3人揃えば……。なのじゃ!

第109話 1/4

「本当にごめんね外輪君。みーちゃんがどうしてもって言うから」


「いいよいいよ。ウチも賑やかな方が楽しいからさ」


 比良坂さんが法事の関係でお母さんの実家に行くことになったらしい。ただ、みーちゃんがどうしても白水を離れたくないと言うので、比良坂さんが帰るまでウチに泊まることになった。


「3日後には迎えに来るからね」


「大丈夫よ舞。心配しないで」


「それと外輪君。みーちゃんに変なことしたら……」


「比良坂さん!? 顔怖くなってるよ!?」


「ごめんなさい!? 私からお願いしたのに。つい……」


「は、はは……それだけみーちゃんのことが大事ってことで……」


 怖えぇ……比良坂さん、マジでみーちゃんのことになると人が変わるなぁ……。


「舞。安心するのじゃ。ウチもおるからの」


「カノガミさんもありがとう」


 比良坂さんは名残惜しそうに手を振ると、エレベーターに乗って行った。



「みーちゃん。何かやりたいことある?」


「わ、私はなんでも良いわ。お兄ちゃんと一緒……だったら……」


「……」


「それじゃあ紺田の爺ちゃんの所行くか〜。最近気に入ってんだあそこ」


「駄菓子屋よね? 舞からお小遣い貰ったし、行ってみたいわ」


「……」


「なんだよカノガミ? さっきから黙って」


「いいやぁ? 何でも無いのじゃ」



◇◇◇


「お〜よく来たなぁ2人とも。この前はありがとうな」


 紺田のじいちゃんは前にもまして笑顔が輝いていた。子供達が来てくれるようになって嬉しいのかも。


「気にするでない。それにしても子供達が多いの」


「あのバーチ○ロン大会から客が増えてなぁ。小宮ちゃんも子供達連れて来てくれるから毎日盛況だよ」


「駄菓子パスが役立ってるみたいで俺も嬉しいよ」


「時に、みーちゃんはやったことあるかの? バーチ○ロン」


「無いに決まってるじゃない」


「じゃったら……練習してから1つ勝負せんか?」


「え? 何の勝負よ?」


「前から思っておったのじゃが、ウチらは姉妹みたいな物じゃろ? どちらが姉でどちらが妹か……白黒ハッキリ付けるのじゃ」


「勝負……? アンタにだけはお姉ちゃんとか言いたく無いんだけど」


「ウチだってみーちゃんのことをお姉ちゃんなどと呼びたくは無いのじゃ!」


「おいおい。何ケンカしてんだよ2人とも。別にそんなことどうでもいいだろ?」


「どうでも良くないわ!」

「どうでも良くないのじゃ!」


 怖えぇ……めっちゃキレてくるじゃん。



 2人がバーチ○ロンで対戦を始める。やることが無いので後ろのベンチからそれを眺めた。


 カノガミは素人だけどなんだかんだで大会出たりしてるし、優勢だな。最初に何回か練習していたとしてもやっぱりみーちゃんが不利だ。



 ……。



 でも、アレだな。2本のスティックをガチャガチャ動かすカノガミに対して、必要最低限の動きしか取らないみーちゃん。


 操作する機体もカノガミが高機動で見た目も可愛いフェイ・イェ○。対してみーちゃんは防御力重視のゴツいライデ○。


 ……。


 なんだか正反対の2人だよなぁ。



「しゃあああああっ!! ウチの勝ちじゃあああ!」


 カノガミがスティックを持ちながら飛び跳ねる。


「まだ1戦取っただけでしょ? 調子に乗らないで」



 次の1戦。



 コツを掴んだみーちゃんは無駄が多いカノガミの機体を狙い撃ちしていた。


「あああああぁぁ! ウチのフェイ・イェ○があああああ!?」


「……よし」


 みーちゃんが小さくガッツポーズする。


 カノガミの機体に爆発するエフェクトが入る。みーちゃんの勝利だ。


 それにしても、カノガミうるせぇなぁ。勝っても負けても叫んでやがる。周りの小学生がちょっとビビってるぞ……。



 そして、最終戦。白熱した戦いを続けた結果……紙一重の差で。



 カノガミの、勝利で終わった。




「勝ちじゃああああああ!!!」



 カノガミが店内を走り回る。



「……」



 みーちゃんは何も言わず、ただ無言で筐体に座っていた。



「約束通り言ってもらおうかの、ホレ。早く言うのじゃみーちゃん?」



「ぐっ……!?」



「ん? 聞こえんなぁ〜? ホレホレ妹よ。早くウチのことを呼ぶがよい。『お姉ちゃん』と。ホレホレ〜」


 勝ち誇ったカノガミがみーちゃんの周りをチョロチョロ動き回る。みーちゃんは、悔しそうに唇を噛み締めた。


「これ! カノ子カノガミちゃん! 幼い子をイジメるのはやめなさい!」


 さっきまでレジ対応をしていた紺田の爺ちゃんがカノガミを注意した。



「えぇ……!? 幼い子って……みーちゃんじゃぞ?」



 あ、そうか。



 事情を知らない人から見たら、そりゃあ大人のお姉さんが幼い子をイジメてるように見えるな。


「お嬢ちゃん。あのお姉さんが大人気無いだけだから気にする必要ないよ」


「私は、気にしてないわ……」


「そうかい。お嬢ちゃんの方がよっぽど大人だねぇ」


 紺田の爺ちゃんはそう言うと、みーちゃんの頭を撫で、ドリンク模様のラムネ菓子を1つ渡した。


「これ何?」


「ま、ワシからのサービスだよ。ゆっくりしていきなさい」


「あ、ありがとう」


 紺田の爺ちゃんは店の奥へと戻っていった。


「えぇ!? ウチが勝ったのにぃ!? みーちゃんばっかりズルいのじゃ!!」


「はは……精神的にはどっちが歳上かハッキリしたな……」

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