エルフ旅行記

海埜水雲

第1話 胞子の森

薄暗くて埃っぽい、周りにあるのは木ではなく怪しく光る巨大キノコ。

そんなキノコまみれの場所で、キノコに寄生されちゃったエルフがこの私、マチです。


好奇心で入ったきのこの森、美味しそうだったのでつい食べてしまいましたが、食べてはいけないきのこだったのか、気づけば頭の上にきのこが生えていました。


「はあ…」


頭から生えているきのこをいじりつつ歩いていると、小さな池のような場所を見つけました。

ちょうど喉が乾いていたので小走りで池に近づくと、水がうっすら青白く発光していて、触れてはいけないオーラが漂っていました。


「流石にこれは飲めませんね…」


歩き疲れたのでその池の近くで休むことにしました。


「どうしよう…」


私はそう小さく呟いて、頭のきのこを揉んでいました。


師匠よ、なぜきのこに寄生された時の対処法を教えてくれなかったのですか。


そんな事を思いながら、ほろりと涙をこぼし、私は師匠の言葉を思い出しました。


「キノコに寄生されるのはよっぽどのバカだよ」


その言葉を思い出し、悔し涙を流しながら、何度も近くのキノコを殴りつけました。


師匠、私はよっぽどのお馬鹿さんだったようです、ごめんなさい…



さて、気が済むまで殴ったので、この状況を脱する方法を考えなくてはいけません。


とりあえず師匠からもらった、「何かあった時に開けろ」と言われた箱があったので、それを開けてみます。


中には、紙が一枚入っていて『自分でどうにかしろ』と書いてありました。


はは…ほんとに、あの人は…ほんと…

渡された箱まあまあ大きかったのに…



ほんとに自分でどうにかするしかなくなりました。


さて、どうしましょうか、とりあえず引っ張ってみますか。


「痛たっ!」


思い切り引っ張ったのでかなりの痛みです。

張り付くタイプ痛みです。

なんで引っ張ったんだろうと少し後悔しました。



よし、頭の痛みも治まったので最終手段です。ナイフで切ります。


恐る恐るナイフを頭に生えているキノコに差し込みました。

少し弾力がありましたが、驚くほどあっさり切れて、私の顔ほどの大きさのきのこが取れました。


意外と軽いですね。


これでこの子との生活は終わりです、寂しくなりますねきのこさん、なんて手に持ってくるそれに向けて話しているときあることに気づきました。


「石突の部分が取れていない…」


一応確認するとちゃんとありました。


どうしましょうか、無理矢理抉ったとして、出血が多すぎて回復が間に合うとは思いません。

はぁ、この子との生活はまだ続きそうです。


取り敢えず今日は諦めてご飯を食べて寝ることにします、せっかくですし私産のきのこを食べましょう。

石突は明日取りましょう。そうしましょう!



なんとなく想像はついていましたが、目が覚めたらキノコがまた生えていました。

振り出しに戻りましたね…

し、師匠はこう言う時。


「周りのものを使って工夫するんだ」


と言っていました。


あの人もたまにはいいこと言いますね。

それじゃあ、周りのものを使ってどうにかしましょうか…って、そうでした、ここはキノコと土、あとは、謎の青白く光る池の水だけでした。

頭を抱えて悩みながらその場をウロウロしていると、水の周りにきのこが生えていない事に気づきました。


これは使えるかもしれないと思ったので少し実験をしてみることにしました。

いきなり素手を入れるのは流石に嫌だったのでまずはそこら辺の土を入れてみました。


反応は、ないですね。


次は頭のきのこを切り取って投げ入れてみました。


すると、物凄い勢いでしゅわしゅわと音を立てながら溶けてしまいました。


これできのこと離れられる!


そう思いましたが、あんな溶け方をしたので頭に掛けるのは少し勇気がいります。


布に少し染み込ませて、試験として肌につけてみます。


思ったより生暖かくて、ぬるぬるしてます。でも体は溶けなさそうですね。


「さて、いきますか…」


私は意を決して頭を池の水に突っ込みました。

頭の先でしゅわしゅわと溶けている感覚があります。


そして、頭のしゅわしゅわと溶けている感覚が無くなったので頭を上げました。


頭の上を触るときのこがありません、ついにキノコが完全に取れました。


髪の色落ちが少し心配でしたが大丈夫そうです。

しかし、頭の上が石突の分凹んでしまいましたので、回復魔術を使いました。


パキパキと音を立てながら頭の形が戻っていきますが、当然骨が変形しているので激痛でしばらく悶えました。


「うぉおお…」


痛みが落ち着いたので鏡で頭を見てみましたが、見た感じ頭の凹みはしっかり戻って大丈夫そうでした。


そして私は、治った頭を撫でながらこの森を後にするのでした。




















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