竜の卵を探せ!!なのじゃ!

第83話 1/2

 翌日。早朝。


 小宮と比良坂さん、夏樹を除いて俺達は黒部山へと到着した。


 今回夏樹が色々と手配してくれた。連絡用インカムから住民の避難から……この白水しらみずだと芦屋あしや家の影響力半端無いな。


『あーあー。聞こえますか〜ソトッち』


 耳に付けたインカムから小宮の声が聞こえる。


「あぁ。聞こえるぜ」


黒部山くろぶさん中腹Y209ポイントに高熱源反応を確認!!』


「お前……そんなの分かるのかよ?」


『言ってみただけ〜』


「言っただけかいっ!!」


『でもね。中腹部近辺に住んでる橋本はしもとさん、留山とめやまさん、加川かがわさんという方に電話で聞き込みしたら、数ヶ月前から小刻みな地震が多いと言ってるの。時期もちょうどピッタリ。3件の家を結んだ中心部が今朝地図にマークした所ね』


「わあってるよ。変な看板が目印だろ? そこに向かう」


「……気を付けてね。ソトッち」


「大丈夫だって! 最悪タイムリープもあるし」


 小宮からの通信を切ると、他の会話が聞こえてきた。


『秋菜。ヤバそうだったらすぐ逃げろよ』


「お兄様! そんなに心配してもらえるなんて感激です!!」


 秋菜ちゃんは恍惚の表情でインカムに話していた。


「あ。」


 みるみる秋菜ちゃんの瞳が鋭くなっていく。


「お兄様。今回私は後方なので問題無い」


『お前が言うと心配なんだよ……』


 夏樹……秋菜ちゃんを必死に止めてたな。ウラ秋菜は使命感強いから「行く」の一点張りだったけど。しまいには夏樹も来るとか言い出すし大変だったな。


「ところでみーちゃん。本当に俺はで来て良かったのか?」


「ええ。その状態でしか竜のタイムリープはできないから」


 ウラ秋菜が立てた作戦。イアク・ザードの卵を発見次第、俺とみーちゃんで竜をタイムリープさせることだ。それが決まれば一瞬でカタがつく。もし、途中で目覚めてしまった場合、レイラさん達メインで討伐する。


「レイラの世界の伝説によれば、ヤツの年齢は2500歳。それだけの時間をリープさせるには私1人では難しいわ。もう1人の時のカミの力が必要よ。だけど、できないから、お兄ちゃんが緩衝材として必要なの」


 力を合わせるのに必要があるって言ってたな。確かに、2人にはがあるからなぁ……。


「頼りにしてるわねお兄ちゃん」


 みーちゃんが俺のことを見た。初めて会った時とは違って信頼してくれているような顔……それが嬉しい。


 胸の奥が暖かくなる。俺の中のカノガミも同じ気持ちなんだろうな。



「外輪君、みーちゃん。本当に師匠に影響は無いんだろうな?」


 蝶野先輩が心配そうに言った。


「大丈夫よ。レイラにはっていうのがあるから」


 今回タイムリープさせるのは別世界の存在であるイアク・ザード。みーちゃんの話によれば、それによって改変が起こるのはレイラさんの世界らしい。


 この世界にいるレイラさんも影響を受ける可能性はあったけど、彼女は過去改変に対しての防御魔法を宿している。


 効力については実際に、俺とカノガミのタイムリープの影響を受けなかったことで確認した。


「正直私もビックリよ。改変の影響を受けない人間がいるなんて」


「昔、時の精霊と契約しマシタから。時間に対する防御魔法なんて役に立たないかと思っていマシタ……高度すぎて使って来るヤツがあまりに少なかったデスし。でも、ここに来て役立つとは思わなかったデス」


「その精霊って、私達の遠い親戚だったりして」


 みーちゃんはどことなく嬉しそうだった。



◇◇◇


 地図を確認する。特徴的な看板が目印の……小宮が言っていた地点はここみたいだ。


 ウラ秋菜が周囲を見回す。近くに竜の姿が無いと分かると、双眼鏡を取り出し、首から下げた。


「まだ復活してはいないみたいだな。レイラ、重力魔法を使ってくれ」


「分かりマシタ」


 レイラさんが両手をかざすと、地響きがした。しばらくすると、地面が音を立てて割れる。


 そして、瓦礫状に固まった地面が空中に浮き始めた。


「なんだか……魔法魔法って言ってたけどさ……こうやって改めて目にすると、めちゃくちゃな力だな」


「ふふ。カミの私に言うわけ?」


 みーちゃんが笑う。


 あ。


 俺達もめちゃくちゃだったな。



「ここにはいないデスね。次はそちらをやりマス。場所を譲って欲しいデス」



 レイラさんが俺達の所へとやって来て、先ほどと同じように地面を浮かせる。


 地面を浮かせて確認しては地面を降ろす。そして、少し移動しては地面を浮かせる……それを何度も繰り返す。


 その姿をぼんやりと眺めていたら、上から声をかけられた。


「なぁ……拙者達だけで討伐に来て良かったのでござるか?」


 猫田先生は目印にしていた看板の上で丸くなっていた。


「あら。猫田は怖気付いた?」


「んなこたぁ無いでござる。警察とか役所に言わなくて良かったのかなぁと思っただけでござるよ」


「言ったわよ。でも信じてくれなかったわ」


なんて、信じるヤツいないさ。師匠に会ってなかったら僕だって信じないよ」


 先輩が肩をすくめる。



「みんな! 見つけマシタよ!」



 レイラさんの声に振り向くと……。



 そこには巨大な卵が浮いていた。

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