第79話 3/3

「先輩……すみませんでした!」

「す、すまんかったのじゃ!!」


 戦いの後、先輩に全てを話した。俺には力が無いこと、カノガミがやったこと。俺が……今日まで正直に話さなかったこと。



 全てを。



 正直、殴られてもおかしくないと思った。でも、返ってきた反応は意外なものだった。



「いや、君と戦ったから分かるよ。君とカノガミさんは2人で1人。君は無能力じゃないさ」


 先輩が公園のブランコに座る。


「お、怒らないんですか……?」


「怒る? どうしてだい?」



 先輩はブランコをゆっくり揺らしながら話し出した。



「昔はね。自分のこの力が嫌だった。最初はスプーンを曲げるなんて大したことない力だったけど……それでも、親からも友人からも忌避の目で見られた。だから力を隠して生きてきた」

 

 先輩は超能力のことをそんな風に思っていたのか……。


「だけど、あの日君を見た。空を飛ぶ君を。例えそれがカノガミさんの力だったとしても、君のおかげで初めて自分を肯定できた気がしたんだ。それに違いは無いからね」


「先輩……」


「ま、君達のせいで恥ずかしい目にあったけど」


「うわああぁぁぁ! すみませぇぇん!?」

「すまんかったのじゃあああああああ!?」


 先輩がこちらへと歩いて来る。


「冗談だよ。でも、君達が本当に強くて良かった」


 先輩が真っ直ぐ俺を見つめた。その瞳は初めて出会った時と違う気がする。


 俺が先輩のことを知ったからなのか、先輩が師匠さんと出会ったからなのか分からないけど……。


「ありがとう。外輪君。僕の全力を正面から受け止めてくれて」


「いや、俺は必死だっただけで……」


「これからも君をライバルと呼んでいいかい? また、僕と戦ってくれるかい?」


「もちろんですよ! 俺も、もっと強くなります。カノガミと一緒に」


 先輩とゆっくりと、だけどしっかりと握手した。


「で、でも次は殺しにくる技は使わないで下さいね」


「どうだろう? 使うかも」


「うわあああぁぁぁ!? 勘弁してええぇぇ!?」


「はは。冗談だよ」


 先輩が笑った。



「青春じゃのぉ〜」



「おい。貴様が原因デスよ。何を関係無いような顔をしているのデスか?」


「じゃ、じゃってぇ……」


 カノガミが師匠さんに突っ込まれてる。なんかあの人、圧が凄いな……。


「ところで、お前はと言いマシたね?」


「ん? ああそうじゃが? 厳密には片割れじゃけど」


「私達の国では時間の力は〆○%×+&+の物のはずデス。なぜ貴様がそれを自在に操れるのデスか?」


「あ! そうだ! 師匠さん一体どこの国出身なんですか? 全然言葉分からないですよ」


「私デスか? 私は・×=<|\@出身デス」


「いや……それが何と言ってるか分からないんじゃが……」


「僕も師匠の素性全然知らないな。聞いても分からなかったし」


「ん〜確かに。こう言葉が通じないのは不便デスね。極力この国の言葉に置き換えるよう翻訳設定をイジってみるのデス」



「翻訳ってなんじゃ?」


「設定ってなんだ?」



 師匠さんはそう言うと、手をかざす。すると、空中にが浮かび上がった。



「「「は?」」」



「ここの固有名詞か……これを、置き換えに設定して……んん〜やっぱり難しいデスね……ちょっと強引な感じデスが、これで……どうデショウ?」


 師匠さんが金の文字をなんか弄ってる。


「よし」


 師匠さんが手を払うように動かすと、金色の文字は消えた。


「え? な、なんですか? 今の……?」


 師匠さんは確認するように何度か咳払いした。


「んん〜通じマスかね? デス」



「「「え"」」」



 ま、魔法……?



「そ、そんなファンタジーみたいなことある訳ないじゃろ〜」


「そ、そうだよな。翻訳の関係だよな……」



 翻訳? 翻訳ってなんだよ?



「し、師匠? 僕に教えてくれたのって……」


デスが? この国の人間は使えないと言うから驚きマシタが、そこの2人は最上位魔法を使うし、よく分からないデス」



「そういや先輩が攻撃してたのってレーザーみたいだったよな……明らかに超能力の域を超えてるだろ……」


「巨大な水の柱も出しておったのじゃ……」


「え? 僕は魔法を使っていたのか……?」



「あ、あの、師匠さんの出身をもう一度教えて貰えますか?」


「あぁ。そうデシタ。私はの出身デス」



「「「……」」」



「ちなみに、師匠の職業は……?」



「職業? 私はデスが?」



「……」



「ど、ドラゴンスレイヤーってぇ……のぅジュン?」


「いや〜ははは。だって、なあ? 武器とかも持って無いし……」



「武器が見たいのデスか?」



 師匠さんはおもむろに、右手からを取り出した。


「私の愛剣。重力魔法剣デス」



「……」

「……」



「そ、そんなの、手品師でもできるじゃろぉ〜」


「そ、そうだよな……黒くて派手なフツーの剣だしな……」


 俺とカノガミは笑って誤魔化そうとした。



 が。



 師匠さんが剣で地面を突き刺す。



 すると、俺達が立っている地面が割れて、1m


「この剣は触れた物の重力を自在に操れマス。私はに特性があるのデス」



「「「ええ"ええ"ぇぇぇぇ!?」」」

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