第81話 2/3

 そう。私は3つ首竜イアク・ザードと戦っていたのデス。


 国からの直々の命令で、近隣の村が被害に遭ったとのことデシタ。


 私は、奴に挑みマシタ。


 私が到着した時、複数の兵士が既にやられていたのデス。


 豪雨の中での戦闘は、奴の電撃に有利だったのかもしれマセン。弱い魔法しか使えない下位の兵士達では、せいぜい村から押し出すことしかできなかったようデシタ。


 私は、風と水の力を掛け合わせ、防御魔法を構築しマシタ。奴の電撃はそれでやっと攻略できたのデス。


 後は自前の剣で1頭ずつ、確実に首を落とし、最後の1頭まで追い詰めマシタ。


 そして、重力魔法で奴を抑えつけ、最後の一撃を加えようとした時デス。


 奴は、を空へと放ちマシタ。


 私はヤツを逃すまいと、咄嗟に竜へしがみついたのデス。


 転移の瞬間、私はに包まれました。


 そして目を覚ますと、この国の森の中にいたのデス。



◇◇◇


「やっぱり……赤い光……」


 みーちゃんが呟いた。


「分かるか? みーちゃん?」


「恐らくだけど、ラセンリープで2つの世界が融合した波……それが並行世界全体に及んだ。そのウネリによって転移魔法の接続先がこちら側になってしまったのね」


「ウネリが及んだ? なんでそれが世界を繋げることになんだよ?」


「お兄ちゃんはΩオメガっていう文字知ってる?」


 みーちゃんが部室のホワイトボードに『-』と『Ω』を書いた。


「その字なら見たことあるよ」


「普段ならこの『-』の端と端に世界があるとするでしょ? でも、波が起きると『Ω』の根元のように世界が近づくの」


 みーちゃんが『Ω』の根元、2箇所に赤い点を打つ。


「この瞬間、転移魔法を展開したのよ。その竜は。多分、転移先をとでもイメージしたんじゃない?」


「ううん分かったような……分からないような……」


「本来世界は立体だから、この例は適切ではないのだけど、極力分かりやすくしてみたわ」


「ウチは理解できたのじゃ!」


 カノガミが胸を張った。


「いや、お前の専門ジャンルってだけだろ!」


「はーい。じゃ、質問ある人は挙手♪」


 小宮の声に真っ先に手を挙げたのは、レイラさんだった。


「すみマセン。さっきから何を言っているのデスか? 全く理解できないのデスが?」



「ま、そうなりますよねぇ〜♪」



 小宮が懇切丁寧に事の経緯から何からレイラさんへ説明する。



 ……。



「すげぇ分かりやすいな」


「何話分を端折っとるのじゃ小宮は?」



 ……。



 説明が終わるとレイラさんは顔が真っ青だった。


「な……ここが別の世界だと言うのデスか!?」


「そうね。あなたはしたということになるの」


 みーちゃんは目を伏せながら言った。


「じゃ、じゃあ……もう国へは……?」


「帰れない。ただ、あなたが帰りたいと望むなら、私が全力を尽くして方法を探すわ」



「俺も探すよ!」

「もちろんウチもじゃ!」


 レイラさんが1人で何事かを呟く。


「し、師匠……大丈夫ですか?」


 蝶野先輩が心配そうにレイラさんを見た。



 そうだよな。いきなり別世界に飛ばされて「帰れない」とか言われたらショックだよな、今日はもう解散して後日相談した方が……。



「帰らなくても大丈夫デス」



 レイラさんはあっけらかんとした表情で言った。



「「「「「ええええぇぇぇ!?」」」」」



「ど、どうしてでござるか!?」


「私はデスね。国に脅されてドラゴンスレイヤーやっていたのデス」


「え? 脅されてって何を?」


「シュバルツハルト王国出身って言いマシタよね?」


「言ってたのじゃ」


「今仕えてるのはヴァイスヘイム帝国なんデス」



「ん?」



私の国シュバルツハルト、ヴァイスヘイムに滅ぼされたのデス。奴隷兵としてこき使われていたのデスよ。私は魔力適正高かったから」


「そんな重い設定を淡々と語るなよ……」


 ウラ秋菜が呆れるように言った。



 いや、お前が言うなよ。



「え? じゃあ単身ドラゴンと戦ったって言うのは?」



「仲間いなかったデスから、私」



「え? なんで仲間いないの?」



「捨て駒だったデスから、私」



「え? 家族はおらんのかの?」



「家族はみんな○されマシタ。ヴァイスヘイムに」



「「「「「設定が重い……」」」」」



「あ! じゃあこれも、もう外せマスね!」


 レイラさんは腕に巻いていたブレスレットを外して床に叩きつけた。


「それなんですか?」


 小宮が不思議そうに言った。


「逃げ出して一定期間経ったら死ぬ・逆らったら死ぬ・外そうとすれば死ぬという呪いの腕輪デス」



 お、重すぎる……っ!!



「ここに転移した瞬間から、もう呪いは消えていたようデスね!」


 レイラさんが嬉しそうに腕を回す。


「え? じゃあ蝶野先輩の修行を見てたのは?」


「最後に弟子に全てを伝授して死ぬのも悪く無いと思いマシタ」



「し"し"ょ"う"……」



 先輩は号泣していた。



「うおおお!! 私は自由デエエエス!!」



「いだだだだだ!? 師匠!? 力!! 力強すぎますよ!!」



 レイラさんは満面の笑みで蝶野先輩を抱きしめた。



 俺達は涙が止まらなかった。

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