱られたのでした。

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