第101話 2/3

 カイ兄が帰って来て2日が経った。


「おーい準。そろそろ行くぞ〜」


「わぁったよカイ兄〜」


 カイ兄が帰って来てから毎日出かけている。初日は外食、昨日は俺の両親の墓参り、今日はショッピングモール。家でゆっくりすればいいのに。



 トイレから出て自分の財布をポケットにしまっていると、俺の部屋からドタドタと騒がしい音が聞こえてきた。


「わあああ待つのじゃ! ジュン! カイセイ〜」


「早くしろよカノガミ」


「じゃって〜乙女は色々と準備が大変なんじゃぞ!?」


「乙女って……お前はカミだから寝起きの準備とかいらないだろ? 着替えも一瞬だし、最悪、光球態こうきゅうたいでもいいじゃん」


「せっかくじゃから一緒に行きたいのじゃ!」


「なぁ準!? 光球態って何? なんかマスコットキャラ的なヤツになれんの? カノガミちゃん」


 カイ兄が反応してくる。カノガミがウチに居候するのを認めてくれたのはいいけど、毎回説明しなきゃいけないの結構面倒だな……。


「じゃーん♡ お待たせしたの〜」


 部屋から出てきたカノガミはいつもと違う服を着ていた。最近はTシャツにショートパンツばかりだったけど、今日はどこで見てきたのか、ロングスカートの、全体的にふわっとした服を着ていた。


 なんか、見た目相応というか……こういう服を着ていると、年上って感じするなぁ……。


「お、おぉ……」


「なんじゃあ? その反応は?」


「許してやってくれよカノガミちゃん。コイツ、照れてんだよ絶対」


「そ、そうなのか!? ジュン! ウチの姿を見て照れておるのか!?」


 カノガミが俺の肩をめちゃくちゃ揺らしてくる。


「だあああああ! うるせぇぇぇぇ!!」


 クソ。カイ兄とカノガミの2人だといいようにおちょくられてる気がする……。


「はっはっは! いやぁお前ら見てると面白いぜ! じゃ、行くぞ〜」



◇◇◇


 カイ兄の借りて来たレンタカーで国道を走っていく。運転席にカイ兄、後部座席に俺とカノガミが乗った。家族みんなで車に乗って出かけることはそう無いから、久しぶりだなぁ。


 ただ、カノガミが何か店が見える度に興奮して叫ぶから、その度に思わずツッコミを入れてしまう。道中うるさくて仕方ない。


 運転の邪魔じゃないかなと心配になったけど、バックミラー越しに見えるカイ兄は俺達を見てはなぜか微笑んでいた。



 川沿いの三叉路を越えると、映画館の入ったショッピングモールが見えてくる。


「おぉ! こんななーんも無い所にクソデカ店舗があるのじゃ!」


「そ、それ褒めてんのかよ……?」


 デカいショッピングモールがあるのは確かにこの辺の特権ではあるけどさぁ。


「ところでカイセイ。今日は何の映画を見るのじゃ?」


「え? カノガミちゃんに言ってなかったっけ?」


「ジュンとカイセイが盛り上がってたことだけは覚えておるのじゃ」


「「そんなの決まってるだろ……」」


「え? なんじゃ2人とも……その不審な笑みは……」


「スターウ○ーズに決まってんだろぉが!」

「エピソ○ド2見ない訳に行かないだろぉ!」



「な、なんじゃってええええ!?」



 その後、映画が始まる直前まで、カノガミはカイ兄から延々とスターウ○ーズの予習話を聞かされていた。



◇◇◇


「トホホ……よく聞いてからついて来るんじゃった……」


 映画館から出て来たカノガミは肩を落とした。


「ま、まぁ映画自体は楽しめただろ? カイ兄の解説はあれだったかもしれないけど……」


「そ、そうじゃな。映画自体は面白かったぞ。吹き替えじゃったし。カイセイの解説はあれじゃったけど……」


「なんだよぉ。せっかくカノガミちゃんが楽しめるように話してやったのによぉ〜」


 カイ兄が頬を膨らませた。こう見ると、とても33歳には見えないな。20代の頃から全然変わって無いや。


「そういや、そろそろ飯時じゃねぇか?」


 カイ兄が腕時計を見ながら呟いた。


「ウヒョ〜ごはんじゃぁ〜! 何を食べようかの〜」


「俺の奢りだから好きなもの食え! 準も遠慮すんなよ?」


「ありがとうカイ兄」


 カノガミがレストラン街の店舗一覧を見ながら指をさす。



「ど・れ・に・し・よ・う・か・の。これじゃ! じゃっ!!」



「それはさすがに遠慮しろよ!!」


「えぇ〜!? 焼肉食べたかったのにぃ〜」


「お前の食欲で高級焼肉とかカイ兄破産するぞ……」


「う……ぅ……すまんな2人とも……俺が不甲斐ないばっかりに……」


「わああああ!? カイ兄のせいじゃ無いからああああ!!」


 結局、焼肉ある食べ放題店になった。

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