第65話 2/5

「ま、まさかカノガミさんがホットケーキ18枚も食べるとは思わなかったぜ……」


 昼食は秋菜ちゃんがいたのでホットケーキにした。ホットプレートで焼いて好きなトッピングを乗せて食べる感じにしたのに、ほとんどカノガミが平らげてしまった。


「だろー? 業務用2袋買っといて良かったぜ。それでも足りるかヒヤヒヤしたなぁ」


 まぁ、俺達も1人2枚は食べられたから良かったのか?


「まだ8分目なのじゃ♡」


「あ、ある意味羨ましいですね……」


「でも、夏樹達はいいのか? 夜はデリバリー頼んじゃって」


「全然問題無いって! ばば様から食事代としてたんまり貰ってるからさ」


「夜はピザか? 今から楽しみじゃのう♡」


「お、お前は加減しろよ……」


 みんなでホットプレートを片付けて一息ついた頃、夏樹がカバンからゲームディスクを取り出した。


「なぁなぁ。そろそろなんかゲームしようぜ。俺チョコ○レーシングも持って来たぜ!」


「おぉ! コントローラーは?」


「ちゃんと2つ持って来てるって!」


「えぇ〜!? ウチのバイ○ハザードは〜?」


「まだ休みあるからさ、それは明日やろうよカノガミさん」


「しゃあないのぅ」



 中学生の夏樹になだめられるカミサマってどうなんだよ……。



「じゃあ俺の用意したロクヨンのゲームは今日の夜にでもやるか?」


「いいですね!」



◇◇◇


 PS2を起動してチョコ○レーシングのディスクを入れる。



「うわー久しぶりだぜ! 黒魔導士にしよっかなー」

「そういや外輪はそればっか使ってたよなぁ」

「これはどうやって操作するのじゃ秋菜?」

「教えますよ。最初の数回は練習にしましょう♪」



 ん?


 なんか最初のロゴが違う。


 なんか「AKINA's presents♡」とか書いてある。



 ん?



 なんか画面に部屋みたいのが映る。



 ん?



 なんか人が画面に映る。



 ん?



 画面には芦屋秋菜が映っていた。鋭い目付きがこちら側を見つめている。



「え!? 秋菜!?」



 秋菜ちゃんは酷く驚いた様子だった。



「秋菜ちゃん。ウラ秋菜って何?」


「もう1人の秋菜と決めたんです。あっちとかこっちとか言いにくいので、ウラ・オモテで呼ぼうって……私がオモテで……」


「芦屋秋菜の方がウラってことか」


「ウラとかオモテとか闇のゲームでもしそうな名前じゃのう」


 画面の中のウラ秋菜が話し出す。


『お兄様。最近のお兄様は目に余る。いつもいつも私の訓練から逃げてはゲーム三昧。そんなにゲームがしたいということなら……ゲームで霊能力強化訓練をすることにした』


「おい秋菜!? これはどういうことだよ!!」


 夏樹が隣のオモテ秋菜ちゃんに詰め寄った。


「し、知りません!? 今まで記憶は共有していたのに……こんな物を用意してあるなんて……」


『あー。ちなみにお兄様。オモテの秋菜に聞いてもヒントは無いぞ。これは私の独断だ。今回記憶は共有せずに用意した』


「そんなことできるんだ……」


 オモテ秋菜ちゃんはショックを受けた様子で呟いた。


 あ、秋菜ちゃんも知らないんだ……。


『このゲームはを改造して作ったもの。お兄様のチョコ○レーシングとすり替えておいた』


 画面内のウラ秋菜が続ける。


『このゲームにあるダンジョンを地下100階までクリアすれば無事呪いの浄化となる。霊能力強化訓練も終了だ。それまでは部屋の外に出ることは不可能だ』


 そこまで言うとウラ秋菜の映像が消えた。


「え!? ウソだろ!?」


 俺と夏樹と秋菜ちゃんの3人で玄関へと走った。


 秋菜ちゃんがドアノブを掴む。


「ひ、開きません!?」


「鍵開いてるのに……」


「マジかよ……これが呪い……?」


 他にもカイ兄の部屋や物置部屋、俺の部屋の窓も確認したが、びくともしなかった。


 まさか、楽しい3連休のはずがこんなことになるなんて……。



 あれ? そういやカノガミは……?



 リビングに戻るとカノガミはゲームをプレイしていた。


「おい! 何やってんだよカノガミ!?」


「へ? じゃってクリアしたら出れるんじゃろ? さっさとクリアしてしまおうかと思っての」


 カノガミがプレイしていたのは不思○のダンジョンみたいなゲームだった。


 不思○のダンジョンは各階をクリアしながら地下深くへと潜っていくゲーム……地下100階までクリアすれば出られる……か。


「任せておくのじゃ! ウチにかかればこんなもの……!」


 カノガミがゲームの中の女キャラクターを操作して敵を倒していく。


 ゲームのキャラの右手が光る。その状態で敵を殴ると敵に大ダメージを与えるようだ。


 そのままズンズン下の階へと進んでいく。



 なんか、このキャラ目付きが悪いな……。



「うおぉぉぉ!? 急に敵が強くなりおったぞ!?」


「カノガミさん。強化アイテム取らずに先進みすぎだって! 一旦このフロアのアイテムを集めて……」


「いいや! ウチならやれるはずじゃ!!」


 夏樹の静止を振り切ったカノガミ。無理に進もうとした結果……。


「あぁ……死んでしもうた」


 強い敵に囲まれ、キャラクターがやられてしまった。


「これって不思○のダンジョンならまた最初に戻るのかな?」


 夏樹がチョコ○レーシングのパッケージを調べながら言った。

 呪いのゲームの説明書を探しているようだったが、結局無いみたいだ。


 しかし夏樹の予想は当たり、のどかな村の風景へと画面が切り替わった。先ほど死んだ女キャラも村に佇んでいた。


「仕方ない。今度は俺が……」


 俺がコントローラーを手に取ろうとするとカノガミの声がした。



「あれ? なんかウチなってない?」



 カノガミの方を見ると、なんだか……なっていた。


「おい! カノガ……」


「ジュ、ジュン〜」


 涙目のカノガミがそのまましまった。


「カノガミィィィィ!?」

「ええぇぇ!? なんでぇぇ!?」

「カノガミさんが……!?」



 突然。


 もう1度ウラ秋菜の顔が画面に映った。



『あ、1つ言い忘れたんだが……。お兄様。このゲームは、ゲームオーバーになるとゲームに魂を吸い取られるぞ』


「「「え"」」」



『吸い取られた魂はゲームキャラになる』


 ゲーム画面にカノガミにそっくりのチビキャラが現れた。


『ジュン。ハラヘッタノジャ』


「「「え"」」」



「そ、そうだ! 秋菜にウラ秋菜を呼び出してもらって、他の呪い解除法を聞き出せばいいんだ!」


「うおぉ! 夏樹天才っ!!」

「お兄様! さすがです!!」


『お兄様。もう1つ黙っていたことがあったのだが、私も魂を吸い取られてしまった。その、テストプレイで……』



「「「え"」」」



『だから頑張って私を助けて、お兄様♡』


 ウラ秋菜が満面の笑みで言った。



「「「えええええええっ!?」」」



 よく見たら……。


 さっきまで操作してたキャラ。



 ウラ秋菜に似てる。



 ゲーム画面には2人のキャラクターがパーティを組んでいた。



『オニイサマ♡』

『ハラヘッタノジャ』

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