マジ!バトル!!なのじゃ!

第77話 1/3

「いや、驚いたよ。外輪君が髪を伸ばしてるなんて」


 タコス屋で師匠にメルトコアなんとかブリトーとかいうのを散々奢らされた後、店の外に出ると、外輪準に声をかけられた。


 まさかライバルから来てくれるなんて。僕は運がいい。


 そのまま、外輪君に連れられて高速道路近くの公園へとやって来た。


「中々良い所を知ってるね。ここなら人通りもほとんど無いし、全力で戦える」


「先輩。俺の話を聞いてもらえませんか?」


 外輪君が悲しげな顔をした。そんな顔するなんて何を言うつもりなんだ? 少し気になる。


 けど……。


 今は関係無い。いずれにせよ、外輪君に僕の全力をぶつけない限りは素直に話を聞く気にもならないだろう。


「いいよ。この勝負が終わった後だったらね!」


「やっぱりこうなりますよね……」


 外輪君が構える。その姿から分かる。とんでもない力の持ち主だと。



 ……。



 髪が伸びているのもいいじゃないか。



 ……。



 強敵感があって。



 あぁ……楽しみだ。この時の為に僕はずっと……。



「弟子。決闘の前に私が話してもいいデスか?」


「え? いいですよ」


「そこのお前。と様子が違いマスね。それに、はどうしたのデスか?」



 ん?


 師匠は何を言っているんだ?



「な……っ!? リープしたのに!? 改変前の記憶があるのか!?」



 外輪君は驚愕していた。



 2人が何を言ってるか全然分からない……。



「あぁ……そういうことデスか。1週間前から同じことを繰り返している気がしていたのデスが」


 師匠が納得したように何度か頷き、ニヤリと笑った。


「弟子。アドバイスをくれてやるデス。お前の宿敵はデス」



 じ、時間……? それって……。



「私が教えた能力者デス。私が出会った中では『3つく€°¥<=+ア$/°ー〆°』がほんの少し操れた程度……お前に勝ち目は無いデス」



 な、なんて言ったんだ? でも、分かるのはとんでもない能力ってことだ……。



「師匠……僕は嬉しいんです。ライバルがそんな力を持っていることが!」


リュックを放り投げる。中から大量のペットボトルが散らばった。


「……そうデスか。ならば……がんばるのデスよ」


 師匠が優しげな顔で僕のことを見つめてくれる。


 ちょっとだけ、胸が熱くなるような気がすした。



 ペットボトルの中にある水へと力を送り、空中に浮かせる。



「最初から全力で行くぞおおおお!!」


「俺も全力で行きます!」



 考えろ。相手は時間の能力者……。



 だったらやることはするはず!!


 それを超える速度を出すしかない!!


 手を握り閉め、浮いているペットボトル達にを送る。


 そして、全てのペットボトルを破裂させ、中からだけを空中に集める。



 空中にドラム缶ほどのが現れる。



「極力傷付けない為にんだけど……君には効かないだろうからね。使。こちらは殺す気で行く!!」



 ん?



 なんだ、あの外輪君の顔?



 真顔のような、無のような表情……。



 いや、僕を惑わせる作戦かもしれない!



 指先を外輪君に向ける。狙いは付けた。

後は最速でするだけ。



「食らえええええええ!!!」



 高音が公園内に響き渡り、水球からレーザーのように極細の水が発射される。


 それは下から上へと扇形に移動し、直線上の物体……


 水が通りすぎた後、大地は割れ、切り裂かれた遊具は音を立てて崩れ去った。


 


 どうだ……外輪君は!?



 ん?



 なぜ微動だにしていない!?



 外輪君は逃げも隠れもせず、ただその場に立ち尽くしていた。


「そ、先輩。今の……俺にんですよね?」



 な!?



 殺気が無かったのを読まれていた!?



「悪かったよ……最初に牽制してしまうのは僕の悪いクセだね……今度は!」



「……っ!?」



 僕が言った瞬間、外輪君が目の前から



「どこだ!?」



 すると、一瞬にして僕の外輪君が現れる。そして、その長い髪が動き、僕を締め上げた。



 な、なんだよこれ……!? どうやってるんだ!?



「離せえええぇぇぇ!?」


「絶対嫌だ!!!」



 なんだとぉぉ!? コイツ……僕を巻き添えに自爆でもするつもりか!? それとも、このまま僕を締め殺す気か!?



 だったらこっちもなりふり構ってられない!!



 水球から自分へと狙いを定める。相打ち覚悟でレーザーを撃つしかない。


「離せっ!!」


 水球からレーザーがこちらへと向かって来る。


 外輪君は僕を突き放して距離を取った。



 そのまま。



 長い髪をムチのようにしならせ、僕を吹き飛ばした。


「……ぐっ!?」


 吹き飛ばされた僕は地面に強かに体を打ちつけた。



 レーザーが僕らの間を通りすぎ、滑り台が真っ二つになる。



「危ねえだろおおぉぉぉ!! 死んだらどうするんだよ!?」



 外輪君が叫ぶ。



「そ、そうか……僕の身を案じてくれたんだね……君は優しいな」


「は? いや……案じてはいましたけど……」


「だけどそんな気遣いは不要だ!」


 外輪君へ向けて両手を伸ばす。



 今度こそ、当てる。


「今度は連続で行くぞ!!」




 水球からレーザーを10連続で発射する。



 しかし。



 当たらない。



 レーザーを向かわせた瞬間、既にレーザーの直線上にはいない。



 外輪君が走ったかと思うと、別の場所に立っている。



 なんだよ!?



 瞬間移動か? それともしているとでも言うのか?



「す、すごい……これが時間の能力者……」



「先輩。俺には当たりませんよ。降参ですか?」



 外輪準は、長い髪を揺らしながら余裕の笑みを浮かべた。

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