抗争勃発!?なのじゃ!

第51話 1/3

「あーつまらん取材じゃったのぉ」


 カノガミが伸びをする。


「それは否定できないなぁ……。川柳クラブで延々と中学生の作った川柳を聞かされるなんてなぁ」


「かえりみち。取材のせいで。まっくらじゃ」


「影響受けてんじゃねぇか……」



 2人で帰りの河川敷を歩いていた。カノガミの言うとおり、取材に時間を取られて遅くなっちまったなぁ。


「ところで、お前なんで可視化してんだよ? しかも制服着てるし」


「ジュンとの下校ゴッコじゃ。シチュエーションはの、ウチがジュンの隣に住むお姉さんで、そんなウチに想いを寄せたジュンはいつも悶々としながら一緒に登下校するのじゃ♡」


「なんだよそのシチュエーション。しかも一緒に登下校するような歳じゃねぇじゃん」


「なんじゃとぉ!? どういう意味じゃあ!?」


「いててて。殴るなよ!」


 俺を殴っていたカノガミの動きが止まる。


「どうした?」


「ジュン。あの電灯の下に男がおるじゃろ? あのピンクTシャツ。なーんか見覚えあるのぉ」


 カノガミの指差した方を見る。確かに、河川敷下の広場で背の高い男が何かをやっていた。


 リーゼントにピンクのTシャツ……しかも大きく「♡」がプリントされてる。


 アレって、どっかで……。



「「あ!」」



「リーゼントヤンキーのサトルだ!」

「リーゼントヤンキーのサトルじゃ!」



 近くの坂を下って近くまで行くと、サトルは何かをしているようだった。


「こんな所で何してんの?」


「ん? ああ。外輪準じゃないか。久しぶりだな。今な、ゴミ拾いをしていた」


「ゴミ拾いってなんでこんな真っ暗な中やっておるんじゃ?」


「え、ああ……そっちの人は初めて会うな」


「あ、こっちは俺の親戚のカノ子姉ちゃん」


 カノガミが脇腹を肘で小突いてくる。怒ってるのかと思いきや、いつの間にか服がパーカーに変わっていた。ノリノリじゃねぇか。


「外輪の親戚の人か。いや、さっきな、ここでタバコを吸ってた連中がいてな。どうにも気になって」


「へぇ〜もう全然ヤンキーじゃないなぁ」


「はは。そうだな。実は最近部活動を立ち上げたんだ」


 サトルは爽やかに笑った……気がした。相変わらずの強面で顔が引き攣ってるようにしか見えないけど、多分。笑ってるハズ。


「部活じゃと?」


「まぁ……その、『親近感クラブ』っていって、ボランティア部だな」


「え! すごいじゃん! 今度活動内容取材させてよ」


「ああいいぞ。最近やっと部員も揃ってな」


「あのリーゼントヤンキーのサトルがボランティアとはの〜」


「え? カノ子さん? なんか前から知ってるような口ぶりですね……」


「あ、いや……初対面じゃぞ! なんとなくじゃ」



 その時。



 が辺りに響き渡った。



 なんだこの音……バイク? にしても1台どころじゃない。


 あっという間に俺達の周囲はバイクの集団に取り囲まれてしまった。


「なんじゃあコイツら?」


「あの色の特攻服……それにあの文字は……爾維堕盨ジーダス!?」


 サトルが叫ぶ。


「ん? ジーダス?」



 んん?


 気のせいだよな……。



「ああ。この界隈を縄張りにしてる暴走族だ。でも、この辺りはまだ……」


「どうしたのじゃ?」


 サトルが何か言いかけた時、また物凄い爆音が響く。そして今度は別の色をしたバイク集団が現れた。


「な……まさか薔僂権バルゴンまで出て来るなんて!?」


「ん? バルゴン?」


 あ、やっぱり……。


「なんだ外輪知っているのか? あれは薔僂権バルゴン。アレもこの近くを縄張りにする暴走族グループだ」


「ジュン? どうしたのじゃ?」


「あ、後で教えてやるよぉ」


「なんじゃあ? 暗い笑顔になりおって」


「外輪。カノ子さん。早くここを離れよう。この近隣の暴走族が対面しているんだ……只事じゃない」


「只事じゃないってどうなんの?」


「2つの暴走族……しかもお互いコレだけの数……


「「抗争!?」」


「やややヤバいじゃん!? 早く逃げよう!」


 とにかくサトルと一緒に走った。



 しかし、爾維堕盨ジーダスとかいう暴走族数人に道を塞がれてしまう。


「な、なんだよ!? 俺達はたまたま通りかかっただけだぞ!?」


 暴走族達が怒り狂う。


「アァン!? そんなが一般人なわけねぇだろ!?」



 あ、サトルが間違われてる。



「テメェら薔僂権バルゴンだろぉが!!」


「オメェーらによぉ〜こっちが先にヤラれてんだわ」


「オメェらンとこのなぁ。虎頭櫂ことう カイ虎頭景ことう ケイになぁ! 金取られてんだよぉ!! コッチはよぉ!!」


 暴走族達が口々に怒鳴り散らして来る。何言ってるか全然分からない。


「え? 誰じゃ?」


「虎頭兄妹。薔僂権バルゴンの創設者……伝説のヤンキー兄妹だ。今は行方不明のハズだが……」


「サ、サトル! 冷静に解説してる場合じゃねぇよ!」


「あ、そうだったな、スマン」


「なんか落ち着いとるの〜」


 なんでコイツらのほほんとしてるんだよ……。



「テメェらによぉ!! やり返さねーと気がすまねンだわ!」


「「「「「オラアアアァッ!!」」」」」


 暴走族達が複数で殴りかかって来る。



 うわぁぁぁぁ!? もうダメだぁぁ!?



「友人に手を出すな」



 サトルが両手で暴走族の頭を掴む!


 そのまま暴走族を振り回す!


 他の暴走族達が薙ぎ倒される!!



 !?



 殴りかかってきた暴走族は一瞬にして地面に倒れていた。



「つ、強えぇぇぇ!?」


「5人もなぎ倒しおったぞ!?」



 身長190cmはある強面の男。


 サトルがこれほど頼もしく見えるなんて。



 しかし、それがキッカケになってしまったのか……。



 2つの暴走族が一斉に喧嘩を始めた!!

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