チビガミと大人みーちゃん!?なのじゃ!

第135話 1/1

 事件は、彼ノがみが帰った後に起こった。


 みーちゃんを迎えに来た比良坂さんと2人で彼ノがみを見送り、カノガミとみーちゃんのことを想って引き上げる。


 そして、先にカノガミが帰って来た。


「ジュン〜! 浮気はしておらんジャろうな!?」


 ん?


 なんかちっこい奴が脚に抱きついて来たぞ。


「おや? ジュンがなんだかデカい気がするのジャが……」


「え!? カノガミさん!? どうしたんですか!? その姿……!?」


「なんか変ジャノぅ……」


 カノガミがダボダボのパーカーを見回す。そして、鏡を見て絶叫した。


「な、なんジャあこりゃぁぁぁ!?」


「お前……子供の姿してるじゃねぇか!」


 カノガミがみーちゃんと同じ歳くらいの見た目になっていた。つまり……7歳の姿に。



 なんでこんな事に……!?



 その時、俺達の後ろからの声がした。


「はぁ……今回って8月に行ったんでしょ? お母様が力を使ったせいで体がだるいわ」


「うわっ!?」


 振り返ると同時に咄嗟に顔を背けた。


「何よお兄ちゃん。顔真っ赤にして」


「ひ、比良坂さん!? な、なんかみーちゃんに着せるふ、服無い?」


「え!? あ、そうだ! みーちゃん! ほら、ウチのお母さんの服想像して! そしたら能力で着替えられるでしょ!?」


「え? 理恵の? なんでよ?」


「だってだって〜そのままじゃ……」


「みーちゃん! ほぼすっぽんぽんジャぞ!」


 みーちゃんは昨日、融合前に着ていた冬用ワンピースが……捲れ上がってえらい事になっていた。



「な、何よコレええええぇぇぇ!?」



 みーちゃんはカノガミと同じぐらいの見た目……21歳の姿になっていた。



◇◇◇


「みーちゃん……立派になってうっうっ……」


「ちょ、ちょっと舞……? 泣かないでよ」


 比良坂さんが感極まった様子で泣いている。というか比良坂さん。大きくなったって……それでいいのか?


「ジュン! 腹減ったノジャ! からあげ作っておくれっ!」


 小さいカノガミ……チビガミが脚に纏わりついて来る。髪は相変わらず背中に届くほど長いのに、子供の分いつもより動きが激しいからめちゃくちゃ邪魔そうだな。


「な、なんかその姿でいつもの喋り方だとクソガキ感が……」


「なんジャとぉ!? クソガキとはどういうことジャぁ!?」


 チビガミが俺の身体を登って顔を連続で引っ掻いて来た。


「ヒィィィィ!? 引っ掻いて来るのやめろおおぉぉぉ!?」



「のジャっ!?」


 すっかり大人の服に衣装替えしたみーちゃんがチビガミを抱き上げる。


「ダメでしょ? お兄ちゃんに迷惑かけちゃ」


「何するのジャ!? 離すのジャみーちゃん!?」


 チビガミがみーちゃんの腕の中で暴れる。それを、みーちゃんは優しい笑みを浮かべて抱っこする。


「ごめんねお兄ちゃん。がワガママ言って」


「あ、いや……俺は」


 大人のみーちゃんは……いつもと同じショートボブで、だけどスラッとモデルのような姿をしていて……カノガミとよく似ているけど、さすがというか、カノガミと姉妹だからか……とんでもない美人だった。


 しかも、カノガミがその性格で相殺している所を、みーちゃんの落ち着いた雰囲気を合わせ持っている。その相乗効果がとんでもないレベルに彼女の美貌を引き上げていた。そ、その見た目でその雰囲気だと……年上のお姉さん感がすごいんだけど……。


「どうしたのお兄ちゃん? 急に黙り込んで」


「あ! 外輪君顔真っ赤だよ。きっとみーちゃんが美人すぎて緊張してるんじゃない?」


 比良坂さんが俺の顔を覗き込もうとしてくる。見られるのが恥ずかしくて顔を伏せた。


「そそそそんな、こと、無いよ?」


「そうなの?」


 みーちゃんが俺の手を取る。


「見た目が変わったといっても中身は変わらないわ。お兄ちゃんはいつも通りに接してくれればいいのよ?」


「え、あ、は、はい……」


「ジュン!? デレデレするでない!」


「してないって!」


 チビガミが、みーちゃんの腕の中で暴れる。


「こら。そんなに暴れたら怒るわよ?」


「絶対楽しんでおるジャろ!? さっきから姉とか妹を強調してくるのジャ!?」


「そんなこと、ないわよ? ふふ」


 みーちゃんは、笑いを堪えるような顔でチビガミの頭を撫でる。


「よしよし〜チビガミちゃんはからあげが食べられなくてご機嫌ナナメなんですかぁ〜?」


 みーちゃんは、小さな子供をなだめるような口調でチビガミの頭を撫で続けた。


「ちがうのジャ! みーちゃんと入れ替わったのが屈辱なのジャぁ!」


「いいじゃない。今のチビガミちゃんなら妹として愛せそうよ?」


「それが屈辱なのジャ!!」


「よしよし」


「うぅぅぅジュン〜」


 デメキンのように目を潤ませたチビガミがこちらを見る。



 ……。



 すまんカノガミ。



 俺も今の方が、って思っちまったわ……。



◇◇◇


「ふぅ♡ 一時はどうなることかと思ったのじゃ!」


「はぁ……アンタがあんまり泣くから仕方無く戻ってあげたんじゃない……」


 あの後、チビガミがあまりに大泣きするので、2人はもう一度彼ノがみになった。そして、彼ノがみに事情を説明し、もう一度分離してもらった所、2人はいつもの姿に戻っていた。


 彼ノがみ曰く「ちょっと私の内面が大人になったからかな? ごめんね♡」と言っていた。どういうことだよ……。



 でも……。



「な、なぁ? みーちゃんって成長するのか?」


「え? どうかしら? 分からないわ」


「そ、そっか……」


 今回で見納めもちょっと惜しい気がする。カミ的美貌……。


「こらジュン! デレデレするでない!」


「いてててっ!? 髪で攻撃するなよ!?」



「私は大人みーちゃんも好きだけど、やっぱり今のみーちゃんが1番だなぁ〜」


 比良坂さんがみーちゃんを抱き上げて、頬をスリスリと擦りつけた。


「ちょ、ちょっとやめてよ舞」


「でも良かったねみーちゃん」


「何が?」


「みーちゃんが大きくなったら、きっと圧勝だよ♡」


「う、うん……」


「コラああああ!? ウチは忘れんからなあああああぁぁぁ!!」


「うわああああああぁぁぁ!?」


 カノガミの攻撃を受けながらみーちゃんの方を見てみるとみーちゃんは嬉しそうに笑っていた。

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