マジ?ファンタジー!?なのじゃ!

第80話 1/3

「「助けてえぇぇぇ!! みーちゃああぁぁん!?」」


 急いで比良坂家を訪ねると、ドアからみーちゃんが顔を出した。


「どうしたの2人とも。もしかしてまた負けたの? 何よせっかく特訓してあげたのに」


「違うんだよぉぉぉぉ!!」

「違うのじゃあぁぁぁ!!」


「じゃあ何? というかそこの金髪チビ女と髪ウネウネの人は誰? なんでわざわざウチまで連れて来たのよ?」


「金髪チビ女……」

「髪ウネウネ……」


「「実は……」」



 ……。



「なんですってええええぇぇぇ!?」



◇◇◇


「え〜、ということで、今から緊急会議を始めます♪」


 小宮の嬉しそうな声が部室に響いた。


「なんで嬉しそうなんだよ?」


「だってぇ〜やっとこういう事態に絡めるしぃ〜」


「はぁ……」


「あ♪ ちなみに発言は絞って行うように! ただでさえ人数多いんだから混乱しちゃうでしょ?」


「誰が混乱するんだよ?」


「ソトッちには関係無いでしょ♪」


「はぁ……」


 周りを見回すと、カノガミにみーちゃん、夏樹、オモテ秋菜ちゃん、比良坂さん、猫田先生、蝶野先輩に師匠さんか……確かに多いな。狭い部室がさらに狭く感じる。


「あれ? そういや犬山は?」


「犬山君はね〜ムフフ〜♪」


「なんだよその意味深な笑みは?」


「方内先輩と旅行だよん♪」


「旅行? 犬山と洋子が? アイツらそんな関係じゃったっけ?」


「な〜んかね。犬山君は泣きながら連れて行かれたよ〜」


「あ、私も見てたよぉ。助けを求められたんだけど……方内先輩ってほら、ちょっと強引だし……」


 比良坂さんが当時の状況を語る。もう、すぐ想像できるな。その様子が。


「犬山……可哀想に」


 方内先輩を知ってる全員が何とも言えない顔をした。



「それでは気を取り直して! 私、小宮茉莉こみやまつりが師匠さんに質問させて頂きます!」


「質問? なんデスか?」


「お名前は?」


「なんで名前からなんだよ〜! 他にもっと聞くことあるだろ!」

「お兄様! 冷静な判断力、素晴らしいです!」


「え? そうかな?」


 オモテ秋菜ちゃんに褒められた夏樹は照れ臭そうに頭を掻いた。


「なっつんは分かってないなぁ〜。こういうのは最初が大事! いつまでもとは呼べないでしょ?」


「そ、そんなもんか」

「お兄様! 芦屋家当主として恥ずかしくない発言をして下さい!」


「え"」


 秋菜ちゃんの手のひら返しすげぇなおい。夏樹涙目になってるじゃん……。



「まぁいいデス。私の名前はコホン……ちゃんと通じマスか? 『レイラ・リラ・レイラ』デス」



「え? レイラ……なんだって?」

「言いにくい名前じゃのぉ」

「師匠も言いにくい名前じゃないですか……」


「失礼デスねお前達……私の国の言葉でという意味デス。社交の場では必ず褒められるのデスよ。『あら、身分の割にいいお名前ですね♪』と」



 それは褒められているのか?



「ご年齢は?」


「年齢……デスか? 19歳デス」


「19歳!? なんて素敵な響きなんだ!」

「お兄様! 鼻の下を伸ばすのはやめて下さい!」

「う、ウチはどうしたらいいのじゃ? 心は14歳じゃから……」

「お前なぁ〜ややこしいこと言い出すのやめろよ」

「弟子! 『意外に歳いってるな』という顔をしマシタね!?」

「いだだだだ!? そんなこと思ってないですよ!?」

「それはどういう意味デスか!?」

「理不尽すぎるぅぅぅ!?」



「静粛に〜」



 小宮は、みんなが静かになるまで次の質問をしなかった。


 なんとなく、みんな「やってしまった」という顔をしていた。




「それではレイラさん♪ ここに来た時のことを教えて下さい」



 小宮がマイクを向けるように師匠さ……レイラさんに手を向けた。



「この国に来た時のことデスね……あれは確か……」



 やっぱり、と関係あるんだよな……俺達のせいだよなぁ……。




 部屋中が静まり返る。みんな、レイラさんの口から出る言葉を固唾を飲んで待っていた。




「私が3と戦っていた時のことデス。あの日はすごい雨が降っていて……」






「ちょ、ちょっと! いきなりぶっ込んで来たせいで全然頭に入らないんだけど!」


 みーちゃんが机を叩いた。



「知らないのデスか? 3つ首竜イアク・ザード。古代ウェヌス国を3日間で滅ぼし、千の魔法を操る。その翼は開くと世界を覆い尽くし、首はそれぞれ苦痛・苦悩・死を表すという伝説が……」



「なんだその設定は!?」


 いつの間に変わっていたのか、ウラ秋菜が声を荒げた。



「おま、なんで急に出て来たんだよ?」


「あ、燃える設定が聞こえたからつい」


「燃えるってなんだよおおおおぉ!?」


「ウラ秋菜はそこそこ中2病じゃったのぉ」


「ふふふ。退治とは、まるで夢物語のようでござる。拙者が居ればその頭、全て落として晒し首に……」


 猫田先生は目を見開いてヒトキリ丸をペロペロ舐めた。


「ね、猫田先生……怖いよぉ……」


 比良坂さんが怯えたように猫田先生から距離をとる。


「ま、舞殿……? うにゃあああん♡ 怖くないでござるよぉ♡」


 猫田先生は慌てて猫らしい愛くるしい動きで取り繕おうとしていた。


「必死ね。猫田……」

「おい!? 猫が喋ったデス!?」

「あ、レイラの国でも猫は喋らんのかのぉ」

「僕はもう何が起こっても驚かないよ……」



「静粛に〜!!」



 小宮が机をバンバン叩きながら言う。いつもと違う小宮の圧にみんな黙り込んでしまった。


 静かになったのを確認すると、小宮はレイラさんの方をチラリと見る。レイラさんは頷いて再び話し始めた。


「とはいえ、それはただの伝説デス。実際に対峙しマシタが、大きさもそこそこ。ただの3だったのデス。まぁ魔法が若干厄介ではありマシタが……」


「え?」


「どうしたのじゃジュン? オヌシまで目を輝かせて」


「それってキングギ……」


「おい外輪〜! そこは昭和か平成かハッキリさせる所だろ!」

「夏樹は判別着くのかよ? おれの見立てでは……」

「そっち方面の話は全然分からんのじゃ」

「お兄様! 芦屋家当主として恥ずかしくない発言をだな……」

「ウラ秋菜までそれ言うのかよ……」

「お、お兄様……? 私とオモテはいつでもお兄様の将来を心配して……」 

「おい!? この娘よく見たらさっきと別人じゃないデスか!?」

「あ、レイラの世界でも2重人格者は珍しいのね……」

「芦屋君。僕のいない間に一体何が……?」

「舞殿! 首筋をカリカリするのはやめるでござるぅぅ!?」

「猫田先生かわいいぃぃぃ♡」



「もう! いちいち反応してたら先に進まないでしょ! みんな一旦話を聞く! レイラさん達は何があっても一旦受け入れる! 聞き終わってから質問してね!!!!」



 小宮にめっちゃ怒られた……。

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