超スペック!?ヒガンとシュウメイ!なのデス!

第144話 1/2

「本当なのかい!? 異世界の人間が攻めて来るって!?」


「俺も秋菜から聞いた時ビックリしたぜ〜。でもさ、に乗ってる時点で蝶野先輩も分かってるんじゃないですか?」


 僕と師匠が寝ていたら夏樹君とウラ秋菜が2階の僕達の部屋の窓を叩いて来た。死ぬほど驚いて、師匠が思わず家の窓を重力魔法で吹き飛ばしそうになった……止められて良かった。


 でも、もっと驚いたのが……。


 2人は9mほどのロボットに乗っていたんだ。夏樹君の乗ってる青い機体が「シュウメイ」ウラ秋菜の赤い機体が「ヒガン」と言うらしい。



 ……。



 いいじゃないか。



 ……ヒガンにシュウメイ。



 ……。



 リアルロボット感があって。



『相手が出現したのは学校デシタよね? なぜ出現位置まで分かるのデスか?』


『エアリーが教えてくれた。転移反応を感知できるらしい』


 師匠とウラ秋菜の声が聞こえて来る。師匠はウラ秋菜の機体に乗って欲しいと言われていた。ウラ秋菜の機体には師匠、みーちゃん、異世界人のパートナーロボのエアリーが乗っていて物凄く騒がしいことになっていた。


『エアリー! テンイハンノウワカル! ワカル!』


『ちょっとエアリー! 押さえてるんだから暴れないでよ! 丸っこくて滑るんだから!』


『フフフフ……みーちゃんを抱っこするなんて未来の為の練習みたいデスね。みーちゃん。私のことはママと呼んでも良いデスよ〜♡」


『レイラ!? 頬ずりするのやめてくれないかしら!?』


『お前ら後部座席で騒ぐんじゃない!!』



 ……。



「先輩。レイラさん恐ろしいこと言ってんだけど……」


 夏樹君が困惑したように僕の方を見た。


「……聞かなかったことにしよう。師匠は気が早すぎるからさ」


「あの〜ちなみにはもう……?」


『弟子がツレないのデス!』


「親と同居してるんですよ!? 下手な事できないですって!!」


「くぅぅ……羨ましいぜ……」


 夏樹君は涙を流しながら操縦していた。



 ……。

 


 5分ほどで白水中学前へと到着した。道路から見える校庭は至っていつも通りだ。


 どこかに敵の機体が潜んでいるのか?


 敵の存在を意識した瞬間、肌にピリピリとした嫌な感覚がした。みんなも一緒なのか、一気に通信が静まり返る。


 前を進んでいたヒガンが急に立ち止まり、ウラ秋菜がエアリーへと問いかけた。


『腕輪の解除コードは後どれくらいで完成する?』


『サンジュップン! サンジュップン!』


『30分……やっぱりガキには降りてもらうか』


『待って。私も乗せておいてって言ったでしょ? 解除したらすぐにでもリープする必要があると思うし』


『姫。私もいますから大丈夫デス。むしろヒガンの中が1番安全かもしれマセン』


『……分かった』



「秋菜さぁ〜実はみーちゃんのことめちゃくちゃ心配してんだぜ〜」



『お、お兄様!? 何を言って……』


 ウラ秋菜の戸惑ったような声が聞こえて来る。張り詰めた空気が少し緩んだ気がした。


 ……夏樹君はすごいな。こんな時でもいつも通りだ。なんだか、彼がいるだけで周りが明るくなった気がするよ。


『よし。みんな気を引き締めて行くぞ』


 ウラ秋菜の声と共に2機は学校の敷地内へと入った。



◇◇◇


『私が異世界人と対話してみる。お兄様と先輩は索敵を行ってくれ』


「オッケー。先輩もお願いしますよ」


 目を閉じ、シュウメイへと感覚を伸ばしていく。ここしばらくの修行で得た球体を作るイメージ。シュウメイの指先に水の球体を作っていく。人差し指が完了したら中指へ。右手が完了したら左手へ。そうして両手10本の指へ水の球体が出来上がった。


