第118話 3/3
就職先を決めたレイラさんは蝶野先輩の元へ報告に行った。蝶野先輩の親御さんはすごく喜んでくれたみたいで、無事に同居できることになったらしい。
「ということで
「す、すごい……! まさか1日でそんな優良物件を見つけてくるなんて、さすが師匠!!」
「えへへ♡ もっと褒めても良いのデスよ?」
レイラさん。先輩との距離が近いな。先輩は半ば無理矢理頭を撫でさせられているように見える。
「な、なんかレイラがデレデレじゃの」
「あ、ああ。イアク・ザード戦からは想像も
付かない姿だなぁ」
本当はこういう人だったのか、先輩がそうさせたのか……。先輩の成長具合とはまた違う変化に正直驚くよな。
「2人ともうるさいデス。何か文句ありマスか?」
レイラさんがその青い瞳をギラリと光らせた。
「「あ、ありません……」」
「私はこの世界では弟子に死ぬほど甘やかされると決めたのデス♡」
「そ、それは良かったの」
「先輩は大丈夫なんですか?」
「僕は大丈夫だよぉ」
振り返った先輩は顔が緩み切ってとても他人には見せられないような顔をしていた。
「ち、蝶野のヤツ……顔が崩れまくっておるのじゃ!?」
「そ、そんなことないよ! 僕は師匠として敬意を持って……」
先輩が真面目な顔に戻る。
「弟子〜明日は黒部山で修行デスよ〜♡」
「は〜い♡」
しかし、また表情が崩れていく。
「やっぱりニヤけまくってるな。先輩」
「バカップルじゃ。いや、バカ夫婦かの」
「お前にだけは言われたくねぇデス!!!」
カノガミの放った一言に反応したレイラさんが、ヘッドロックをかけようと飛び掛かる。
「うあああああ!? レイラがイジメるぅぅぅ!?」
間一髪レイラさんの腕を避けたカノガミは、道路を走って逃げ出した。
「逃げるんじゃねぇデス!!」
「嫌じゃあああああぁぁぁ!!」
「止まるのデス!!」
レイラさんが重力魔法を放つ。
「止まるわけないじゃろぉぉぉ!?」
カノガミは、自分を加速させて、広範囲の重力魔法から逃げていた。俺もやったことあるから分かるけど、加速って便利なんだよな。逃げる時は。
「食らえ!!」
レイラさんがカノガミに両手をかざすと、カノガミがどんどんレイラさんの方へと引き寄せられていく。
「な、なんじゃあこれは!?」
「私も修行して力を増しマシタからね! 物体を引き寄せるなんて造作も無いデス!」
「あぁぁぁ! レイラに引き寄せられるぅぅぅ!」
ついにレイラさんに捕まったカノガミは、強烈なヘッドロックを喰らっていた。
「あがががが!? ジュン〜助けてえぇぇぇ!!」
すまんカノガミ。ただの人間の時の俺じゃあ何もできねぇわ。というか、能力なら戦闘があった時に使えよ2人とも。
それにしても。
この前もみーちゃんと一戦交えていたし、敵多いなぁカノガミのヤツ。なんだろう? カノガミに言われるとイラッとすることでもあるんだろうか?
「あ、抜けられマシタ」
「あ"〜死ぬところじゃった〜」
「逃げんじゃねぇデス!!」
「うあああああ!? 許して欲しいのじゃああああ!」
また始まった。
……。
カノガミとレイラさんの追いかけっこをぼーっと見ていると、いつの間にか先輩が俺の後ろに立っていた。
「ここだけの話なんだけどね……」
「うぉビックリした!? ど、どうしたんですか先輩?」
「師匠……僕に対するあのテンションで修行はめちゃくちゃ厳しいんだ。いや、以前よりも厳しくなったかもしれない」
え? 今見た猫撫で声全開テンションで……? 修行は厳しい……?
……。
「逆に怖いですね」
「そうなんデス……」
蝶野先輩は、レイラさんの真似をしながら深々とため息をついた。
みんな、色々あるんだなぁ。
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