日本衰退国史 平成編 第九章 平成9年

日本は重病人で病み上がりの状態であった。そんな状態の体でフルマラソンをしたらどうなるか。死ぬに決まってる。消費税を3%から5%に上げるとはそういう事である。


消費税と言うのは貧乏人から多くとり金持ちから少なくとるという史上最悪の悪税である。しかもこの間に法人税・所得税・住民税を金持ちほど有利にしたのだから中間層は死滅するに決まってる。しかし我が国はこの1997年の失敗を繰り返すのである。本当に懲りてない民族なのである。


1997年1月から3月は駆け込み需要があり事実上の日本の最後の好景気である。以後日本国政府が言う「好景気」とは偽物で実態が伴ってないむなしい言葉だけの景気である。特にいざなみ景気に至っては日本人の所得が平均で100万以上も下落したのである。


さて1997年通年のGDPではなんと-0.1%で済んでいる。あれ?そんなもんだっけと私は驚く。なにせ拓銀は潰れ、山一は倒産し三洋証券も潰れ金融危機が発生したのである。そしてこの年にようやく世間に不良債権を「飛ばし」と言う形で隠蔽していた事がばれたのである。この年から就職超氷河期とパワーアップする。信用金庫や信用組合なども次々潰れた。金利はゼロ金利となった。金利と言うのは経済の体温なので日本はやはり1997年に死んだとみてよい。完全死亡は2011年であるが。しかしもう日本はこの時にもがいてももう助からない。隠蔽に隠蔽を繰り返すとどうなるかという歴史的教訓である。


1-3月期の駆け込み需要がそんなに大きかったのであろうか?実はGDPの定義が大きく変わりマイナス幅が減ってる事に気が付く。またか。こんなことしても日本が衰退してるという事実に変わりはないのに。


もっとも1997年の大ヒット商品はなんと「FF7」なんだそうでこれがゲーム機戦争に終止符が打たれPSの天下となるのである。たまごっちなんかよりも経済的に大きいのだそうだ。しかしゲーム市場は1997年をピークに下落していく。


1997年はもう一つ画期的な商品が出た。トヨタのプリウスである。「21世紀に間に合いました」というこの衝撃的なコピーはかろうじて自動車業界がこれからの日本を支えていきますという意味である。日本はマイルドハイブリッドで覇権を取ったのである。完全電気自動車に大きく後れを取ってる現在と大きな違いである。しかし、自動車産業だけでは死に行く日本を生き返らせることは不可能であった。


そんな自動車業界ですら、日産はなんと1999年に3兆円の赤字を叩き出し、既に1997年には倒産寸前であった。業界2位が死ぬ寸前だったのである。「もっと日産になる」とか「変わらなきゃも変わらなきゃ」といった悲鳴に近いコピーで有名なこの企業はゴーンによってかろうじて救われたと言ってよい。


しかし自動車業界とゲーム業界以外は総じて危機的でもう日本経済は総崩れである。


切れる14歳が話題になった。神戸の猟奇事件である。その後次々と少年がナイフで刺すという事件が多発した。もう少年は死にゆく日本で大人になりたくなかったのだ。大多数は今ではけろっとしてるのだけど。それは「大人になった」からではない。すべてにおいて達観しただけである。彼らは高校・大学と就職超氷河期のままですごし予定通り社会に殺されたものが多い。切れる14歳というのは当時の少年たちの悲鳴だったのだ。もう14歳で自分の社会的死が予測出来ていたのである。


1997年のオリコンヒットチャートはこんな感じである。


1位 安室奈美恵:「CAN YOU CELEBRATE?」

2位 KinKi Kids:「硝子の少年」

3位 Le Couple:「ひだまりの詩」

4位 globe:「FACE」

5位 SPEED:「STEADY」

6位 今井美樹:「PRIDE」

7位 TK PRESENTS こねっと:「YOU ARE THE ONE」

8位 Mr.Children:「Everything (It's you)」

9位 GLAY:「HOWEVER」

10位 SPEED:「White Love」

11位 猿岩石:「白い雲のように」

12位 ポケットビスケッツ:「Red Angel」

13位 安室奈美恵:「a walk in the park」

14位 華原朋美:「Hate tell a lie」

15位 河村隆一:「Glass」

16位 B'z:「Calling」

17位 GLAY:「口唇」

18位 PUFFY:「渚にまつわるエトセトラ」

19位 SMAP:「SHAKE」

20位 B'z:「Liar! Liar!」


それにしてもこんな危機的時代で結婚式の定番曲である「CAN YOU CELEBRATE?」などがヒットするとか意外な一面がある。「YOU ARE THE ONE」はチャリティー曲で全国の学校にPCを普及する目的で小室系が中心となって作った曲で下手すると「CAN YOU CELEBRATE?」よりも時代を代表する曲である。しかしPCと言う物だけを普及すればいいってもんじゃないのであつ。ソフトを作る人を増やさなければ。我が国は全然そんなことが分かってなかった。SMAPの「SHAKE」はNTTのマルチメディア戦略のCM曲である。ISDNとか宣伝していた。もう韓国はADSLが普及していたのに日本はダイアルアップ回線だのISDNだのをドヤ顔で宣伝していたのである。そりゃ2019年に韓国に経済的に抜かれるよ、この国は。


電波少年といった企画系番組が全盛期だったこともよくわかる。そして、当時の若者の悲鳴もよく聞こえる。

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