第82話 3/3

「まぁ、レイラが戻りたく無いと言うなら1つ問題解決ね。でも……」


「みーちゃん? 他にも何かあるの?」


 比良坂さんがみーちゃんを見つめる。


「気になるのは転移魔法を発動した竜ね。レイラだけがこちらに来て竜がいないのはおかしいわ」


「それは私も感じていマシタ。ただ。転移した日からヤツを探してはいたのデスが、全く気配がしなかったデス。竜の気配は強力。相手が寝ていたとしても感知できないはずがないのデス」


 レイラさんが腕を組む。


「師匠と出会ったのは黒部山くろぶさんだから、竜がいるならあの辺りに潜んでると思うよ」


「黒部山……蝶野はあんな所で修行しておったのじゃな」


「だって……万が一同級生に出会ったら気まずいし……」


「恥ずかしがりやじゃのぉ〜」


「いや、恥ずかしいとかじゃないだろ」


「傷付いて首は1つ……会うとマズイ……気配が無い」


 夏樹が何か独り言を呟いていた。


「どうした夏樹? なんか思うことでもあるのか?」


「いや、ゲームとかでさ、傷付いた敵が逃げるイベントってあるじゃん? そういう時ってどうするか考えてた」


「お、さすがゲーム脳」


「外輪準。お兄様は真剣に考えているんだぞ。バカにすると言うなら……生まれる前からやり直させてやろうか?」


「ひいいぃぃぃ!? お前が言うとシャレにならないからやめてぇぇぇ!?」


「ん? ……?」


 夏樹が急にウラ秋菜を見た。


「いや、あの、お兄様……? 比喩で言っただけで……別にタイムリープで、とかそういう意味は無い、ので……怒らないで」


「焦るくらいなら言わなきゃいいのよ」


「う、ううううるさいな! クソガキが!」


「違うって! ってさ! アレじゃないか!?」


 夏樹が立ち上がる。



 あ!


 俺も分かった!!



「なんじゃ?」



「「だ!!!」」



「卵から……? そんなことってあるの?」


「ふっふっふ……みーちゃん。よくあるんだよそういうことがね。フィクションだと」


 夏樹が不敵に笑う。


「フィクションって……」


「確かに! ジュンのマンガにもあったの! 卵まで退化してタイムマシンに乗って……」


「ちょ、ちょっと違うけど確かにそういうパターンもあるな」


「どうじゃレイラ? そういう可能性は考えられるかの?」


「確かに。伝説などで聞いたことはありマス。流石に卵からは気配はしないと思いマスし。だけど、それでも見つからないのはおかしいデス。私も結構歩き回って探したのデスよ?」


 ふぅん……ドラゴンの卵って多分デカイよな? そんなに探し回っても見つからないって変だよなぁ。山の中とはいえ、歩いてたら1発で見つけそうなもんだろ。


 

 歩いて……。



「あ!」



「どうしたのじゃ? ジュン?」


「カノガミが今言ってたマンガ! 卵になって、タイムマシンに乗った後、セ○はどうしてた?」


「え? どうしてたって成体になるまでで……」


「そう! こういうことだ! レイラさんと戦ったイアク・ザードは深く傷付いた。転移魔法で逃げようとしたけど、レイラさんも一緒に転移してしまった。だから、隠れるために地中に潜ったんだ! 卵まで戻って傷を治す為に!」


「つまり、イアク・ザードは今……」



 レイラさんが俺を見つめる。



黒部山くろぶさんの地中にいる!」

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