日本衰退国史 平成編 第三章 平成元年~平成3年

それではいよいよ平成と言う時代を語っていきたい。第三章は平成元年から平成3年までだが第四章からは「平成4年」と単年ごとの紹介となる。それはなぜなのかはもう説明済みである。平成3年までは年号こそ「平成」となっていても中身は事実上の昭和だからである。


もうひとつ世界史においても1991年で切ることになる。後期近代とは1945~1991年の事であり1991年以降は現代である。我が国の史学は固くなに1945年からを現代としているが冷戦というのは明らかに過去形、つまり歴史なのである。つまり第三章の時代というのは「後期近代」と言って現代とは違う時代の歴史である。


我が国はGDP世界1位であるアメリカ合衆国に迫る勢いで経済大国のトップになろうとしてたし年号が昭和から平成になった瞬間、日本が世界の主役になることをだれも疑ってなかったのである。日本製の電気製品に電子部品は世界を席巻し、日本製自動車は世界中を席巻したのであった。


敗戦からわずか40年程度で世界の頂点に上り詰めた日本は踊りまくり、お祭りであった。天皇崩御という悲しい1シーンを除けばもうこの時代は毎日がお祭りだったのである。


しかし1990年1月4日から突如株価が崩落し1991年からは土地バブルも崩壊しバブル崩壊が確定した。くしくもこの年はソビエト連邦が解体され冷戦は終結した。西側諸国の勝利であるのだが勝利国の側のはずの日本の顔はさえてなかった。バブルが崩壊し瀕死になっていたのである。


しかし平成3年はまだバブルの残りかすが残っておりジュリアナ東京でお立ち台で踊っておりザ・バブルドラマの象徴である「東京ラブストーリー」が大人気であった。「就職戦線異状なし」と言う映画を見ればわかるが無名私立卒の主人公でも大企業に入れたのである。


日本は瀕死の状態だったという自覚も無くまだお祭りを続けていたのが1991年と言う年であり一時代が終わったという事すら自覚も無かったと言ってよい。


平成3年は「電子立国日本の自叙伝」なる番組も流れた(NHKスペシャル)。実は日本の電機産業は1991年が出荷のピークで以後半導体は中国・韓国に、OSはアメリカに駆逐されていく。心臓部を他国に取られるとどうなるかと言うことがこの国は理解していなかったのである。


日本史の黄金時代は終わり衰退途上国という枠に突入する。


勘違いしてはいけない。経済大国と言うのはどの国もバブルを経験するのである。このバブルをどう乗り切るかによって真の意味で国力特に文化力が問われるのである。我が国は残念なことに社会力や文化力が無かったのである。


もっとも今の時代と比べたらこの時代の文化力はそれでも相当あった。「文学部唯野教授」だの、「人麻呂の暗号」だの、「キッチン」だの、「ノルウエ―の森」と言った文芸書が飛ぶように売れた時代なのである。2020年のベストセラーを見ると教養力も文化も破壊されて久しい。いい大人が小説版鬼滅に狂うほどこの国は知性が劣化したのである。文化力を上げるのではなく劣化したという部分に衰退の片鱗が見える。


1990年に日本のGDPは世界の19%も占めていた。この時日本は相対的に最も豊かになっていた。1人当たりGDPはスイス並みの富裕国になっていた。この時に生きて来たものはまさか2020年に日本のGDPが5.7%にまで減少するなど誰も思いつかない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る