災厄を救え。なのじゃ!

第163話 1/2

「イアク・ザード。災厄の封印はいつまで持つ?」


「「「あと40時間を切った」」」


 ウラ秋菜は窓から乗り出していた身体を、情報部の部室へと戻した。


「聞いた通りだ。災厄が放たれるまで後2日弱。それまでに何としてもアイツを倒す……いや、救う方法を見つけ出す」


 ウラ秋菜が外輪へと目を向ける。外輪が頷くのを確認すると、ウラ秋菜は部室内に目をやった。


 部室には外輪、カノガミ、みーちゃん、夏樹、猫田、レイラ、蝶野、クシア、エアリーが座る。そして、ロベリアが壁にもたれ掛かるように立っていた。


「外のイアク・ザードを忘れたら可哀想デス!」


「「「あぁ……貴様に同情されると身体が痒くなる」」」


「なんデスと!?」


「し、師匠……喧嘩しないで下さい」


「後はジノじゃな」


 ……そうだね。ありがとうカノガミさん。


「事情は全てジノちゃんが見せてくれた通りだ」


 外輪は、立ち上がると全員へ頭を下げた。


「みんなを危険に晒してしまうことになるけど、どうか災厄と、この世界を作ってくれた彼女を救うのを手伝って欲しい」


 カノガミとみーちゃんもそんな外輪へと寄り添う。


「ウチらからも頼む。と災厄はウチとみーちゃんが生まれたきっかけ。今ウチらがジュンと笑っておられるのは彼女のおかげなのじゃ。ウチらはあの2人の犠牲の上に立っておる」


「あのなぁ」


 夏樹がため息を吐いた。


「俺らは。水臭いこと言うんじゃねぇって〜」


「そうでござる。恐らく拙者を救ってくれたのは、かの御仁。恩に報いる為に命を賭けるのは武士として至極当然のことでござる」


 ウラ秋菜が外輪の肩を叩く。


「私は、ある意味彼女とお前達のおかげで存在している。それに、を見捨てるなんて、私らしくないだろ?」


「その人がいなかったら私は弟子やみんなと会えなかったデス。できることは全てやりマスよ」

 レイラが蝶野の手を握る。彼はその意思を受け取るように外輪へと言葉を送った。


「決まりだね」


「みんな……ありがとう」



「どうせ戦わなければこの世界は消滅する。意思を確認している場合ではなかろう」


「ロベリア! 水を指すのはやめるのですわ!」

「サスナ! サスナ!」



「いや、ロベリアの言う通りだ。まずは私の話を聞いて欲しい」


「なんじゃウラ秋菜?」


「ジノに消えた彼ノがみの記憶を見せてもらって分かった。私達は大切なことを見逃していた」


「それはなんデスか姫?」


「災厄の纏った影……アレがの精神を災厄から抜き出した。そして、こちらの外輪準を取り込もうとするあの動き。あのが本体の可能性が高い」


「……それは俺も思う。あの影に体内に入り込まれた時、災厄とは別のを感じたから」


「危うくウチも抜き出される所だったのじゃ!」


「危うくと言う割には明るいわね……」


「それじゃあ、アレはバカみたいに強大な力を持った怨霊の塊ということデスか?」


「ああ。だから災厄からあの影を引き剥がすことができれば、取り込まれている未来の外輪準は正気を取り戻すかもしれない。彼ノがみと同じ力を持つ災厄。だけど、それに纏わりついている怨霊だけなら、まだなんとかできる」


「ですが、そんな方法はあるんですの?」

「デスノ! デスノ!」


「問題はそこだ。アレを怨霊だと考えると、とんでもない数の思念が集まっていることになる。それを除霊か封印する方法なんて……」


「私達の世界に現れた災厄は、常に戦場のただ中にいたと記録されております。現れる度に、戦争の犠牲者達の魂も吸い上げていたのかもしれませんわ」



「……」


 ロベリアは無言で窓の外へと目を向けた。



「ふっふっふ。秋菜。兄ちゃんには考えがあるぜ」


「な、夏樹殿が不敵に笑ってるでござる……」


「お兄様。何か策があるのか?」


「お前が唯一やらかした失敗を思い出せ」


「ウラ秋菜がやらかした失敗じゃと?」

「そんなことあったかしら?」


 カノガミもみーちゃんも不思議そうな顔をする。


「失敗……あ!」


「外輪は思い出したみたいだな!」


 夏樹はわざとらしくタメを作った。


「わざとらしくは余計だぜジノちゃん! ……アレだ。のゲーム」


「「「「「呪いのゲーム!?」」」」」


「そんな物があったのかい?」

「初耳デス」


「あ、あったな……その、私が閉じ込められて……」


「そうじゃなくてさ、アレって最新部にヤバめな怨霊が閉じ込められてたじゃん。秋菜はあのゲームを改造してただろ? アレを応用して怨霊を封印できないか?」


「た、確かに……があればあの時得た知識から怨霊は封印できる。だが……あんな膨大な量の怨霊を封印できる記憶媒体が無い。CDなんて容量不足ですぐ破壊されてしまう」


「容量の問題なのでござるか……」


 全員が唸り、同じ考えが頭を巡る。実際にありえるのだろうか? そんな大容量の記録媒体なんて……と。


 しばらく唸った後、突然クシアが声を上げた。


「そうですわ! バルディアを搭載していた! アレも記録媒体の一種ですわ! 物質をデータ化して保存するのです!」

「ツインディスク! ツインディスク!」


 エアリーが飛び回る。


「待て。ツインディスク1つだけで足りるのか?」


「う……それは……さすがに記憶容量が大きいとはいえ、あの怨霊を全て封印できるかは分かりませんわ……」



「いや、ツインディスクは1枚だけでは無い」



 全員が声の方向へと視線を向ける。声を上げたのは、今まで他の者の話を聞いていたロベリアだった。


「我らの侵攻用の機体、それらに対応する兵士全てがツインディスクを所持している。己の機体用のな」


「じゃ、じゃあツインディスクは……っ!?」


「先行部隊も含めて40ある」



「「「「「40枚も!?」」」」



「いける……いけるぞ。そのツインディスクに怨霊を分割して封印できれば……」


 ウラ秋菜がその視線を外輪へと向けた。


「あの災厄を救うことができるぞ」


「お前達の目的はそれで達成できる……と」



 ロベリアは鼻で笑うと、言葉を続けた。



「それで? 私の部下達を救う方法とやらも聞かせて貰おうか」

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