第76.5話

 師匠と出会って1ヶ月が経った。



「う"っお"っお"……」


「弟子。変な声出すんじゃないデス」


「だ、だって……やっぱりキツいんですよ……」


 日常生活も筋トレもこの重量のリュックを背負いながらこなすなんて、想像を超えていた。


 師匠から「修行に集中する為にリュックの中を見るな」と言われてるから、ペットボトルが何本中に入っているのかもよく分からない。


 1番キツいのはこの状態のまま師匠の攻撃を避ける修行だ。


 師匠が問答無用で力を使って石を飛ばして来るから、ケガが絶えない。その度に師匠が処置してくれるけど……。


「水の力の修行は厳しいと伝えマシタよね?」


 いや、確かに他の修行に比べたらできそうだったけど……。


「数十キロがこんなに重いなんて……」


「90キロ台までは数十キロと言えマス」


「え"!? ペットボトル何本入ってるんですか?」


「本当に聞きたいのデスか?」


「は……はい。知りたいですけど」


「190本くらいデス」


「え"っ!?」



 聞かなきゃ良かった……。



「さぁ。頑張ってテントを片付けるのデス。場所を移動しマスよ」


「どこに行くんですか?」


「川のほとりデス。明日から本格的な水の力の修行に移りマスから」


「本当ですか? やった!」


「この1ヶ月はそのリュックの重みを体に覚えさせていたのデス。水を操るにもまずは重さを覚えることが大事デスから」


「じゃあすぐに片付けますよ! うおおおおおおおおっ!!」


 ついに……っ! ついに水を操る超能力を教えてもらえるんだ!


「ふふ。やる気デスね。では私も手を貸してあげマス」


「あ"あ"っ!? 体が、めちゃくちゃ重くなった……っ!?」


 な、なんだこの力!? 1歩足を前に出すだけでも体がふらつく。立ってられないぞ!?


「私ので修行の練度を高めてあげたのデス」


「お、重い……潰されるぅぅ!?」


「ほら、さっさと片付けるのデスよ」


「鬼ですか!?」


「鬼とはなんデスか!?」



「あ"っ!?」

「あ」


「ちょっ!? 体が地面に埋まってくんですけど!?」



「力をかけすぎマシタ……」



「助けてええ"え"え"」

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