お泊まりみーちゃん!なのじゃ!

第113話 1/2

「昨日は母上が来てどうなるかと思ったが、今日は実に平和じゃったの〜」


「何でまだその呼び方なのよ? アイツはもういないでしょ?」


「じゃっていちいち呼び方変えるの面倒なんじゃもん。母上でいいじゃろ」


「まぁ……それもそうね。いきなり現れても面倒だし」


 カノガミとみーちゃんが彼のがみについて話している。心なしか2人とも疲れてる感じがするな。まぁ、2人とも振り回されていたんだから当然か。


「さーてもう夕方だし飯作らないとなぁ〜」


「お! 今日のゴハン何かの〜」


「今日はなぁハンバーグだぞ。みーちゃんが好きだって前聞いたしな」


「いつ言ったかしら……」


 みーちゃんは驚いた様子だった。そういやいつだったっけ? みーちゃんに直接聞いたわけじゃないよな。


「そうだ! 前に親近感クラブの取材した時だ。みーちゃんとウラ秋菜が来たじゃん。その時に比良坂さんが言ってたんだ」


「あ、確かにあの時、舞が言ってた……」


「そうだったかの〜ってみーちゃん!? なんじゃその顔は!?」


 みーちゃんは熱に浮かされたような顔をしていた。


「は? え? だ、大丈夫か!?」


 咄嗟にみーちゃんの額に手を当てた。


「ひうっ……!?」


 みーちゃんの様子が変だ。ぼーっとして意識があるのか分からない。


 カノガミがみーちゃんの顔の前で手をヒラヒラ動かしてみたけど、何の反応も無い。


「みーちゃんのヤツ……顔が真っ赤じゃぞ」


「な、なあカノガミ? カミって風邪引くのか? なんか熱いような気がするんだけど」


「カミは風邪など引かん。多分これは別の問題じゃな」


「別の問題?」


 カノガミは大袈裟に肩を落としてため息を吐いた。


「ジュンは本当にカミたらしじゃのぉ。時のカミの好きな食べ物を覚えておるなんての〜。しかも結構前のことじゃろ?」


「確か……そうだな」


「きっと嬉しすぎたのじゃろう。些細なことだったり意外なことを覚えておられるのはウチらにとってたまらないのじゃ」


  あ。


 そういや、ノがみも似たようなことを言っていた気がする。


「どうしよう? 作っちゃっていいのかこれ……」


「……」


「カノガミ?」


「作ってやっておくれ。きっと喜ぶハズじゃから」


「ああ。分かったよ」



◇◇◇


「みーちゃん。みーちゃん」


 カノガミが眠っているみーちゃんを揺する。


「ん……」


「起きるのじゃ。もうすぐゴハンができるようじゃぞ」


「ごはん?」


「そうじゃ。みーちゃんの好きなハンバーグじゃぞ」


「そ、そうね……ハンバーグだったわね」


 フライパンからハンバーグを皿に移し、申し訳程度のブロッコリーを添えてテーブルに置く。副菜とご飯、味噌汁を並べて3人でテーブルに着いた。


「よっしゃ食おうぜ」


「チーズが乗ってるのね。ハンバーグ」


「カイ兄が好きでさぁ。こればっか作ってたから」


 みーちゃんがゆっくりハンバーグを口運ぶ。


「どうじゃみーちゃん? ジュンのハンバーグは?」


「舞の家のとは違うけど……すごく美味しいわ。なんだかフワフワしてる」


 みーちゃんが笑みを浮かべた。


 良かった。気に入ってもらえたみたいだな。


「ウチのは野菜をすりおろしてるんだよ」



「おや?」


 カノガミが副菜の入った小鉢を手に取った。


「このポテトサラダいつものと違うのじゃ。真っ白じゃぞ? 舌触り滑らかで美味いのじゃ」


「ああそれ? ハンバーグはウチ流だったからさ、ポテトサラダはみーちゃん家に合わせたんだ。比良坂さんのお弁当みんなで食べた時にさ、作り方聞いたんだ。じゃがいも裏ごししてるってすごいよなぁ」


「ほぉ〜ウチも食べてみたかったの。その時憑依体ひょういたいじゃったし」


「お前は憑依体でもめちゃくちゃ食うだろ!」


 ふとみーちゃんを見ると、また顔が真っ赤になっていた。


「う、嬉しいわ……色々気を使ってくれて……」


「そんなに気にしないでくれよ。俺が好きでやってんだから」


「うん……」


「全く。いつもジュンは気を利かせてくれるのじゃぞ? いちいち反応しておったら体が持たんのじゃ」


「……アンタは毎回こんな思いをしてるわけ?」


「ん? ああそうじゃぞ。いつもジュンがウチの気分に合わせて茶菓子を用意してくれるし、お茶も不思議と気分にピッタリの物を用意してくれるのじゃ。夕飯はの〜ウチが腹ペコの時は決まってからあげにしてくれるのじゃ!」


「まぁ結構長く住んでるし、好みはなんとなく分かるようになったな」


 からあげの味を思い出したのか、カノガミはジュルリとヨダレを溢した。


「話してたらジュンのからあげが食いたくなってきたの〜明日作っておくれ」


「うーん。明日は焼きそばにするつもりなんだけど」


「嫌じゃ嫌じゃ!! 明日はからあげが食べたいのじゃ!!」


「……」


 カノガミが子供のように駄々をこね始めた。うわぁ。みーちゃんもいるのによくやるなぁカノガミのヤツ……。


「うぅ〜じゃあ許してやるから食後に茶を入れておくれ」


「……」


「わあったよ。プーアルでいいか?」


「お、分かっておるの〜メインがコッテリしておるからの。茶菓子もお願いじゃぞ」


「はいはい」



「ふ、ふふ……」



「ん? どうしたのじゃみーちゃん? ドス黒いオーラなど出して……」


 突然。


 みーちゃんがカノガミの頬を掴み、思い切り引っ張り出した。


「イタタタッ! 顔を引っ張るのはやめるのじゃ!?」



「アンタはねぇぇぇぇ!! クソぉぉぉ!!」



 みーちゃんは涙を流しながらカノガミにキレ散らかしていた。



 ……。



 怖えぇぇぇ……。

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