第78話 2/3

 なんだよこれええええぇぇぇ!?


 ペットボトルじゃねぇのかよ!? 何あのレーザーみたいなヤツ!? 殺す気満々じゃん!?


 しかも先輩、俺を道連れに死のうとするし!?


 自分をしまくってなんとか避けてるけど、キツイすぎだろ!!



 10連続レーザーとかなんだよ!? あんなの当たったら細切れになるだろぉぉぉ!?



 ……。


 なんとか先輩の戦意無くせないかな……。



「先輩。俺には当たりませんよ。降参ですか?」


 必死で余裕を装ってみる。さっきから心臓が尋常じゃないくらいバクバクしてる。これ、絶対カノガミもビビってるだろ。


 先輩付き飛ばした時とか、勝手に髪動いたしな……。


「は、はは……僕の全力を全て避けられるなんて……」



 先輩は力無く項垂れた。



 おぉ……!? これは、助かるか!? 俺!?



「弟子! お前の全力はそんな物なのデスか!? この日の為に辛い日々を乗り越えてきたのデスよね!?」



 え?



「師匠……そうだ。今の僕の力は……僕だけの物じゃない! 僕に技を教えてくれた師匠の為に。僕は……最後まで戦う!!」



 え? え?



「私のことをそんなにも……分かりマシタ。私は、あなたの闘いを最後まで見届けマス」



 え? え? え?


 

 2人が見つめ合う。そこには、部外者の俺には決して入り込む余地のない絆のような物を感じた。



 お、俺が……なんか……こう……。



 あ、悪役……みたいな感じがするんだけど……。



「見ていて下さい師匠!! 僕は……あなたに教わったこの技を使います!! たとえ、でも!!」



 えええええ!? やめてえええぇぇぇ!?



「行くぞおおおぉぉぉ! 外輪君!」



 水球からレーザーが放たれる。



 うわ!? また加速して避け……。



 が。



 レーザーは俺を通り過ぎ、公園にあったを破壊した。




 破壊された水道から、噴水のように水が舞い上がる。



 先輩が両手を上げると、その水は空中の水球へと吸収され、水球が形を変えていく。



 水球がへと。徐々に変化していく。



 そして、それは俺の頭上に漂うとなった。



「で、でけええええぇぇぇ!?」



「ど、どうだい……っ!? この水柱を地面に叩き付けたらどうなる、か……。君には分かるかい?」


 水柱はかなりの力を使うのか、先輩は相当苦しそうだ。


 地面に叩きつけたら? こんな量の水が押し寄せたら……。


「わ、分かったみたいだね。小さな津波が起きる。全方位攻撃だ。君に避けられるかい?  そ、その前に君が柱の水圧で潰されるかもね……」


 先輩が勢いよく両手を振り下ろす。



「これが僕の……最強技だあああああ!!」



 水柱が俺に向かって落ちてくる。



「う、うわあああああああああ!?」



 どうしようリープして逃げるか? でも、どれくらいリープする? それとも加速して避け、あ、でも津波が来るから。え? え? あ、頭が回らない! どうするどうするどうする!?




 もう目の前に水柱が迫ってる!?




 もうダメだ!?




 咄嗟に手を伸ばした。




 一瞬。




 ウラ秋菜の言葉が頭をよぎる。



「お前らのやってる技はな。んだ。文字通り。それは物体の形状変化すらも許さないってことだ」



 形状変化を許さない……。



 先輩は水柱を作った。柱にはがある。俺にこの水柱全部の時を止めることはできないけど……平面だけだったら……。



 時間がゆっくりに感じる。



 伸ばした手を水柱のだけに集中させる。



 そして、底面、厚さ1mmにも満たない範囲の水の時を止めた。



 時止めされた底面に、上の水がき止められ、面の外へと逃げようとする。それに合わせて少しずつ、時止めの面を広げていく。


 水をき止める面が広くなっていく。



 広くなっていくにつれて俺への負荷も大きくなっていく。




 全身に重しが追加されていくような……そんな感覚。



「ぐう……ぐっ……!?」



 い、息まで苦しくなってきた……。



「う、嘘だろ!? なんで水柱が落ちない!? なんで形まで変わっているんだ!?」



 先輩の声が聞こえる。



 そ、そうやって、み……見えてるんだ……。



 そして、自分の頭上、薄さ1mmに満たない水のは、公園を包み込むほどの広さへと広がった。


 水の天井の外へ水が溢れ出す。公園の外へと流れていく。



 気が遠くなるような時間時止めを続ける。



 すると、溢れ落ちる水の流れが止まった。



 受け流せた……のか?



 全身の力が抜ける。



 公園全体に広がった水の天井が落ちる。



 それは津波を起こすことはなく……俺達を濡らすだけだった。



◇◇◇


「弟子。お前の技は全て見切られマシタ。お前の負けデス」


「師匠……」


 師匠さんが、座り込んでいる先輩へと近づいていく。


「おりゃっ!」


師匠さんが先輩の頬を両手で引っ張った。


「いはひっ!? いはひへすひひょう!!」


「私は言いマシタね? だと。お前などが簡単に勝てるわけないデス!」


「痛感しました……」



「でも……良くやったと言ってあげマス」


 女性が先輩の頭を撫でた。


「お前は良くやりマシタ。驕らず良く修行し、立派に戦いマシタ。私の自慢の弟子デスよ」


「はい……」


 下を向いていた先輩から水の粒が落ちる。


 それはやがて大きくなっていき、嗚咽も混じっていく。


「お前は強くなりマス。これから私の全てを伝えるのデスから」


「はい……はい……っ!」


 先輩は声を上げて泣いた。


 その姿を見ていると……なんだか俺も、胸が苦しくなるような感じがした。

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