第164話 2/2
ウラ秋菜が部室のホワイトボードへと書き込んでいく。
「まず、私達はラセンリープしなければならない」
「ええ。ロベリアの仲間達は存在自体を消滅させられているから、通常のタイムリープをした所で助けられないわ。災厄が現れた所へ戻っても既に誰もいない状態なの」
「ラセン時間を潜ることで分岐地点まで戻るということじゃ!」
「待てよ秋菜。その場合は俺達の世界みたいに世界の融合が起きるのか?」
「それはだな……」
答えようとしたウラ秋菜をみーちゃんが手で制した。
「私が答えるわ。この場合、消滅させられたのはクシア達の世界の人達だから、修正される時間軸が異なるの。今回融合するのはクシア達の世界よ」
「我らは歴史修正があっても額のクリスタルで感知できる。問題無かろう」
「私からも本国へ説明致しますわ。災厄が消えたとなれば修正も受け入れられるでしょう」
ウラ秋菜がみんなの顔を見渡す。
「私達と外輪準はそれぞれの世界へとラセンリープする。私達は外輪準達がこの世界へ帰って来るまでの間、ヤツのタイムリープから逃れる必要がある」
「ロベリアの仲間を守りながら耐えるのはなかなかキツイね……」
「大丈夫デス。私が弟子達みんなを守りマス」
「師匠? で、でも……」
「レイラは時間魔法の加護があるから通常のタイムリープは効かない。それに、私にもう1つ考えがある」
「ウラ秋菜の考えとはなんじゃ?」
「エアリーの持つ時間干渉無効化装置だ」
「ムコウカ! ムコウカ!」
「確かに……アレは対災厄用装置ですわ。でも、逃走時間を確保する為の物。災厄相手に対して完全無効化できる訳では……」
「今がその時だろう? 時間を稼げればいい。ちなみに、複数装置を取り付けた場合はどうなる?」
「装置同士の相乗効果は得られると思いますの」
「なら、レイラに戦って貰う間、エアリーは災厄に向かって無効化装置を発射してくれ」
「分かりマシタ」
「リョウカイ! リョウカイ!」
「その間、ヒガンに兵士達のツインディスクを集める」
ウラ秋菜がホワイトボードにヒガンと書き込む。そこにツインディスクを集めるイラストを描く。
「集めてどうするのでござるか?」
「集めたツインディスクに私の霊力を込める。災厄に対して微々たるものだが、あの悪霊を封印する際の呼び水になる」
「後は、ロベリアが転移して来るまで兵士達に指示を出す人間がいるなぁ〜」
夏樹はワザとらしく外に聞こえるように言った。
「はぁ……しゃあねぇなぁ……」
気怠そうな声に全員が扉へと目を向けた。そこには、メカスーツを着た男子が立っていた。
「ログサ……貴様どこで何をしていた?」
「まぁまぁそう怒んなって司令。ちゃんとした軍隊じゃねぇんだから俺らは」
「ログサ〜やってくれるよな? お仲間の為だし」
「ち。分かったよ……ちったぁ隊長らしいことしねぇとな。シバのオッサンの為にもよ」
「これで必要な人員は揃ったな。外輪準達はラセンリープ、レイラとエアリーは災厄から他の者を守る。私達とログサは兵士達からツインディスクを集め、準備が整い次第設置する」
「設置って、どう設置すりゃあいいんだよ?」
ログサは地面にどっかりと座った。
「極力怨霊をバラけさせたい。災厄を中心に円を描くように設置しよう」
ウラ秋菜がホワイトボードに書き込み終えると、下準備と追記した。
「これで下準備は完了だ。外輪準達が合流した後、本丸の怨霊を叩く」
「怨霊を封印するってことだよね。どうやるのさ?」
「蝶野先輩には最も需要な役割があるだろう?」
「え? 僕?」
「先輩は唯一『カミのなり損ない』にダメージを与えただろう? 先輩のもう一つの力。生命エネルギーを使った超能力で」
「あ、うん」
「あの影は憑依態の外輪準に執着している節がある。外輪準が各ツインディスクまで影を誘導して……先輩が切り離すんだ」
「えぇ!? 僕が!?」
「任せなって先輩〜先輩はしっかり俺のシュウメイで守るからさ!」
笑顔の夏樹が蝶野の肩を叩く。
「ロベリアとクシアは二足歩行機械で先輩達の援護。猫田は合流次第レイラ達を援護して欲しい。特にロベリアには……兵士達を統率してもらうという役割があるからな」
「……私達を信用していいのか? 貴様らの作戦を放棄する可能性もあるぞ」
「司令〜素直になっちゃえよ。俺達のことが心配だってよぉ。司令はそんなことしねぇよなぁ?」
「黙れ」
「ツンデレじゃの〜」
「ツン……デレ……?」
ロベリアが困惑の表情で外輪を見る。外輪は申し訳無さそうな顔をして彼女をさらに困惑させた。
「「「ウラ秋菜よ。我らは……」」」
「イアク・ザードは外輪準達の転移要員だろ?」
「「「た、戦わなくて良いのか?」」」
「お前の攻撃は広範囲すぎる。それに、寿命を災厄に吸われたら大変なことになるからな。距離を取っておけ」
3つ首竜はしょぼくれた。
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