日本衰退国史 平成編 第四章 平成4年

バブルが崩壊し、日本のGDP成長率は1%を切った。1%を切った年は実に第一次オイルショック以来で非常に危機的なもんだが、誰も危機的だ、危機的だと騒がなくなった。こうこの1点だけでこの国の沈没の理由が分かるものである。もう当時の日本人は満たされすぎてしまい、目的を喪失してしまったのだ。


それどころかもつ鍋ブームと言って「たまには質素な食い物もいいよね~」などとうそぶいていたのだ。この質素な食い物が今後30年続き貧乏になるというのに。


福岡と札幌はまだバブルが続いていた。この札幌がバブルが続いていたのは北海道拓殖銀行のせいである。都市銀行最下位で地方銀行最上位の横浜銀行(当時)にいろんな意味で抜かれていた拓銀は一番遅れて東京で、北海道で過剰融資を行っていたのだ。そしてこれが北海道が無人化するほどの衰退の原因になるとは当時誰も予想出来なかった。


これがリゾートホテルだの土地ではなく拓銀の主要取引である「ハドソン」などの企業を育てていたら北海道の未来は全く変わっていたであろう。北海道版ビットバレーが実現していたはずである。かのハドソンは1992年に『天外魔境2』を発売し全PCエンジンユーザーの3分の2ものユーザーを獲得したという。もし、IT時代を見据えていたらと言うよりもNECホームエレクトロニクスと一緒にPCエンジンそのものを育てたハドソンを拓銀が守っていて育てていたら。今頃こんなみじめな北海道にはなってなかった。そもそも社名が1960年代の北海道の主力機関車であるC62ハドソンという蒸気機関車名から来ており北海道愛を感じる。日本の電子立国自叙伝という番組に置いて「鉄道会社を買うのが夢ですよ。北海道に私鉄持ちたいですね」とゲームメーカー社長の発言とはとても思えないことを言っている。


世間は「ゲームなんてオタクのおもちゃ」とか当時侮っていたとしか思えない、実に残念である。下手すると札幌に私鉄が誕生していたかも。


え?冗談だって?ハドソンの社長は自宅にミニチュアとはいえ蒸気機関車を走らせていたほどの鉄オタですよ。ハドソンと言えば「16連射」の高橋名人のほうばかり目が向いてませんか?あれ、本気ですよ。


NECホームエレクトロニクス消滅だけでも数万人もの職を失った。もし、今でもNECが家庭用ゲーム機事業を維持していたら今のみじめなNECは存在していない。だからもう平成4年と言う年は衰退途上の年だったのである。くどいほど言うが日本と言う国は「IT」の意味が分かってなかった国なのである。


それどころかNECは1989年頃に「ワープロは国民機で例えるなら乗用車、PCというのはプロ用で例えるならトラックですよ」と言っていたのである。当時PC世界最大の出荷メーカーがこんな認識だったのである。Windows95発売の数年前とはとても思えない発言である。この国が衰退するのは当たり前だったのである。我が国はワープロまでは作れたがソフトが要になるPCは碌に作れなくなった原因がもうこの時代で見えている。


この平成4年の時に必死に不良債権を隠さずに国民に危機を知らせれば今頃こんなことになってない。しかし我が国は経済改革よりも政治改革と言って政治ゲームに明け暮れるようになり、次に紹介する平成5年には自民党は下野し55年体制がいったん終わる。そう、政治が政治ゲーム、そして衆愚政治に落ちた瞬間が平成4年でもありやはりいろんな意味で「衰退途上国元年」だったのである。


さて、そんな遅れている日本のIT史では1992年に出来事が起きた。NTTドコモが誕生しいよいよ本格的な携帯電話の時代がやって来たのである。もっとっまだ当時はポケベルが主流なのだが。日本の携帯電話は1G、2G、3Gまでは世界の最先端を走ることになる。先ほど紹介したNECもガラケーで2007年頃まで命拾いすることになる。しかし2021年に生きるものならよくわかるであろう。そうスマホに駆逐されて日本の電機業界はトドメの一撃を食らうのである。


さて、次は音楽を見てみよう


オリコンヒットチャート1992


1位 米米CLUB:「君がいるだけで/愛してる」

2位 浜田省吾:「悲しみは雪のように」

3位 B'z:「BLOWIN'」

4位 大事MANブラザーズバンド:「それが大事」

5位 サザンオールスターズ:「涙のキッス」

6位 とんねるず:「ガラガラヘビがやってくる」7

位 槇原敬之:「もう恋なんてしない」

8位 CHAGE&ASKA:「if」

9位 今井美樹:「PIECE OF MY WISH」

10位 中島みゆき:「浅い眠り」


この時代の名曲と言うよりも90年代を代表する曲がいくつかあり、かつCMタイアップ曲が多いことが分かる。CMというのは社会の鏡で今のCMのように健康食品、医療保険、葬式、通販だらけの時代とは全く異なり社会が元気であることが分かります。


2022(令和4)年に「大事MANブラザーズバンド 『それが大事』」なんて曲がヒットするだろうか。絶対に無理でしょうね。人生応援歌なんて流そうものなら逆に人の心を逆なでしてるのかとか言われそうです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る