第137話 2/2
カノガミノやつ。フラッとどっか行ってから帰って来ねぇじゃん。どこ行ったんだよ。
みんなに聞いて回ったら駄菓子屋に行くって言ってたことだけは分かったんだけど……でも、結局紺田のじいちゃんもカノガミは来てないって言うし……大丈夫かな。
「あら。お兄ちゃんどうしたの?」
駄菓子屋からの帰り道、空き地の前でみーちゃんとばったり会った。
「カノガミのヤツが帰って来なくてさ」
「昼間フラフラ歩いていたわよ。駄菓子屋に行くって言ってたわ」
「紺田のじいちゃんに聞いたけど、駄菓子屋には行ってないらしい。やっぱりこの辺りでフラついてんのかなぁ」
「マヌケ! マヌケ!」
その時、空き地の方から合成音みたいな声が聞こえた。
「お兄ちゃん。あれ見て」
みーちゃんの指差す方を見ると、何かが草むらを漁っていた。
白っぽいピッチリした服にフルフェイスのヘルメット。そのシルエットから女の人だということは分かった。その人物が何かを必死に探してる。隣にはドッジボールみたいなのがふよふよ浮いてて、なんだか嫌に怪しい。
「おかしいですわ。あるはずですわ……」
「マヌケ! マヌケ!」
「うるさいですわ! エアリーがヤツがここにいるなんて言うから立ち寄ったのですわよ!?」
近づいてみると、その人が空飛ぶドッジボールとケンカしていた。
なんだこの丸いの? ロボットか?
「コイツ! コイツ!」
丸いロボットが大声を出した。
「うぉっ!?」
「何よこのボール!?」
ドッジボールみたいなヤツは両面からジャバラ状の腕を伸ばし、俺達の方を指差す。そして、目を赤く光らせてビービーとうるさい音を出した。
「ちょっとエアリー! 止まるのですわ!!」
女の人がエアリーというボールロボをガンガン叩く。ロボットは煙を噴いて地面に転がった。
「良かったぁ。自爆する所でしたわ♡」
「「じ、自爆!?」」
俺達の声に反応して女の人はビクリと体を震わせ、振り返った。フルフェイスのヘルメットは顔の部分が真っ黒になっていて、どんな表情をしているか分からない。
「え? え!? もしかて……あなた達、私のこと見えておりますの?」
「いや、見えるも何もそんな目立つ格好してたら……」
「見て下さいと言ってるようなものよね」
「ウソ!? 迷彩システムが作動してない!?」
女の人が自分の身体を弄り出す。よく見ると、着ている服はメカニカルな造形がされている物だった。そして、彼女が胸の辺りについた装置を操作すると、俺達の目の前から消えた。
「ふ〜これで一安心ですわ〜♡」
「「き、消えた!?」」
「え」
「そ、それどうなってんの!? どういう仕組み!?」
「何かの能力なの!?」
「しまったああああああ!? Lあ77世界人の目の前で消えてしまいましたわ!?」
Lあ77世界人……? 何言ってんだこの人?
