第66話 3/5

「どどどどうするんだよこれ!?」


「おおお落ち着きましょうお兄様!」


 芦屋兄妹はかなり参っている様子だった。当たり前か。こんな状況に放り込まれたら。



 ……。



 カノガミ? 聞こえるか?


「ダメだ……やっぱりカノガミとも会話できない」


「落ち着け、落ち着け……俺……」


 夏樹が何か自分に言い聞かせる。そんな夏樹の背中を秋菜ちゃんが摩っていた。


 とりあえず、状況確認するか……。



 立ち上がって冷蔵庫の中と菓子が入った棚を確認する。俺達だけだったら数日分は持ちそうだ。買い物したばかりで良かった。


「トイレも風呂も台所も水は通ってるな。電気は……ゲームできるから大丈夫か。ホントに閉じ込められただけみたいだな」


 反面、家の電話は繋がらなかった。電話で外に助けを呼ぶのは無理か。


「準さん……なんだか冷静ですね」


「今回はゲームクリアすれば解決するって分かってるからさ、まだ大丈夫な気がしてる。夏樹もいるしな」


「へ……俺?」


 丸まっていた夏樹がこちらを見る。


「お前めちゃくちゃゲーム得意だろ? 不思○のダンジョンも前やってたし。だから大丈夫だって……思ってる」


「そ、そうですお兄様! 自信を持って下さい! 霊能力は全然ですけど、訓練をサボってゲームばかりしていた腕前、今こそ見せる時ですよ!」


「外輪……秋菜……そうだよな! 俺の得意ジャンルじゃねぇか! やってやるぜ!」


 秋菜ちゃんのは励ましだったのか……?


 夏樹が気合いを入れて立ち上がる。そんな夏樹を、秋菜ちゃんは


 あ、ツッコんじゃいけないヤツだ……。



◇◇◇


「まずは各キャラの能力確認だな!」


 夏樹がコントローラーを手に取り、パラメーター画面を開いた。


「ウラ秋菜は……?」


キャラクター名:ウラアキナ

体力:100

スタミナ:100

力:40

霊力:150

知力:150(通常)

すばやさ:60

運:50


「すごい! 霊力と知力が桁違いだぜ!」


「さすが秋菜ちゃん!」


 夏樹と俺が褒めると秋菜ちゃんは照れ臭そうに笑った。


「えへへ。なんだか別人格のことなのに恥ずかしいですね〜」


「ん? 知力にある『通常』ってなんだ?」


 夏樹がコントローラーの右ボタンを押すとパラメータ表示が切り替わる。



知力:15(オニイサマ♡)



「『オニイサマ♡』ってなんだよぉぉぉ!? 知力10分の1ってクッソバカになってんじゃん!?」


 夏樹が叫ぶ。秋菜ちゃんは顔を真っ赤にして否定した。


「し、知りません! ウラ秋菜だけの特性じゃないですか!?」


 秋菜ちゃん……多分それ、オモテのキミから引き継がれちゃった特性だよ……。


「ま、まぁ大丈夫だろ。知力とかあまり使わないよな、多分……。カノガミさんは?」


 夏樹がパラメーター画面をカノガミに切り替える。


キャラクター名:カノガミ

体力:999(通常)

スタミナ:999(通常)

力:999(通常)

霊力:999(通常)

知力:9(通常)

すばやさ:999(通常)

運:999(通常)


「な、なんじゃこりゃあ……チートキャラじゃんカノガミさん」


「でも、知力9って……」


 これって現実世界のパラメーターじゃないよな? 知力9とかめっちゃバカじゃん。アイツ、一応カミサマだから並行世界の仕組みとか前説明してたよな?


「これはステータス全部に『通常』表記がありますね。お兄様、切り替えてみて下さい」


「分かったぜ」


 夏樹がコントローラーの右ボタンを押すとまたパラメーターが切り替わった。


キャラクター名:カノガミ

体力:99(ハラペコ)

スタミナ:99(ハラペコ)

力:1(ハラペコ)

霊力:1(ハラペコ)

知力:1(ハラペコ)

すばやさ:1(ハラペコ)

運:1(ハラペコ)



「おいぃぃ!? やる気だせよぉぉ!?」

「極端すぎるだろカノガミさん!?」

「ああ……ただでさえ低い知力が……」


「い、いやまだハラペコ状態が通常だと決まった訳じゃない……夏樹、カノガミに切り替えてくれ」


「了解!」


 このゲームは1人のキャラを操作し、R2ボタンで操作するキャラを切り替える方式みたいだ。


 夏樹が操作キャラをウラアキナからカノガミに切り替える。


 画面右上にキャラクター名と体力、スタミナが表示された。



カノガミ(ハラペコ)

体力:99

スタミナ:99



 ハラペコが通常状態だったあああああ!?



「お、俺クリアできるかな……」


 夏樹が絶望の表情を浮かべた。



 画面を見ると、カノガミのチビキャラがポツリと呟いた。



「ジュン。ハラヘッタノジャ」

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