第53話 3/3

「ん? お主達大丈夫でごさるか?」


 いつの間にか猫が俺達の前に立っていた。


「お、俺達は無関係だぞ!」


「拙者は強き者にしか興味は無いでござる」


 猫がサトルのことを見る。


「そこの男とは手合わせしてみたいが。先ほどの活躍見ていたからな」


「俺はヤル気は無いぞ」


「それは残念でござる」


 後ろで1人の暴走族がよろよろと立ち上がる。


「おい……後ろ」


 猫がチラリと暴走族を見たが、興味無さそうにこちらに視線を戻した。


「命まで取るつもりは無い」


「どういうことだ?」


「殺してしまえば拙者の強さを語る者がいないであろう?」


「なんでこんなことをするのじゃ」


でござる。拙者にはこの道しか生きる術がござらん」


 名を馳せる? 生きる術?



 よく分かんないヤツだな。



「時にお主達は強き者を知らないでござるか? 先日より拙者、街で強き者に挑み続けているでござる」


「は? それって人を襲ってるってことか?」


「うむむ。その言い方は無いであろう。拙者は正式に挑み、戦った。命を取るに足る者はおらんのが残念だが。毎度勝った証として相手の髪を落としているでござる」


「挑んだと言ったが、相手は本当に勝負を受けたのか?」


 サトルが猫を睨み付ける。


「当然だ。拙者が挑むと相手は何も言わずコクコクと頷くのだ」



 それって驚いてただけでは?



 勝負じゃなくて辻斬りでは……?



「おい猫! 後ろを見るのじゃ!!」



  カノガミの声に目を向けると、さっきの暴走族が猫に向かって金属バットを振り下ろそうとしていた。


「はぁ……つまらん」


 猫がそう言った瞬間。



 金属バットがになった。



「か、刀を抜いたのも見えなかったぞ……」



 猫が4つ足で伸びをする。


「あ〜強者つわものと死合ってみたいでござるなぁ。他の者を探すかぁ」


 そう言うと、猫は走り去ってしまった。



◇◇◇



「ただいま……」


--おかえり〜。おいジュン! 電気くらいつけるのじゃ!


「わぁったよ〜」


--疲れとるのはわかるのじゃが。


「いや、マジで今日はなぁ……」


--ジュンはどう思う? あの


「アイツ、ヤバくない? 暴走族ほとんど1人で倒しちゃったじゃん」


--抗争のことと言ったり、がどうの言ってたの。


「侍かよまったく。怖いわほんと。ケガした人がいなくて良かったけど」


--暴走族……ちょっとだけかわいそうじゃったな。


「ヒトキリ丸があんな使われ方してるって知ったら方内先輩怒るぞ絶対」


--いずれにしても、なんとかせんといかんの。あの


「ああ。小宮やみんなにも言っとくよ」


--……。

 「……」


--あっ!


「うわ! 何だよ!? いきなり大きい声出すなよ!?」


--そういや暴走族の名前教えてくれるって言ってたじゃろ!? 気になるじゃろあんな言われ方したら!


「あぁ。んふふふ〜」


--その暗い笑顔が怖いのじゃ……。


「いや〜絶対好きなヤツが付けたわ〜あの名前」


--片方が「薔僂権バルゴンでもう一方の暴走族が「爾維堕盨ジーダス」じゃったっけ?


「サトルに教えて貰ったんだけど、街にはRegionレギオンっていうカラーギャングもいるらしいぜ!」


--気になるの〜。早く教えて欲しいのじゃ!


「ああ! ちょっと待てよ……カイ兄の持ってるビデオの中に確か……」


--ビデオが関係あるのか?


「映画だよ映画!」


--映画……あれ? でも、ジーダスって……? 今のウチらの時代じゃ……。


「ああああああ!! 細けぇこたぁいいんだよっ!!」

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