第4話 ようこそ、新しい世界へ
「あの……」
「では、そろそろ行こうか」
コレットの話を遮るように、クローネがイロハ達に話しかけると、コレットの後ろでイロハ達が背負っていた荷物を整えはじめた。その様子を見て手伝わないクローネが戸惑うコレットの側に来ると見下ろしながらコレットに話しかけた
「要望通り空を飛んで城に行く。置いて行かれないようにな」
そうコレットに話している側ではもう次々と空を飛びモノグロス城へと向かっていく。クローネもリマスに呼ばれ、コレットを残したまま空を飛んで行ってしまった
「コレット、私と手繋ぐ?」
あっという間に姿が見えなくなっていくクローネを見ていると、イロハが手を伸ばしコレットに話しかける。すぐには手を取らず、繋ぐべきかと悩んでいる間にもモノグロス城へと飛び立って行き、残るはコレットとイロハの二人になってしまった
「じゃあ、一緒に行こっか。振り落とされないように気をつけてね」
「はい……」
返事の途中、グイッとイロハに腕を引っ張られ、そのまま空を飛ぶ。コレットがいつも飛んでいる速度より早く移動するイロハ。後ろにはコレットの村や家が見えているが、振り落とされないように腕にしがみつき、振り向く余裕がないコレットは目を閉じたまま、どんどんコレットの家から離れていく
「あのー、ちょっとイロハさん……」
大分空を飛んだ頃、コレットが小声でイロハを呼ぶ。声が聞こえたのかニコニコと笑いながら少し振り向いた
「えーなにー?聞こえなーい」
「もう少しゆっくり行けませんか!」
イロハに向かって精一杯の大声で叫ぶ。急に声を出したせいか、ゲホゲホと咳き込むコレットを見てイロハがまたニコニコと楽しそうに笑った
「うーん、そういたいけどね、ちょっと目的の時間より大分遅れているから我慢してね」
「遅れているのは誰のせいだ?」
「さぁ、誰のせいでしょうかね」
二人の会話を聞いていたクローネが呆れた様子で聞くと、イロハに笑顔で誤魔化され、はぁ。と一つため息をついた
「これでよし、か」
「ここがあの娘の家なのか?」
「うん、コレットの家だよ」
その頃、コレットの家のすぐ側に薪を運び終えたノニア達は、ノニアがコレットの家から勝手に冷蔵庫を探り持ってきた飲み物とお菓子を、リビングで食べてのんびりとしていた
「しかし、だいぶ貧相だな」
「コレットは一人暮らしだからね、物も多く置きたくないって言うし、仕方ないよ」
ちらりとコレットの家の周りを見て呟くと、ノニアが少し苦笑いをして返事をする。それを聞いてクリスタが不思議そうに首をかしげ、家の中を見渡しはじめた
「ああ、コレットの両親はいないよ、小さい頃に何かに巻き込まれて死んじゃったらしくて」
飲み物のおかわりをコップに注ぎながらノニアが言うと、クリスタが驚いた顔をして振り向いた
「えっ、そうなのか?」
「うん、あまり言いたくないみたいだからよくは聞いてないけどね、小さかったコレットは一人あっちこっち渡り歩いてきたとか。本当かは分かんないけど」
「……そうか」
クリスタの声で静かになったコレットの家。すると、外からほんの少し声が聞こえてきてノニアが立ち上がり窓の方に近づいた
「何か騒がしくない?」
と、窓を開けながらノニアが言うと、クリスタ達がノニアの側に来て外を見た。窓から見える空にたくさんの人影から少し離れた所に右往左往する影が見えて、クリスタが指差した
「あれ……もしかしてコレットか?」
「確かに声がコレットに似ているような……」
と、二人が影を見ながら話していると、コレットの薪を持ってきた人達が突然、慌てたように玄関の方へと走り出した
「色々助かった。君たちの事はあの子に伝えておくからな」
「あっ、ちょっと……」
ノニアの止める声を聞かずにバタンと玄関の扉が閉ざされてしまった。また静かになったコレットの家に、クリスタのため息が響いた
「まだ話し聞きたかったのにな、なぁノニア……」
ノニアにクリスタが話しかけると、用意していたお菓子が独りでに動き、置いてあった場所に移動しはじめ、コップもカチャカチャと音をたて、食器を洗うノニアの側に移動しはじめた
「なにしてんだ?」
「なにって、あの人達の後を追いかけようかなって。クリスタは行かないの?」
返事をしている間に、あっという間に洗い終えると、食器達が勝手に棚の方へと移動し、お菓子も片付け終えたノニアがクリスタを置いて玄関の方へと歩き出した
「ちょ、おいっ!待ってって!」
慌ててクリスタも玄関の方に走り、二人一緒に家を出た。ガチャンと勝手に閉まった扉の鍵が閉まる音を聞くとコレットを見た方へと空を飛んでいった
「やっと着いたー!到着遅れたねー」
「……誰のせいだ?」
空を飛び移動しはじめ数時間後、コレットが住んでいた村も遥か遠く見えなくなり不安になった頃、視界に収まらないほど大きな建物の前にクローネ達が舞い降りた
「クローネ様、急いで城の中へ。皆が待っていますので……」
「わかった。イロハ、その娘を宜しくな」
「りょーかいです!」
最後にコレットと一緒に降りたイロハがクローネに元気よく返事をする。明るい声に不安を覚えつつも、リマスと共に大きな建物の方へと歩いていった
「コレット、どうしたの?」
建物を見つめ動かないコレットの頬をつつきながら声をかけると、目の前にある大きな建物を指差しながら、まだ頬をつつくイロハの方に振り向いた
「あの、ここがあの……」
震えるような声でコレットが聞くと、イロハがコレットの体を抱きしめ、今度はイロハが大きな建物を指差した
「そうだよ、ここがモノグロフ城。今日からコレットが住んで、私の指導を受ける場所!」
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