運命。なのじゃ。
第148話 1/1
「「「ふははははは!!! 我らこそ最強!! 至高の存在!!
3つ首竜が咆哮を上げる度に二足歩行機械の戦士達が恐れ慄く。ある者は逃走しようとし、ある者は果敢に挑むも脆くも崩れ去る。
嵐のように巻き起こる突風は砲撃台を消し飛ばし、その強固な鱗は如何なる通常兵器を持ってしても打ち破ることができない。
地平線の彼方から、本拠地へと呼び戻された大量の無人機達が押し寄せる。しかし、3つ首竜の口から
美しく列を成した二足歩行機械達が多連装ロケット砲を構え、イアク・ザードへと向けて大量のロケット弾が発射される。
「「「小癪な武具を使う雑魚共だな」」」
しかし、イアク・ザードが翼を開くと無数の雷が空から降り注ぐ。ロケット弾は空中で爆発四散し、鋼鉄の兵士達の心を完膚なきまでに叩きのめした。
「拙者達と戦った時よりもさらに強大となっているでござるな。力も、体躯も」
「Lあ77世界に……こ、こんな生物がいたなんて……」
「多元世界より襲来せし伝説3つ首竜。イアク・ザードにござる。拙者達との激闘の末、我らがカミの力によって捕えられた」
クシアはこの黒猫達を自分の世界へと誘ったことを激しく後悔した。3つ首竜? カミの力? 無人機などに怯まないハズだ。こんな化け物達が住まう世界だったなんて。自分のミスも勿論だが、そんな魔境へと侵攻しようとしたムスカリの人間も。なんて……なんて迂闊な……。
「いずれにせよ……私のせいですわね」
「どうしたでござるか? クシア殿?」
「この竜を使う時、覚悟はしておりましたが、これほどまでとは……この国の人を沢山手にかけてしまいました。元はと言えば私が原因。それに、Lあ77世界の皆さんにも迷惑をかけて……」
「「「小娘よ。我らは殺してなどおらん」」」
黄金の竜がクシア達の元へと着地する。その巨体が繰り出す揺れにクシアは立っているのもやっとだった。
「ど、どういうことですの?」
「「「今の我らの命は愛しき彼ノがみ様に賜った物。彼ノがみ様はおっしゃった。無益な殺生はやめよとな」」」
「あの威力で……?」
「「「信じぬならそれも良い。苦しむか苦しまぬかは貴様が選べ」」」
私が選ぶ? 過ちを起こした張本人である私が何を決められるというの? きっと誰にも許して貰えない。私は……罪人だ。
「私は……私は……」
「「「貴様の中に後悔と罪悪感が渦巻いているのが見える」」」
「そ、それは……」
「「「1つ。我らの考えを述べてやろう」」」
竜がクシアの瞳を覗き込む。その瞳の奥には達観があった。これほど絶大な力を持ちながら、自分の死を知っているような……そんな瞳。
「「「彼ノがみ様のご息女がこの世界へと飛ばされたのも運命。この国の者どもが、かの世界へと攻め入ったのも運命。貴様が我らと出会ったこともまた、運命。全てに意味がある。ならば、貴様の持つその罪悪感も……必要なことなのかもしれん」」」
運命……。
自分には何か役割があるのだろうか?
10代であるが故に戦争も災厄も知らず、ただ安穏と過ごした自分。空っぽの自分。人に認められたい一心で調査組織に入り、災厄の影を追い続ける毎日。その行動理由は先人達への負い目だった。私は彼らのような悲劇を体験していないのだから。記録の中でしかその出来事を知らないのだから。
そして、そんな自身の迂闊さにより起こしてしまった、取り返しのつかない過ちを。
それにも全て意味があるのだろうか?
