戦いの後……。なのじゃ!

第169話 1/1

 倒れ込んだ災厄……もう1人の俺の体にみーちゃんとカノガミが手をかざす。


 ボロボロだった体が少しずつ巻き戻っていく。彼の顔が少しずつ血が通ったような色へ戻っていく。


 俺は……全身から力が抜けて、地面の上に座り込んだ。


「やったのか?」


 振り返ると、ロベリアが眠ったままの彼を見つめていた。


「これでもう、大丈夫だと思う」


「ただの軟弱な男だな。こうして見ると」


「頼むからアイツを殺さないでくれよ。彼には、消えた彼ノがみを助けて貰わないといけないから」


 ロベリアは鼻で笑うと、顔を背ける。その視線の先にはログサ達ロベリアの仲間がいた。


「……そんな気は無くなった。あのような軟弱な者を殺した所で、何の意味も無い。の士気が下がるだけだ」


 彼女が外輪達へと背を向ける。


「災厄が目を覚ましたら伝えておけ。お前の罪……いずれその償いをしろと」


 ロベリアがツインディスクを投げて来た。


「これは?」


二足歩行機械」


「え、なんで?」


「お前への詫びだ。そこの男に渡しておけ」


「ロベリア……」


 ロベリアが自分の機体へと向かって歩いていく。


「お前はこれからどうするんだよ?」


「我らの戦場を思い出した。我が祖国。そこでの国を起こす。私の兵士達に夢を見せてやる為にな」


 それだけ言うと、ロベリアは二足歩行機械へと乗り込んで行った。


『帰還するぞ』


 ロベリアの声に鋼鉄の兵士達が隊列を整えていく。


『オラオラ撤収すんぞぉ! 夏樹ぃ〜またな〜!!』


 ログサの機体が元気よく手を振った。


『な、なんかこうして見るととても侵攻に来たヤツとは思えないね』


『まぁいいんじゃないですか先輩。終わり良ければということで〜』


 シュウメイから夏樹と蝶野先輩の会話が聞こえる。


 イアク・ザードが翼を広げると、二足歩行機械達へと魔法陣がゆっくり降りて行く。一瞬だけ、ロベリアの機体が俺の方を見た気がした。



 ロベリア。



 俺と彼のこと、許してくれた訳じゃないだろうけど、でも……。



 ありがとな。



 ロベリア達は、イアク・ザードの転移魔法によって自分達の世界へと帰っていった。



◇◇◇


 バルディアから顔を出したクシアは、名残惜しそうに切り出した。


「みなさんのおかげで災厄の脅威は無くなりました。感謝致しますわ」

「シマスワ! シマスワ!」


「エアリーとは中々良いコンビだったから寂しいデスね」

「デスネ! デスネ!」


「はは……ちょっと師匠と似てますもんね。エアリー」


「それはどう言う意味デスか!?」

「デスカ!? デスカ!?」


「イダダダっ!? 顔はやめてぇ!?」


「これでみなさんとは今生の別れ……今思うと寂しいような……ん?」


 急にクシアがクリスタルを押さえる。交信……だったっけ? なんか連絡でも来たのかな。


「クシアのヤツ、どうしたのじゃ?」

「なんかあったのかな?」


 交信を終えたクシアは神妙な面持ちで話し始めた。


「実は……」


「「「「「「実は?」」」」」」


「災厄被害の復旧とLあ77世界のみなさんと交流を深める為にここに残るように言われましたわ!」


「えぇ!?」


「ま、マジかの……」


「白水中学に転校するようにも言われましたわ!」


「「「えぇ!?」」」


「いや、はは……展開が急すぎるね」


「家とかどうすんの?」


 夏樹の質問にクシアは顔を曇らせた。


「見知らぬ土地での1人暮らし……不安ですわ」

「デスワ! デスワ!」


「お困りならお、俺ん家とかどう……?」

「お兄様!? 何を言っているんだ!?」


「いいのですか!? 感謝致しますわ♡」


「え、マジ!? いやったぁ〜!! 女の子と1つ屋根の下なんて夢みたいだ……」


「お、おい。ウラ秋菜の表情が……」

「鬼を超越しておるのじゃ」


「そんな顔、は、初めて見るでござる……」


「うわああああぁぁぁ!? なんで俺がキレられるんだよぉぉ!?」


 夏樹が涙を流しながら逃げて行く。それをすごい形相のウラ秋菜が追いかけた。



「「「ははは。人間とは面白い。さて、我らは時間玉へ……」」」


「イアク・ザード」


 みーちゃんがモジモジしながらイアク・ザードへと話しかける。



「「「むむむ……礼か? 礼を言われるのか? 我らの生きた道には無かったもの。なんだかむず痒いな」」」



 3つの首がソワソワした様子でその頭を上げ下げする。その顔はどことなくニヤついているように見える。



「お兄ちゃんに寿命を分けてあげて欲しいの」



「「「……え?」」」



 みーちゃんがモジモジしながら続ける。


「ほら、お兄ちゃん災厄にタイムリープされた上に、未来方向のタイムリープで打ち消したでしょ? 28年も寿命縮まったらかわいそうだし……」


 あ! 俺寿命がそんな縮まってたのかよ!? 最悪だ……。



「「「え、え……マジなのか?」」」



「マジよ。お願い……」


 みーちゃんが上目遣いでイアク・ザードへとお願いする。



「「「むむむ……彼ノがみ様のご息女の願い……しかし……」」」



「ちなみに寿命を吸うにはタイムリープが必要じゃろ? 母上彼ノがみと憑依態にならんといかんのじゃ。実質母上に寿命を吸われるのと同義じゃぞ?」



「「「喜んでぇぇぇぇっ!!」」」



 イアク・ザードは涙を流しながら了承してくれた。いや、いいのかよ……。


「「「時間玉に入ってからリープさせてくれ。そうすれば我らは飛ばされても時間玉にいられる」」


「なんで嬉しそうなんだよ」


「そういうものじゃ」

「そういうものよ」



 そういうもの……なのか?



 ちなみに。



 今まで俺がタイムリープに使った寿命もオマケしてくれた。



 俺の寿命はカノガミと出会う前まで回復した。



 ……。



 3つ首竜に感謝。

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