第91話 3/3

「い、今のなんだよ!? その玉は!?」


「コレは時間玉。時間と時間の間にはねぇ……があるの。時間の狭間って言った方が分かるかな? それを集めてね、球体に圧縮した物だよ」


「吸い込まれたイアク・ザードはどうなったんだ?」


「私の許可が降りるまで外に出られないよ。それまで永遠と時間の狭間を彷徨うの。ついでにねぇ……ふふふ」


 ノがみが意味深な笑みを浮かべた。


「な、なんだよ?」


「私のことが大好きになるように洗脳構文を無限リピートさせてるんだ♡ 出てくる頃には調教完了ってわけ」


「こ、怖え……」


「準も入ってみる? 外の時間で1時間もあれば私にベタ惚れになっちゃうよ♡」


「死んでも嫌だああああぁぁぁぁ!!」



「さーて。そろそろ遊びに……」



「ちょっ! ちょっと待てって!! カノガミとみーちゃんを……」


「え〜? また意味分かんないこと言ってるんだけどぉ」


 そ、そうだ……コイツはそもそも2人のことを知らなかったんだ……。



 ……。



 今回は、話を聞いてくれそうだしな……。



 話してみるか。



◇◇◇


「なるほどねぇ……。私が体を分けたせいで、別の人格が生まれちゃったのかぁ」


「お前はなんだと思ってたんだよ?」


「私はアメーバみたいに意識の無い存在になるだろうと思ったんだけどねぇ。ふぅん。カノガミにみーちゃんかぁ……」


「2人を返して欲しいんだ。2人とも俺達の大事な友達だから……」



「……」



「彼ノがみ」



「……



「ホントか!? ありがとう!」


 良かった。カノガミの考えは間違って無かったみたいだ。


 カノガミがなぜにこだわったのか……。


 それは、彼のがみは中の2人の影響を無意識に受けるからだ。


 マンガを読み込んだカノガミにとってフュージョンは最終的に


 そのイメージが彼ノがみに影響を与えて分離に協力的になる。彼ノがみが協力してくれることで、俺がカノガミ達を引き上げる成功率を上げる……と言っていた。



「でも今はヤダ」



「えぇ!?」


「まぁ〜私から生まれたんならぁ? 2人は私の娘みたいなもんだしぃ? 戻してあげることもやぶさかではないけどぉ? 私としてもせっかく復活したのに敵だけ倒して『はいさよなら』はねぇ〜」


「それは……まぁ……そうだけど」


「まぁ安心してよ。それなりに満足したらちゃーんと分離してあげるから」


「あ、あぁ……」


「とりあえず2週間くらい過ごすかなぁ」


「え"?」


 意外に長いな……ま、まぁ助けてもらったし文句は言えないよな……。


「その間は準の家にいさせてね♡」


「え"え"?」


 ま、マジ……? 彼ノがみと一緒に2週間も過ごすの……?


 

「その間は毎日デートね♡」



「え"え"え"ええええ!?」



 俺……無事に2週間過ごせるかな……。



◇◇◇


「とりあえずその女連れて来なよ」


 彼ノがみに言われてレイラさんを運ぶ。


「私が人間助ける気になるなんてねぇ。中の2人の影響かも」


 彼ノがみが手を当てるとレイラさんの顔色が良くなっていく。


「ケガする前まで体の時間を巻き戻したからもう大丈夫」


「よ、良かったぁ……」


「アンタ達こんなケガ人ほったらかしてあの竜と戦ってたのぉ?」


  う……レイラさんほったらかしでフュージョンの練習してたなんて口が裂けても言えない……。


「ほら、後の2人と1匹も連れて来な」


「わ、わかった!」



 ……。



 彼ノがみが手を当てると失神していたみんなが目を覚ました。


「この子達の方がヤバかったよ。精神に直接攻撃されてたせいで目を覚まさなかったかも」


「マジかよ……あの竜のヤツ……」


「外輪準……そ、その女は……?」


 目を覚ましたウラ秋菜は混乱している様子だった。


「あ、ああ……コイツは……」


「彼ノがみでーす♡」


 彼ノがみが手を額に当てるような仕草で挨拶した。


「あ、彼ノがみ!? ソイツからすぐに離れろ!!」


 ウラ秋菜が身構える。


「ん? なんでこの子こんなに警戒してんの? どこかで会ったっけ?」


 彼ノがみが説明を求めるように俺を見た。


 あれ? ウラ秋菜と彼ノがみって会ったことあったっけ?


「あ、えっと……この子は芦屋秋菜あしやあきなって名前で……」


芦屋あしやぁ!? マジ!? 消さないと!?」


 彼ノがみが手をウラ秋菜へと向けて突き出した。


「うあああああ!? ダメダメリープさせちゃダメえええぇぇぇ!?」



 そういやコイツら天敵だった……。

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