第145話 2/2
『なぜだ……!? なぜ二足歩行機械が浮いているんだっ!?』
『言っただろう? 独自技術の結晶だ。このヒガンには私達の開発した「レイラエンジン」を搭載している』
レ、レイラエンジン? 師匠、エンジンにされてるよ……。
(レイラエンジンなのデース! ブオオォォォン♡)
(静かにしなさいよレイラ)
「先輩。レイラさんってこんなバカでしたっけ?」
夏樹君がポツリと呟いた。
「……師匠をバカだって? 夏樹君でも許されないよ」
「ひぃっ!?」
「師匠はすごい人なんだ、辛い境遇の中でも生き延びて竜を退治し続けたんだ、人々の賞賛も得ずにたった1人で戦い続けて、この世界に来て心細かっただろうにそれを一切見せない心の強さを持っているんだ、本当に尊敬するよ、最近はちょっと確かに言動が暴走気味だけど、きっと今までの重責から解放されたことで……」
「ストップ! 分かりましたから!」
夏樹君に止められてしまった。ちぇっ。
◇◇◇
空中に浮かぶヒガンのモノアイが眩く輝いた。
『お兄様。校舎裏の機体が何かを警備している……破壊した方が良さそうだ』
ヒガンが校舎裏へと飛んで行く。
『了解〜。先輩。今から全力で秋菜を援護するから俺の声にだけ集中して下さい』
「だ、大丈夫なんだよね? さっきみたいに無茶しないよね!?」
夏樹君がなぜか立ち上がる。
「な、何で立ち上がるの?」
「え? ペダル2つもあるのに片足で操作してたら反応遅れるじゃないですか?」
怖い……夏樹君ってこんなキャラだったっけ? ゲーム得意って言ってたけど、若干ハイになってない?
「大丈夫大丈夫。秋菜達も援護してくれるからさぁ!!」
「僕達が援護するんだろぉぉぉ!?」
猛スピードでシュウメイが走り出す。敵が銃撃するたびにステップを入れてジグザグに駆け抜ける。
「あああああ!? 夏樹君んんんGが! Gが凄いっスよぉォォォ!?」
「射撃攻撃にはステップ回避が基本だから!」
敵機は銃弾を避けながら向かって来る僕達に戸惑っているようだった。
「おっし! 先輩お願いしますっ!」
敵機とのすれ違い様にシュウメイの指先からレーザーを発射する。シュウメイの指先が水の弧を描く。
シュウメイが通り過ぎた後には下半身を失った機体が横たわっていた。
『お兄様。生きている敵機は9機いるようだ』
「じゃ、あと8機だな」
『も、もう1機落としたのか……』
「まだまだこれからだって!」
立ち乗りした夏樹君が機敏にペダルの操作し、スティックを右へ左へ倒していく。その度にシュウメイは全力疾走、急ブレーキ、跳躍しながら敵機の間をすり抜けていく。シュウメイが通り過ぎる度に敵機が戦闘不能になっていく。
「これ鬱陶しいなぁっ!!」
突然夏樹君がヘッドギアを投げ捨てた。
「えぇえぇ!? ヘッドギア外していいの!? 操作方法分からなくなるよ!?」
「もう全部覚えましたから!!」
『ヒガンを狙え! ビーコンを狙ってるぞ!』
シバ機と2機の機体が照準をヒガンへと向けた。
「夏樹君! ヒガンが狙われてる」
夏樹君は僕の方をチラリと見て頷いた。
「レイラさん! 跳躍するんで俺も浮かせられますか!?」
『大丈夫デス!』
「2秒後に浮かせて下さい!!」
シュウメイがヒガンを庇うように跳躍する。そのタイミングで師匠の重力魔法が発動し、体全体に浮遊感が漂った。
「先輩! レーザーお願いします! 右手中指だけ!」
シュウメイはレーザーが発射された右手を高速回転させてシールドのように前へ突き出した。
「あんまり無茶苦茶しないでぇ!?」
回転レーザーに触れた銃弾が消し飛んでいく。
『さっきから何が起こっている!? Lあ77の技術はどうなっているんだ!?』
(で、弟子……成長しマシタね……うっ……)
(お兄様が……あんなに活躍して……)
(2人とも何号泣してるのよ)
「じゃ、そろそろ先輩の得意な遠距離攻撃行きますよ!」
空中でシュウメイが両腕を敵機へと突き出した。
空中でシュウメイの両掌が開かれる。
「俺が狙いを付けるんで!」
シュウメイの指が角度を変えそれぞれの指が狙いを定める。
夏樹君が何を言いたいのか理解できた。
目を閉じ力を解放する。
そして。
シュウメイが全ての指からレーザーを照射した。
照射されたレーザーは2機の四肢を貫く。
「これで、残り4機」
『このクソガキ共……』
シバ機が合図すると、3機の機体がヒガンへと跳躍する。
『レイラ! 出力調整しろよ!』
(私の番デスね! 了解デス!)
ヒガンが両手を下へと向ける。すると、周囲に力の流れが生まれる。その力達が球体を作って行く。
「なんですか!? あの球!?」
「夏樹君。アレはね……重力の球体だよ」
以前カノガミさんとの喧嘩で使ってた新技。アレって出力増やすと球体にまで凝縮されるのか。
(新技! 行きマスよ!!)
その球体を地面へと射出する。
すると、ヒガンへと迫っていた3機の機体が全て球体へと引き寄せられた。
球体へと密集した機体達は、嫌な音と共に地面へと落下した。落下した機体から次々と兵士達が脱出していく。
『おいエアリー。アイツらの機体は複座型か?』
(テッキメイ「ビオール」! タンザガタ! ヒトリノリ!)
(そうか。死人はいなさそうだな)
小声だけど、ウラ秋菜はホットしたような様子だった。夏樹君もそうだ。コックピットを狙わずにずっと攻撃してた。優しいのは勿論だけど、みんなすごいな。あの一瞬でよくそこまで気が回るよ。
『シバよ。後はお前1人だ。スペック差は歴然。国へ帰って侵攻作戦を中止するよう進言しろ』
『ガキが。お前達は何も分かっちゃいない』
『何? どういうことだ?』
『俺達の作戦はもう成功したということだ。お前達が我々の機体に気を取られている間にな!』
校舎裏から空へと光が照射される。そして、地面が光を帯びていく。
すると、瞬く間に校庭は黒い二足歩行機械達に埋め尽くされていく。
『な、何だと……』
(あの数……30機はいるわよ!?)
「30機!? ホントかよみーちゃん!?」
(本当よ! 数えたし! 1、2、3……)
(そんな事してる場合デスか!?)
現れた二足歩行機械達が整列し、道を作る。
そして、大量の二足歩行機械達から1機の機体が前へと出た。肩に張り巡らされた赤い蜘蛛の糸模様。まるでロボアニメの主人公機のような2つの目……その特長的な装飾は、僕でも一目で分かる。隊長機だ。
その機体は僕達に向かって声を発した。若い男の声を。この声、10代か? シバとは違い、戦闘狂のような危険な声。
『あぁん? 何でLあ77に戦闘機械があんだぁ?』
『ログサ。我々の事前情報と齟齬が……』
『シバのオッサン。指揮担当は俺だぜ? 隊長と呼んでくれよ』
『ログサ……隊長。ヤツらの機体スペックが……』
『あぁ……はいはい。そういう状況ね。じゃあ俺にも確かめさせてくれよ! この世界の戦力ってヤツをよぉ!」
ログサと呼ばれた男の機体は、その両面を怪しく光らせた。
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