最終決戦! 時空規模の災厄!! なのじゃ!

第166話 1/3

 白水中学校舎の壁面が音を立てて崩れ去る。学校としての形は保っているが、外輪達情報部の部室は壁が外の空間とそのまま一体化したような不思議な見た目となっていた。


「あぁ……小宮に怒られるぞこれは」


「拙者のせいでは……っ!?」


「そんな呑気なこと言ってる場合デスか!!」


 レイラが叫んだと同時に目の前に災厄が現れる。


「またっ!?」



「大丈夫!」



 外輪が手を翳し災厄をタイムリープさせる。それは1秒にも満たないが、意識を飛ばされた災厄が、現状を認識するまでに隙が生まれる。その隙に、拳で災厄を地面に叩きつけた。


「エアリー! 無効化装置頼む!」


「リョウカイ! リョウカイ!」


 エアリーから発射された無効化装置が災厄の左脚に装着される。


 彼ノがみとの憑依態は、外輪が心配していたよりもずっと安定していた。それは、外輪、カノガミ、みーちゃんが真実を知ったことで、彼らの結びつきがずっと強くなったから。


 それが、彼の中のの彼ノがみを安定させ、その憑依態である彼に定着させていた


「影が準殿に反応したでござるっ!」


 災厄に纏わり付いた影が憑依態の外輪を感知し、取り込もうと襲いかかる。


 その時、ヒガンのスピーカーからウラ秋菜の声が聞こえた。


『みんな! ツインディスクは設置完了だ!』


「ごめん! 2人とも後は頼む!」


 外輪が目線の先のシュウメイへと走り出す。


 それを追いかけるように災厄から膨大な量の影が吹き出した。


「猫田は私の援護を! 災厄本体とあの怨霊達を引き離しマス!」


「承知した!」


 口にヒトキリ丸を咥えた猫田が全速力で駆け回る。災厄が手のひらを猫田へと向ける。


 だが、タイムリープを狙うその手は黒猫の全速力を捕捉することができず翻弄される。その隙をついて猫田が体を回転させて真空波を撃っていく。


「私もいきマス!」


 レイラが重力魔法剣を手元に引き寄せ、剣先を地面へ叩き付ける。


 黒猫に気を取られた災厄に向けて割れた大地が吹き飛んでいく。災厄は咄嗟にそれを避けようと時止めの力を使った。


 「ハッシャ! ハッシャ!」


 エアリーから再度無効化装置が発射される。意識が分散された災厄はそれを感知することが出来ず、右脚に装置が付けられさらに弱体化していく。


「災厄の力が弱まった! 今ならヤツはタイムリープできないハズだ!!」


 外輪の叫ぶ声が聞こえて来る。


「これでやっと本腰入れて戦えるでござる」


「私はずっと本腰入れてマス」


「イレテマス! イレテマス!」


 1人と1匹と1体は災厄へと向かって身構えた。



◇◇◇


 シュウメイのモニターに外輪が映る。それを見て夏樹はシュウメイを急発進させた。


「先輩! タメはもういい!?」


「待ってよ! 水の時と違って生命エネルギーは大量に貯めておけないよ!」


「え? レーザーみたいに発射できないってこと?」


「連続発射はちょっと……」


「この期に及んで何言ってんですか! じゃあ振り回せるように形状安定させて下さいよ!」


 剣……? 形状安定……?


 蝶野の中に、あるイメージが浮かび上がる。水の円柱を作った時の映像が。


「そうだよ! そうだ! 形状を安定させることだったらできるんだ!!」


「ちょっ!? 声大きいんですけど!?」


「夏樹君。 シュウメイの両手を合わせてくれ!」


「え? わ、分かりました」


 夏樹がスティックを操作してシュウメイの手を合わせる。


 蝶野が目を閉じると、シュウメイの両手が光り輝く。そして、そこから光の筋が伸びていく。それはシュウメイの全長を超えるほど長く伸びると、安定した。


「できた……」


「すげえええぇぇぇ!! 剣じゃん!」


 シュウメイが腕を振るうと光の剣が追従する。


「これならいけるよ!」


「僕は、剣の維持に集中するから後は頼むよ、夏樹君」


「任せといて下さいよ〜」


 夏樹がペダルを操作し、シュウメイが駆け出した。



◇◇◇


 影に追いかけられた外輪がシュウメイの元へと走る。加速すればもっと早く走れるが、影を引き付ける為に速度を落としていた。


「夏樹! 頼む」


『任せとけって〜』


 外輪がシュウメイの横を通りすぎ、設置されたツインディスクへと走る。


『おっしゃ! 上手くいったぜ!』


 スピーカーから夏樹の声が聞こえる。振り返ると、切断された黒い影が設置されたツインディスク達に吸い込まれていくのが分かった。


『クシア! 怨霊が吸い込まれたれたのは25、26、27番のディスクだ!』


『ウラ秋菜サン! ツインディスクを閉じますわ!』

 

 ウラ秋菜のヒガンのスピーカー音に合わせ、クシアの乗るバルディアが、設置されたツインディスクを遠隔操作で閉じていく。


 ツインディスクさえ閉じてしまえば怨霊達は出て来れない。ウラ秋菜の作戦が上手くいっている。後は……。


「あの怨霊達を全部もう1人の俺から引き剥がしてやる!」


 外輪はそう気合を入れ直すと、次のツインディスクを目指した。

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