突然。
また、女の人が目の前に現れる。
「ふ、ふふ……お見苦しい所をお見せしましたわ……」
その人がヘルメットを取った。ヘルメットの下から、ピンク色の髪が現れる。その髪は頭の両サイドで髪留めのような、謎の装置で留められて、明らかに地球の重力に反した位置に止まっている。クルクルとカールしたツインテールがその人物が動くたびにユラユラ揺れる。
そこに立っていたのは、俺とそう歳の変わらない女の子だった。
「わ、私は取るに足らない地球人でしてよ? 今のは……そう! 手品なのですわっ!!」
一生懸命に俺達と同じフリをしている。
でも、俺は分かっている。この子が俺達の世界の住人じゃないって。
だって……。
「ウソつけえええ! そんなピンク髪のヤツがいるかああああ!?」
そう。俺たちの世界に地毛がピンクの人間など、いないのだ。
「そそそそ染めているのですわ!? ブリーチ? ですわよ!!」
異世界人の女の子は苦しい言い訳をした。
額のクリスタルを輝かせながら。
「そんなクリスタル付いてるヤツいねぇわああああああ!?」
「し、しまったあああああ!? Lあ77世界人にはクリスタルが無いことを忘れていましたわあああああ!?」
◇◇◇
「あなたは自分からこの世界に来たの?」
「そうですわ」
「……異世界人が何のよう?」
みーちゃんは妙にピリピリしている。レイラさんとイアク・ザードのこともあったからなぁ。無理も無いよな。
「別に私はLあ77世界の皆さんに迷惑をかけるつもりはありませんわ。『時空規模の災厄』について調査していただけですの」
時空規模の災厄? また随分ヤバそうなヤツの名前が出て来たな……。
「とりあえず、あなたの素性を教えてくれないかしら?」
「私はMう87世界のクシアと申します。私達の世界……私の本国は異世界に友好的ですわ」
ん? クシア? どっかで聞いた名前だな……。
……。
なんだったっけ?
「さっきから言ってるLあ77とかMう87っていうのは何だよ?」
「この世界はそこまで文明が進んでいないんですの? それは世界座標ですわ。『M』が横方向、『う』が縦、『87』が奥行きを表しておりますの。各世界の中心に位置する座標をそのように呼ぶのですわ。この世界は立体に存在していて……」
「へぇ。立体なのは知ってたけど、座標なんてあるんだな」
「お、驚かないのですね……」
「ちょっと訳ありなの。それで、どうやってこの世界にやって来たの? 転移魔法って訳……じゃないのよね?」
「魔法? そんな物では無いですわ。我が世界の叡智が集結して作ったコレで来ましたのよ」
クシアが丸い板が2枚重なった物を捻り、それを地面に投げる。するとそこから光の線が現れる。それが空中に立体の絵を描いて行く。そして、全て描き終えると鈍色に輝く鉄の塊が現れた。
「は!? なんだよコレ……!?」
「ロ、ロボット……?」
現れたのは人型の機械だった。四角い胴体に細く角張った手足、そして、バイザー型の頭部が付いていた。大きさは9m……くらいか?
この大きさ、角ばってはいるけど、まるでガンパ○ードマーチの志○号みたいじゃん!
なぁカノガミ! お前にはバーチ○ロイドって言った方が伝わるかな!?
……。
あ……カノガミはいないんだった。
どこ行ったんだよホントに……。
「このディスクは、中に物体を分解収納し、いつでも復元することが可能ですわ。今復元したのが時空間移動用二足歩行戦闘機械『バルディア』その壱型ですわ」
「名前にごちゃごちゃ付いていて分かりにくいわね……」
ん? バルディア? クシア?
あれ……やっぱり俺、知ってるぞ。つい最近聞いたことが……。
「あ!?」
そういえば。
……。
突如地球に出現した時空間移動用二足歩行戦闘機械「バルディア弐型」に誤って乗り込んでしまったカノガミは、時空転移装置を起動して別時空へと跳躍してしまう。行方不明となったカノガミを救う為、外輪準は本来のバルディアパイロットであるクシアと共に別時空へと跳躍したのだった--。
あの嘘のあらすじ!?
アイツ、他の話数に見に行けるって言ってたよな……。
「な、なぁ? もしかして、クシアが探していたのはバルディアの弍型じゃないか!?」
「え……よく分かりますわね。この壱型は帰還できなくなった時の予備。ここに乗って来た弍型が行方不明なのですわ」
「ダカラシマエッテイッタダロ!」
「ち、ちょっと離れるだけだから迷彩システムだけでいいと思って……」
「マヌケ! マヌケ!」
「うるさいですわ!!」
マジかよ……。
「お兄ちゃん? さっきからどうしたの?」
カノガミ……お前……。
別の世界に行っちまったのかよ。
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