跳躍!なのじゃ!
第138話 1/2
「え!? カノガミが別世界に!?」
「い、いや……俺も確証がある訳じゃないんだけど……」
何か確かめる方法は……。
「な、なぁクシア? もしかしたら俺の……と、友達がクシアの弍型で転移しちまったのかも」
「なんですって!? 弍型には帰還用にMう87世界の座標が登録してあったのですわ! そうなると、その友人は私の世界に……」
クシアが額のクリスタルを指で抑える。どういう意味があるのかは分からないけど、何かをしているのだけは分かった。
クソ……っ! どうしたらいいんだよ。もしカノガミがクシアの世界に行ってたら……大丈夫かな、腹減らしねぇかな……夜になったらアイツ……アイツ……。
考えてたらなんだか目頭が熱くなって来た。心臓がバクバクする。上手く頭が回らない。さっきまでのほほんとしていた自分をぶん殴りたくなってくる。
1人で考え込んでいると、みーちゃんが心配そうに俺の顔を覗き込んで来た。
「ね、ねぇお兄ちゃん? 今日の昼までタイムリープさせてあげましょうか? カノガミが家を出る前に引き留めたら?」
「!? そうだよ! ありがとうみーちゃん!」
「それじゃあ、今日の昼にリープさせるわね」
みーちゃんが右手を俺へと伸ばす。
良かった……もっと早くこうしてれば焦らずに済んだのに。戻ったらカノガミのヤツにめちゃくちゃ文句言ってやろ。
「カンショウコウイヲカクニン! カンショウコウイヲカクニン!」
突然。エアリーが何かを叫び出した。
そして、ボール状の本体に穴が空き、そこから何かを発射した。
「きゃあっ!?」
発射された何かがみーちゃんの腕に当たり、みーちゃんは腕を押さえて座り込む。
「み、みーちゃん!? 大丈夫か!?」
「痛つつ……大丈夫。何これ? 腕輪?」
みーちゃんの右腕には、腕輪のようなリストバンドのような物がハマっていた。
「は、外せない……っ!?」
みーちゃんが力の限り腕輪を引っ張ってみるが、取れる気配は一向に無かった。俺も手伝ってみたが、全くビクともしない。
「エアリー! 何をしているんですの!?」
「ダッテ! ダッテ!」
「このポンコツ!」
クシアがエアリーをぶっ叩くとまた煙を噴いて地面に転がった。
「ごめんなさい。ウチの子が粗相をしてしまって。体に害がある物では無いですから、安心して欲しいですわ」
「確かに……何ともないわ」
「おかしいですわね……今までこんなことありませんでしたのに」
「まぁいいわ。とりあえず、お兄ちゃんをリープさせないと」
再びみーちゃんが手を伸ばす。
しかし。
リープしない。
「え!? なんで!?」
「どうしたんだよみーちゃん?」
「力が……力が使えないの!」
「は!? どういうことだよ!?」
「クシア。こ、この腕輪って……何?」
「え、それは時間干渉無効化装置ですわ。時間干渉できる人間なんていませんから、害は無いはずですわよ?」
「な、なんですってええええぇぇぇ!?」
「何をそんなに驚いているんですの? それと準サン。貴方の友人の居場所……分かりましたわ」
「え!? どうやって!?」
「この額のクリスタルを持つ物同士は交信できますの。私のバルディア弍型が本国に検知されたようですわ」
「ま、マジかよ……!?」
「それも悪い事に、転移先が……私の世界で有名な、ならず者国家ですの。急いで回収に行かないととんでもない事になりますわ」
「とんでも無い事って……どうなるんだよ!?」
「ならず者国家はとにかく資源を欲してますの。そんな国にこの世界の座標が記録された弍型が回収されでもしたら……」
「したら?」
「大量に派兵されると思われますわ。下手をすると、今いるこの地域が侵略されるかも……」
「な、なんだってええええぇぇぇ!?」
◇◇◇
とにかく先にウラ秋菜へ連絡した。アイツだったら何かいい案を思い付いてくれるかもしれない……そう思ったから。
15分ほど待つと、長い長い車が空き地にやって来て、中からウラ秋菜と猫田先生が出て来た。
ウラ秋菜へ状況を説明する。彼女は驚くことなく俺達の話を聞いてくれた。
「それで……その異世界人が攻めて来るかもしれないだな」
「可能性ですわ。その前に弍型を回収できれば……」
「そうなる前にカノガミを迎えに行かないと!? みんなでイアク・ザードの転移魔法で……」
「ダメだ」
「……え?」
「私達全員が行ってしまったら……異世界人が行き違いに攻めて来た時どうする? 事情も知らないままこの町の人間は蹂躙されることになるんだぞ」
そんな……今カノガミは別世界で1人で、誰にも頼れず不安になってるはずだ! 俺が助けに行かなきゃいけないのに……っ!?
「それは……そうだけど! ウラ秋菜の行ってることも分かるけど!?」
ウラ秋菜は焦る俺の肩を叩いて、安心させるように笑みを浮かべた。
「落ち着け。私は何も迎えに行かないとは行っていないぞ。お前もカノガミも……私にとっては大事な……友人だ。なんとかしよう」
「……ごめん。ちょっと、俺、焦ってて……」
「大事な人がいなくなった訳だからな。そうなって当然だ」
「秋菜殿の考えを聞かせて欲しいでござる」
「極力戦力を残しつつカノガミを迎えに行こう。クシアだったな? このガキに付いた腕輪は外せるのか?」
「え、えぇ。時間はかかるかもしれませんが、エアリーに解除コードを作らせれば」
「分かった。それじゃあクシア。エアリーをここに置いて行ってくれ。ガキの腕輪の解除をしてもらう」
「分かりましたわ」
「それと」
「なんですの?」
「バルディア以外の戦闘用ロボットは無いのか?」
「えぇ!? そんなの異世界人に渡したら私……」
「そもそもお前がこの世界に立ち寄ったのが発端だろ? 攻めてくるのもお前の世界の人間。ロボットぐらい提供してもバチは当たらないと思うが?」
ウラ秋菜がクシアを責めるような口調で話す。俺達の為にワザとやってくれてるんだと思うけど……。
「わ、分かりましたわ……」
渋々といった様子でクシアが2枚のディスクを地面に投げる。赤いロボットと青いロボットが現れた。バルディアにそっくりだけど、どちらも頭部が少し違う。赤い方はモノアイ式だけど青い方は目が8つもある。
「二足歩行戦闘機械『ヒガン』と『シュウメイ』ですわ。赤がヒガン、青がシュウメイ。時空転移装置の付いていない完全な戦闘用ですの」
「何でそんな物持っているのでござるか?」
「この2機には戦闘用AIが組み込まれてますわ。もし、戦闘の必要があった時の補佐用に……」
「ロボを4機も持って来てるなんて、どういう状況でござるか……」
猫田先生は呆れるように肩を落とした。
「クシア。ナンデモカンデモモッテクル!」
再起動したエアリーが周囲を飛び回る。
「このロボに私達が搭乗することはできるのか?」
「私達の国の二足歩行戦闘機械は全て複座式。2名まで乗れますわ」
「操縦方法は?」
「中にヘッドギアがありますわ。それを着ければ、操作マニュアルが直接脳に送られます。習得時間無しで操作できますの」
「べ、便利ね……脳に直接って……うぅ怖い……」
みーちゃんが両腕を抱くようにして体を震わせる。
「……状況は分かった。みんな。私の考えを聞いてくれ」
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