「準備できた。指示をくれたらいつでも撃てるよ」


「了解で〜す」


 夏樹君が確認するようにスティックを操作し、シュウメイの指を動かす。指が終わると腕や足へと対象を広げる。何だか運動前の準備運動みたいだ。


「何をやってるんだい?」


「どこをどうしたら動くかを確認してるんです。ほぼ1発勝負だからさ」


「その頭に着けてるヤツから操作方法が流れ込むって聞いたけど、それでもすごいね。シュウメイと一体化してるみたいに見えるよ」


「こういうの得意なんですよ。ロボゲーも結構やり込んでたから」


「……そのリラックスした感じ。羨ましいな」


「何言ってるんですか。俺だって緊張してますよ〜。ただ、アレです」


「ん?」


「秋菜と一緒で、今回は覚悟決まっちゃってる感じなんですよ。この町の人がやられるって言われたらさ。一応芦屋次期当主なんで。俺」


 そうか。


 彼はやっぱり、秋菜さんやウラ秋菜のお兄さんなんだな。



「秋菜。光学迷彩で隠れてるけど、屋上に2体。側面側に2体確認できたぜ。向こうもこっちに気付いてる」


『了解』



 ヒガンがゆっくりと校舎へ体を向ける。



『異世界の者よ。私は芦屋秋菜あしやあきな。この地を納める一族の者だ。対話に応じて欲しい』


 ウラ秋菜がスピーカーから深夜の学校に向けて声をかける。すると、数秒後に校舎の影から1機の二足歩行戦闘機械が現れた。


 僕達の乗ってる二足歩行戦闘機械に似てはいるけど、真っ黒い色合いにドームのような頭部。角ばった胴体に丸い頭部のアンバランスさがなんとなく、気持ち悪さを感じさせた。


『貴様達の機体……共和国製のヒガンとシュウメイか。なぜそんな物を異世界の民が所有している?』


 黒い機体から壮年の男の声が聞こえる。


『私達は先に名乗った。そちらにも名乗って欲しい』


『すまなかったな。オレはシバと言う。Mう87世界、独立国ムスカリの出身だ。それで、対話とは何だ?」


『私達の世界への侵攻をやめてくれないか?』


『……小娘と言えど、懇願など聞き入れられんな』


『いや、そうではない。交渉だ。私達としてもは避けたいからな。そちらも死者を出したくは無いだろう?』


『戦争? 二足歩行戦闘機械も持たぬ文明だと聞いていたが? 我らと戦う気か貴様ら」


「……シバと言ったな」


「何だ?」


「お前達の認識とではかなり齟齬があるようだ。お前達はこの世界に二足歩行機械が無いと言ったな? しかし、こうして私達は手にしている。既にこの世界には二足歩行戦闘機械がなんだ。戦争になったら……そちらもタダでは済まない」


 ウラ秋菜が2機の二足歩行戦闘機械を借りた理由。それはこの世界にも異世界人達の戦力と同等以上の戦力があると誤認させる為。つまり、偽の抑止力をもってこの部隊を追い返せないか……ということらしい。


 ただの子供騙しだけど、タイムリープができる僕達にとって、いまこの瞬間を乗り切ることさえできればなんとかなる。あともう一つの仕掛け……それがだ。


「それに……私達は既にで機体を改造している。個々の戦力で言えばお前達の機体スペックは超えているだろう」


『ただのハッタリだな』



 シバの機体がヒガンへと銃口を向ける。それに合わせて黒い機体1機が校舎から現れる。その機体はヒガンの背後を取ろうとライフルを構えた。


『やっぱり聞いてくれないか』


「おじさんさぁ。ちゃんとウチの妹の話聞かなきゃダメだぜっ!!」


 夏樹君が2本のスティックとペダルを操作して、敵機へ向かって跳躍した。


「ちょっ!? 遠くからでも撃てるんだけど!?」


「こういうのは最初が肝心なんですよ先輩っ!! 両手のレーザーお願いしますっ!! 5秒は行けますよね!?」


「行けるよ!!」


 シュウメイの両人差し指からが展開される。


 突然自分に向かって来たシュウメイに敵の照準がブレる。夏樹君は、その隙を見逃さず、レーザーを剣のように操って敵の両腕を切断、そのまま敵の懐に飛び込んで下半身も切断してしまった。



『な、何だその兵器は!?』


『言っただけろう……私達の機体はお前達の機体スペックを超えていると」


 ウラ秋菜のヒガンが両腕を開いて


『な、なぜ二足歩行戦闘機械が空を飛べるのだ!? 何だお前達は……!?』



 シバの叫びが敷地内へと響き渡る。



(ププッ! も見たこと無い田舎者がビビってマス♡)


(しっ。静かにしていろレイラ。聞こえるだろ)


(はい姫♡)



 ……。



 通信でヒガンの中の会話がうっすらと聞こえる。



 師匠……ノリノリだな……。

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