第2話 ブルーポーション
「この国に来たならブルーポーションを是非飲んでいくといいよ!」
「そう…ですか…」
「スカッと美味しいブルーポーション、値段は50カッパーだよ」
真っ黒と日焼けした肌の傭兵さんが真っ白な歯を見せて笑いながら汗だくで息が上がってる私に言いました。元気のいい傭兵さんの話を適当にあしらった私はそのまま入国後、真っ直ぐに進み、宿屋さんを探しに行きました。城下街は水路が多く、その水路にそってカラフルな建物が並んでいました。何度も橋を渡って海沿いの緑色の宿屋さんを見つけました。今日はここにしましょう、きっと夜は海がきれいに見れます。ワクワクしながら宿屋さんに入りました。
「いらっしゃいませ、おひとり様ですか?」
人の良さそうなアフロ頭の顔がシワシワのおばあちゃんが居ました
「はい、そうです」
アフロ…
「えー、でしたらすぐお部屋を案内できますよ、運が良かったですね。お値段ですは25シルバーです。」
アフロに気を取られてあの値段で承諾してしまいました、まあ、少しくらいいいでしょう。お金を払った後、部屋に案内されました。部屋には、窓際にベッドが一つありその横にテーブルがあるだけでした、この値段でこの部屋かと思いましたが、まあ、海が見れるならと自分を納得させました。
ベッドに膝をつき、窓を開けると、気持ちい潮風が入ってきました、外を覗くとどこまでも続く青い海、それを縁取るように長い海岸沿いの屋台があり、人が川のように流れていました。その光景をみてうっとりとしているとお昼時を過ぎてしまいました。時間の流れは早いものですね、ベッドから降りて、カバンから財布だけを取り出し、少し屋台を見て回ろうと外に出ようとした時。
「あんた、この国は初めてだろ、ブルーポーションを飲んで来なさい」
あのアフロのおばあちゃんでした、彼女はそう言うと私の手に50カッパーを握らせて、ニコッと笑って「行っといで」と言いました。
おばあちゃんに見送られ、私は屋台の列に向かって行きました。
さすが海の国屋台も海鮮系のものが多いです、フライやイカ焼き、豆と穀物とドライフルーツを擦り潰してミルクを混ぜたもの、いろんな果物にスイーツまで、もちろん生のお魚も売っていました。しかしどんなに歩いても一向にブルーポーションは見つかりません、先ほど屋台でも勧められたのでさすがにここにあるだろうと思いましたが…
そうだ、あのアフ…おばあちゃんに聞いてみましょう、私は向いてる方向をくるっと変えて、海に隠れそうな夕陽を見ながら宿に戻りました。
「あら、おかえり」
「ただいまです、あのお聞きしたいことが!」
宿屋さんに着く頃には私の頭はブルーポーションのことで頭がいっぱいになっていました。
「なんだい、そんなに慌てて」
「あの、ブルーポーションってどこに売ってるんですか」
「ああ、あれね城下街の中だよ」
「街の中」
「そう、街の中、入ってきたらわかるわよ」
そう言うと「そろそろ寝るわね」と私に小さく手を振り裏へ行こうとしたので、彼女の背中に向かって小さくおやすみと言ったのでした。おばあちゃん、せめて街のどこにあるのか教えて欲しかった。
部屋に戻り寝る準備をして、明日朝早くから出てブルーポーションを探すために早く寝ることにしました、絶対に飲んでやると意気込んで布団を被りました。
ドンドンと外から太鼓の音が聞こえ、何事かと窓を開けると、海岸沿いの屋台道に提灯で照らされお祭りをやっているようで、その後ろで海が月明かりに照らされて昼間とは違う色気のある光り方をしていました。とっても綺麗でこの部屋が取れてよかったと思いました。涼しい夜風に当たり私はそのまま景色を眺めながら窓の縁に突っ伏して寝てしまいました。
アフロのおばあちゃんに揺すられて起きた時にはとっくにお昼を過ぎていました。くう、せっかく朝早くから起きてブルーポーションを探す予定が…、まあいいでしょう、今からでも探します、あ、おばあちゃんありがとうございました。
私は足早に宿屋さんから出るとおばあちゃんの言ったことを思い出しました。
“街の中に入ってきたらわかるわよ“そう彼女は言っていました、つまり、この国の入り口のまっすぐの通りにあるのではないかと私は推測しました、そう私が暑すぎてきっと気づかなかったのでしょう、寝過ごしたおかげで国を出るまでの時間があまりないので急ぐことにしました。
パン屋さん、雑貨屋さん、服屋さん、パン屋さん、家具屋さん、魔道具屋さん、パン屋さん、パン屋さん…、さっきからパン屋さん多くないですか?まあ美味しいからいいんですけど、あ、この帽子かわいい、あと魔導書も少しみて、と言う感じで殆どのお店を見たのですが、気づけば時間はなくなりこの国の入り口が見えてきました、諦めて結局なかったなと肩を落としトボトボと歩いていると、入り口の真横の建物にそれがありました。
そう、とても目立つ大きな看板で“ブルーポーション“と!入り口からだと死角で見えなかったのでしょう、やっとありました!やった!やっと飲める!
私は走ってそこへ向かいました。
「いらっしゃい!ブルーポーションだね!一本50カッパーだよ」
「はい!50カッパーです!」
私はあのアフ…おばあちゃんからもらったお金を渡し、瓶に入った青色の液体を受け取りました。そして一口、グビっと飲みました。
爽やかな味でスカッとしていて、ほんのり甘くて、シュワっとしていて、うんうん
うん、うん…、まずくはないけど、また買うことはないかな…
絶妙な感情のまま昨日の傭兵さんに話しかけられました。
「あ!ブルーポーション!おいしかったでしょ〜この国を出る時みんな美味しいって言って出ていくんだよ!」
「はは…そうなんですか」
「それでどうだい?美味しい?」
「あ、えっと、美味しいです…」
「はは!それはよかった!それじゃあご武運を!」
「ありがとうございます…」
傭兵さん、おそらく皆さんあなたの圧で美味しいと言ってるだけだと思います。
なんだか期待してましたが拍子抜けでした、微妙な気分ですが、まあ、また旅をしてれば忘れるでしょう。
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