レイラの就活を!?なのデス!

第116話 1/3

「ホレホレ〜ジュン。あ〜んするのじゃ♡」


「あ、あ〜ん……」


「どうじゃ? 卵焼きの味は?」


「う、美味いぞ」


「そうじゃろ? なんと言ってもジュンが作った弁当なんじゃから。美味くて当然じゃ! ホレ。もう一個卵焼き。あ〜ん♡」


 周りを行き交うカップルからクスクスと笑い声が聞こえて来る。


 先日、レイラさんの世界から来たという気持ち悪いモンスターのせいで、俺はカノガミに冷たい態度を取った。そればかりか、カミであるプライドをひどく傷付けてしまった。


 今日はそのお詫びとして「なんでも言うことを聞く」ということになっている。


 ただ……。


 公園でデートをするのはいいけど、「人前でイチャイチャさせろ」という要求をされたせいで、かれこれ30分ほど恥ずかしい思いをしている。なんで俺が作った弁当を「あ〜ん」させられてるんだよ……謎のシチュエーションじゃねぇか。


「ん? どうしたのじゃ?」


「いや、なんでもないよ」




「はぁ〜……見せつけてくれマスね……」




 デカいため息が聞こえたので振り返ると、すぐ後ろにレイラさんが体育坐りで座っていた。


「うぉ!? ビックリしたのじゃ!」


「どうしたんだよレイラさん? そんなため息ついて」


「うぅ……聞いて欲しいのデス。最愛の夫である弟子と会えないのデス」


「夫である弟子って……意味分からなすぎじゃろ……」


 レイラさんと蝶野先輩が帰って来てから色々と話を聞いた。1番驚いたのが、2人が結婚したということだ。


 秋菜ちゃん以外のみんな腰を抜かすほど驚いていた。ただ、秋菜ちゃんだけはレイラさんに結婚の契約魔法の使い方を熱心に聞いていたな。何に使いたいのかは大体想像がつくけど……。


 蝶野先輩には「外輪君。どうしたらいいと思う?」と相談されたけど、何も答えられなかった。なんて言ってあげたら良かったんだよ。


「そ、それで……なぜ蝶野に会えないのじゃ?」


「うぅ……お義母様デス」


 あ、蝶野先輩の両親に止められたのか。まだ中学生の息子が結婚相手を連れて来たらそりゃあ反対するよな。絶対。


「まぁ気を落とさないでよレイラさん。やっぱり色々すっ飛ばして結婚っていうのはちょっとやりすぎだったんじゃない?」


「そうじゃぞ! まずは友達として文通から始めてはどうかの?」


「お前……それ真面目に言ってんのか?」


「失礼じゃな! ウチは若い2人の将来に真剣に向き合って……」



「いえ、結婚については快く承諾してくれたのデス。むしろ泣いて喜ばれマシタ」



「「え"、えぇ!?」」



「な、なぜじゃ!?」


「ウチの子をこれほど立派にしてくれた女性なら大歓迎と言われマシタ」



 蝶野先輩、修行後は好青年感凄いからなぁ。その辺を評価されたのかも。別作品なら主人公だろうな。能力といい……今の性格といい……レイラさんといい……。


--何をメタ的なことを言っておるのじゃ?


 うわっ!? 勝手に頭の中で話しかけて来るなよ!?


--照れるでない♡


 照れてんじゃねええええぇぇぇ!?



「ところで、なぜ会えないのじゃ?」


「う……さすがに無職はマズイと言われマシタ。ちゃんと職に就きなさいと」


「まぁそりゃそうか。それで就活成功するまで会わせてもらえないんだ?」


「お義母様からは『レイラちゃんの為に心を鬼にするわ!』と言われてマス」


「随分気に入られておるの〜」


「お願いデス! 何の関係も無い2人にお願いするのも申し訳ないデスが、私の就職活動に協力して欲しいのデス!!」


 レイラさんが頭を下げて来る。


「お願いされなくても手伝うって。レイラさんは俺達の大事な仲間だろ?」


「そうじゃぞ。水臭いことを言うでない」


「2人とも……恩に切りマス」


 こうして、俺とカノガミはレイラさんの就活に付き合うことになった。


 でも、この時の俺達はまだ楽観視していた。


 なんと言っても魔法が使えるのだ。すぐに採用されるだろう。



 が。



 その考えが甘かったと後で思い知らされることになった。

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