「「「先にご息女を迎えに行け。我らは後で向かおう。まだ、ここの雑魚共と遊び足りぬからな」」」
クシア達の頭上に魔法陣が浮かび上がる。
「「「小娘」」」
「は、はい」
「「「全ては運命の赴くままに」」」
3つの首が、6つの瞳がクシアを見つめる。彼は……いや、彼らはなぜそんな言葉を私に与えてくれたのか。ただの竜の気まぐれなのか、彼らの意思によるものなのか。
魔法陣がゆっくりと降りて来る。クシアは、視界が遮られる直前まで竜の瞳を見つめた。
3つ首竜がかつてどんな存在だったのかは知らない。
だけど……。
鋼鉄の兵士達を物ともしない雄々しき姿。そして、空っぽだった自分に啓示の如く言葉を授けたその振る舞いは、クシアにとって間違いなく「カミにも等しき」存在だった。
◇◇◇
魔法陣を抜けた先にはバルディア弍型と外輪準、そして、彼のすぐそばに髪の長い女性が立っていた。
「ありがとな。クシアのおかげでまたカノガミに会えたよ」
ふと外輪の手元を見ると、彼は女性と手を繋いでいた。そうか。友達とは言っていたが、そういう関係だったのか。必死になる訳だ。
「そ、そのクシア……と言ったの。あの、お、オヌシの、その、ロボットを勝手に動かしてしまって……ごめんなさい」
カノガミと呼ばれた女性はモジモジとしながら謝罪の言葉を述べる。
「いえ、全ては私の迂闊さが招いた結果ですの」
「じゃ、じゃが……ジュンから聞いたのじゃ。色んな人に迷惑を……」
クシアはカノガミに近づくとそっと手を取った。
「そう思われるなら、挽回しましょう。これから。私と一緒に」
クシアは優しく微笑みかけた。それはカノガミを安心させるのと同時に、自分の決意の現れでもあった。
「……ありがとう。オヌシは優しいの」
「私も先程教えて貰いましたわ。全ては運命だと。でしたらそれを受け入れて、そこから自分にできることを積み上げていくしかないですわ」
クシアの瞳には意思の火が灯っていた。それは今までの彼女の人生の中には無かったもの。竜との出会いが彼女にもたらしたものであった。
……。
さてと。
謝罪大会はもういい? みんながやらなきゃいけないことはまだあるでしょ?
「え、この声……どこから聞こえますの?」
「おぉ、これが噂のジノ殿でござるか」
「はは……まぁ説明がややこしいな。とりあえず今は天の声とでも思っておけばいいよ」
天の声って……まぁいいか。ロベリアという女を探して。乗る予定の機体の特徴を伝えるから。
「ロベリア……ですの?」
うん。今回の侵攻作戦の首謀者。彼女を何とかしないと、いずれまた白水に侵攻してくると思う。それと……それが終わったらすぐ白水に帰った方がいい。
「まーた先の話見てきたのかよ?」
150話以降を見てきた。今回の外輪達の話は、私が知らない展開に進んでる。
「知らない展開? よく分からないでござる」
キッカケが何か分からない。けど、本来私達の世界では起こらないハズのことが起きてる。
「そんなこと言われたら気になるのじゃ。教えておくれ」
………が×××××××で、それが……。
「は? なんて言ったのじゃ?」
……ダメ。言葉が制限される。この148話では情報の開示が規制されてるみたい。よほどバラしたくないのか、神気取りのクソヤロウが。
「誰に向かって言ってんだよ……まぁ、とにかくヤバいことになってるってことだけは分かったよ」
気を付けてね。次の話以降、私は少しの間、外輪達の前から消えるから。
「なぜですの?」
探さなきゃいけないことができたから。すごく大事なことを。だから、私は151話を経由して戻って探して来る。
「戻る……?」
とにかく今はロベリアを。
「わ、分かったぜ」
外輪は頷くと、カノガミに声をかけた。
「カノガミ。アレを頼みたいんだけど、いいか?」
「憑依体じゃろ? 良いぞ」
カノガミが手を合わせると、光の玉の姿になる。それが外輪の額へと入っていくと、髪が伸び、特徴的な瞳になっていく。
「な、何ですの!? その姿は!?」
「説明は弍型の中でするよ! 早くロベリアを探そう!」
外輪達がバルディア弍型へと搭乗していく。
……。
みんな。がんばってね。
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