やり直し。なのじゃ!

第74話 1/3

「じゃあ私達も帰ろう」


 遠くでみーちゃんと比良坂さんが手を繋いでいるのが見えた。


 今は……チヨさんのお墓参りに行った日か。


「みーちゃん!!」


 2人を急いで呼び止める。


「急にどうしたの? 外輪君」


 驚いている比良坂さんとは対象的に、俺達を見たみーちゃんは目付きが変わった。


「あなた達……リープして来たの?」


「さすがみーちゃん。話が早いのじゃ」


「舞。ちょっとお兄ちゃんの家に寄って行きましょう」



◇◇◇


 みーちゃんに蝶野先輩達の話をすると、何かを考え込むようにしていた。


「確かにその先輩と、師匠と呼ばれた女は見たことのない力を使っていたのね?」


「うん。間違いない。あの力は異常だった。前の先輩の力はそれほど強い物じゃなかったハズだ」


「そう……」


「どうしたのみーちゃん? そんなに考え込んで」


 比良坂さんが不思議そうにみーちゃんに尋ねた。


「みんなに言わなきゃいけないことがあるのよ」


「それって前にチラッと言っていたことかの?」


「ええ。辻斬り猫事件の時に気付いたことがあるの」


 みーちゃんは1呼吸置いてゆっくりと話し始めた。


「私たちが行ったラセンリープ。アレの影響が出始めているわ。先輩の件もその1つだと思う」


「ラセンリープの影響!? どういうことなんだ?」


「みーちゃん。ウチはノがみの記憶を垣間見たことがあるが……そんなことは記録されておらんかったぞ」


「ラセンリープ自体はそれほど世界に影響を与えるものじゃない。本来、別れている世界が融合することは無いから。分岐点から改変したとしても、片方の世界が修正されるだけ。でも、私たちが行ったのは特殊なの……別れて間もない世界だったことが要因ね」


「それは確かに衝撃的な話なんだけど……それが先輩とどう関係があるんだよ?」


「……世界が融合した時にね。物凄いエネルギーが発生して、この世界のコトワリに歪みが生まれたようなの。それによって、本来あなた達のいた世界で起こらなかったような事象が起きるようになった」


「あ! 猫田が侍の転生した姿じゃと秋菜が言っておったのじゃ!」


「そうよ。それが証明」


 ウソだろ……俺達のやったことでそんなことになっているのかよ。


「ジュン。落ち込んでも仕方がないのじゃ。どうせ今からじゃどうにもならん。今からさらに過去改変したとしてもパラドックスが起きてどうなるか分からんしの」


「そ、そうだよ外輪君。今の世界でみんな無事なんだしさ!」


 カノガミと比良坂さんが励ましてくれた。


 確かに。カノガミの言う通り、どうにもできないことか……。


「なら、この世界で何か起きた時、それに対処するのが俺の責任か」


、じゃろ?」


「……そうだな。ありがとう」



「みんな、本当にご」


「みーちゃんはもう謝らなくていいのじゃ」

「謝らないでよみーちゃん」

「みーちゃん気にしすぎだよ」


 食い気味に言ってしまった。



◇◇◇


「それで、ジュン。蝶野のことはどうするのじゃ? 1週間リープしたし、あの街には行かんようにするか?」


 逃げる……それも1つの方法だよな……。



 でも……。



 先輩の言っていた言葉が脳裏に浮かんだ。



「僕は……っ!! 君と全力の勝負をする為に何ヶ月も修行したんだぞ!!」



 ……。



「いや、できれば……ちゃんと先輩に謝りたい。カノガミのことも含めて全部話すよ」


「でも、とても話を聞いてくれるような状態じゃなかったじゃろ?」


「問題はそこだよな……」


「え? なんでお兄ちゃん1人で戦うって話になるの?」


 みーちゃんがキョトンとした顔で言った。


「いや、さっき説明した通り決闘だし……とりあえず戦わないと話を聞いて貰えないそうに無いし」


「そうじゃなくて、お兄ちゃんがカノガミの力を使えばいいじゃない。そうすれば不利じゃないでしょ?」


「は? ジュンがウチの力を使うってなんじゃ?」


「あ、そういえばアンタ……わね」


 カノガミは指を折りながら呟いた。


「ええと、タイムリープできる、姿を消せる。可視化できる。憑代と離れて行動できる、物体の時をイジる……あ、あと髪を操れる。これくらいじゃろ?」


「もう1つあるわ」


「え? 他にも何かあるのか?」


1ことよ」


「「は? なんじゃそら?」」


「まぁ……ものは試しね。カノガミ。光球態こうきゅうたいになりなさい」


「なんでじゃ?」


「早く」


 カノガミが手を合わせると、人間の姿から光の球の姿になった。


--これでよいのか?


「えい」


 みーちゃんが光の球を掴むと、俺の額にぶつけて来た。


 「いてぇ!?]

--な、何するのじゃ!?


 突然目の前が何かに遮られた。



 ん?



 なーんか前が見づらいな。


 目の前を手で払う。


 なんだこれ? 前髪?



「成功よ。鏡を見てみなさい」



 みーちゃんに言われて鏡を見てみる。



 そこには……。



 が映っていた。



「な、なんじゃあこりゃあああああ!!」

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