この物語のヒロインは彼ノがみサマだよ♡ なのじゃ!……ってえ?
第133話 1/2
あれよあれよという間に2学期は過ぎて行き、気が付けば11月になっていた。
「ただいま〜♡」
何も無い所から急に冬服の彼ノがみが現れた。
「お……おかえり。8月はどうだった?」
「あっちの準も可愛いかったよ♡ 11月の準も好きだけど〜」
彼ノがみが抱きついて来る。
「やっぱり抱きついても邪魔されないっていいねぇ♡」
「そ、そっか」
ああ……結局
11月に入って彼ノがみを呼び出した時、やはりというか……必然というか、彼ノがみは「8月に行く」と言い出した。
説得を試みたが、結局止めることはできなかった。すまん……8月の俺。
「にしても、まさか8月のカノガミとみーちゃんが私を呼び出して来るなんてねぇ。危うくこの世界が吹き飛ぶ所だったんじゃない?」
「ま、マジ!? パラドックスってヤツ?」
「んーん。それは大丈夫。ただ、時のカミが本気でケンカしたら……どうなるか分かるでしょ?」
あの時は2人の彼ノがみに詰め寄られて必死だったけど、冷静に考えたらそうか。あの絶大な力を持つカミサマが2人も存在してたことになるんだもんな。何も起きなくて良かった。止めてくれた小宮のおかげだな。
「でも、カノガミもみーちゃんも仲良く遊んでくれて良かったよー。最初は怯えてたから」
仲良く遊んでいた? 喧嘩しながらスマ○ラしてたようにしか見えなかったけど……でも確かに最初2人とも怯えまくってたよなぁ。
「アレはお前が威圧的な話し方するからだろ」
「だって〜初めて会う我が子だよ? 尊大に見せようと思ってつい昔の話し方しちゃった♡」
「しちゃった♡ってお前なぁ……」
ん? 昔の話し方?
「え、彼ノがみってずっと今みたいな感じじゃないのか!?」
「あれ? 言ってなかったっけ? 今はこんな感じだけど〜私って昔はもっと大人しかったんだよ?」
言ってたっけ?
今までの彼ノがみとのやりとりを思い返してみる。
……。
「昔はもっと私も落ち着いてた気がするけどね。久しぶりに復活したらなんだか……落ち着かないっていうかぁ〜。こんな感じ? になってた」
……。
「あ……そういや言ってた。た、確かハンバーガー屋に行った時に……」
「さすが準。よく覚えてるね〜♡」
彼ノがみがその表情を変える。ついさっきまでの笑顔から真顔のような冷たい顔に。
「以前はな。このような話し方であったのだ。ソナタ達と出会うずっと前。チヨと生きた時代だ」
「ぜ、全然違うじゃん……」
「今は、口調を真似ておるだけだが、本来の私はもっと思慮深い。今はな……考えが上手くまとまらぬのだ」
「いつもの彼ノがみから思慮深い所とか想像も付かないんだけど」
「あ。それじゃあ〜準にも体験させてあげようか? 私がなんでこんな感じなのか」
彼ノがみはまたいつもの雰囲気に戻った。少し妖艶な笑みを浮かべて。
「ど、どうやって……?」
「私と合体するの♡」
「いいいいいいいや!? 合体って!? ななななななな何を言ってるのあああああ彼ノがみさんんん!?」
「なーに勘違いしてるの〜? 準は憑依態は知ってる?」
あ、なんだ……憑依態のことか……めちゃくちゃ焦ったぜ……。
「知ってるも何も、憑依態の姿でイアク・ザードと戦ったんだし」
「そ。じゃあ〜私との憑依態になってみよっか♡」
そう言うと、彼ノがみが両手を合わせ、ソフトボールほどの大きさの光の球になった。
「すげぇ……彼のがみの光球態ってそんな感じなんだ」
カノガミはピンクがかった薄い光の球だけど、彼ノがみの場合は眩いほどの黄金に輝いている。何も知らずにこんなのを目にしたら、カミサマだって思うかも。
--分離の仕方も分かってるよね?
「ああ。彼ノがみと分離したいって思えばいいんだよな?
--そうだよ。それに合わせて、私も準と分離したいって考えるの。そうすれば別れられるから。じゃ、いくよ〜。
彼ノがみの光が俺の額に入って来る。すると、急激に髪が伸びていく感覚がした。カノガミの時と同じように憑依態になれたみたいだ。
鏡の前に立ってみると、髪はカノガミとの憑依態の時ほど長くない。彼ノがみと同じように肩までの長さだ。でも、目がなんか違う。彼ノがみみたいに吸い込まれそうな漆黒の瞳になってる。
髪の毛かシュルシュルと伸びて言って、ペンを取る。そして、近くにあったチラシに文字を書き始めた。
この状態で意識を集中させてみて? 私の心の動きが分かるから♡
そうだった。憑依態だと話はできないけど、そういうことはできたよな。
自分の意識を集中させる。
……。
!?
なんだよこれ!? 喜怒哀楽がグッチャグチャに混ざってる!? それになんだか落ち着かない。子供の頃、遊びに夢中になってハイになった時みたいな……酸欠の時のような……意識が全然定まらない!?
「き、気持ち悪い……吐きそう……」
ペンを持つ髪が慌てて文字を書いた。
ちょ!? 吐かないでよ!! 分離分離!!
俺達はすぐに分離した。
◇◇◇
「私がこんな感じの理由分かったでしょ?」
「うぅ……もうやりたくない……」
「ちょっと〜傷付くんですけど〜?」
彼ノがみは頬を膨らませる。そして、また真顔になると、あの口調で話し出した。
「恐らく……だが、カノガミとみーの2人の個としての自我が形成された為であろうな。個として完結された2人の自我ではもう、上手く混ざらぬようだ。もし、あの2人が彼ノがみという個に還りたいと願うなら、本来の私に戻れるやもしれぬな」
「も、戻るって……」
俺は……嫌だな。カノガミやみーちゃんともう会えないなんて……。
「そう心配そうな顔をするな。ある意味、ソナタと私達全員が結ばれる方法とも、考えられるのではないか?」
「う〜ん……」
「ま、仮の話だよ。私もあの子達おちょくってる方が楽しそうだしぃ♡」
彼ノがみはパッと笑顔になった。表情がコロコロ変わるヤツだけどやっぱり、さっきの顔よりこの笑顔の方が安心するよ……俺の知ってる彼ノがみって気がして。
「俺も今の彼ノがみの方が好きだな」
「え」
「え?」
「それは私のことを愛してるってことだよね!? よーし! やっぱり11月の準を時間の狭間に連れてって永遠にイチャイチャしよ♡」
彼ノがみが俺の腕を掴んで何処かへ引っ張って行こうとする。
「そういう意味じゃねぇからあああぁぁぁ!?」
危うくカミ隠しに遭う所だった……。
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