第3話 雰囲気を変える明るい人
その頃コレットは、あまり歩かない道のりを歩かされ不満そうな足取りでクローネの後を歩いていた
「あのー。どこに行くんですか?まだ歩きます?遠いなら歩かず飛んでいきません?」
歩きはじめからずっと愚痴を言い続けるコレットに、後ろにいる人達が苦笑いをしている
「あのー……」
「うるさいな。静かに歩け」
コレットの声にイラついたクローネが足を止め少し振り向き注意をした。その態度と言葉にムッときたコレットも足を止めキッとクローネを睨んだ
「言葉が悪いですね、もうちょっと優しく言ってください」
「悪くない。そっちの聞きようだな」
コレットを見下げながら言い返し、コレットがイラついたように更に言い返し、二人の言い合いが始まり、リマスやコレットの後ろにいた男性達がざわめき始めた
「あんなクローネ様を見るのは初めてだ……」
「ああ、本当にあの子は何にも知らないんだな、だからあんなにクローネ様に……」
二人の様子を見ながらヒソヒソと話していると、コレットとの言い合いに疲れたクローネが、はぁ。と一つため息をついて睨みながらリマスを見た
「リマス、こいつをどうにかしろ。うるさい」
「うるさくないです。遠いなら飛んでさっさと行きましょうって言っているだけです」
「それがダメだから歩いていると分からないのか」
「わかりません。ただ歩くのなんて面倒です」
クローネの前に立ちまた言い返すコレットに、はぁ。とまたため息をついたクローネ。不穏な雰囲気が流れる中、リマスが何かに気づいて空を見た
「クローネ様、来たようです」
「……やっとか」
リマスの報告にホッと胸を撫で下ろしたクローネ。コレットが空を見ると、何かが猛スピードでコレット達の方に降りてきた
「すみません!お待たせしました!」
「遅かったなイロハ。寄り道のしすぎだ」
コレットの側に降りた女性に少し怒り気味に言うクローネ。だが、その女性は気にせずエヘヘと笑う
「寄り道なんてしてませんよ!ただ美味しそうな食べ物と喧嘩になりそうな戯言を聞いていただけですよ!」
「……そうか、まあ無事追いついて良かったが」
不穏な雰囲気を一気に明るく変える程、元気よく笑うイロハという女性に、コレットが少し呆気に取られつつ見ていると、イロハがコレットに近づいてニコッと微笑んだ
「この子は?」
背の高いイロハが少し屈んでコレットを見つめる。腰まである長い髪が風になびいてコレットの頬
に触れた
「コレットという娘だ。さっき拾ってきた」
「拾ってきたなんて言葉が悪いですね」
イロハへの返事にコレットがまたムッとムカついて言い返す。その様子にイロハが少し驚きつつもクスクスと笑ってコレットの頭を優しく撫でた
「君、コレットっていうの?」
「あっ、はい」
「私はイロハ。そのままイロハって呼んでね。私もコレットって呼ぶからさ」
「はい……」
グイッと顔を近づけながら話すイロハに戸惑い小さな声で返事をすると、コレットの頭を撫でながら、二人の様子を見ない振りをしていたクローネにイロハが話しかけた
「ねえ、クローネ。この子もモノグロフ城に行くの?」
「ああ。だが城の事はよくは分からんらしい。イロハが色々教えてやってくれ」
「へー、知らないなんて珍しいね」
不思議そうにコレットを見るイロハ。その視線に少し背筋が伸びたコレットに、イロハがまた少し屈んでコレットに話しかけた
「魔法は使える?」
「はい、それなりには……」
二人の会話を聞いて、クローネはまたため息をつき、男性達が一瞬引きつった顔をした。その雰囲気にコレットが少し首をかしげると、イロハが嬉しそうな顔でうーんと背伸びをした
「じゃあコレットは城に着いたら修行だね!私の修行は厳しいぞ、覚悟しててね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます